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明るさと画質を両立したD5パネル機――エプソン「EMP-TW600」レビュー:Theater Style(2/6 ページ)

» 2005年11月08日 12時55分 公開
[本田雅一,ITmedia]

高コントラスト・高色純度化が立体感を演出

 もっとも、読者にとって一番気になるのは、やはり新型D5パネルを投入した事による画質向上であろう。

 実はスペック上、従来比1.5倍というコントラスト比が大いに期待されたD5パネルだが、各OEMメーカーによると1.3倍程度にしかなっていないのでは? という声も耳にした。

 ただし、製品ごとの差は大きい。TW600は、その中でも特に前モデルからの改善幅が大きい製品だ。TW200Hはシアターモード時のナチュラルな階調と発色の素直さ、得手不得手の少ない映画描写が魅力だったが、いかんせんコントラストが低かった。

 その点、TW600は立体感をも感じさせる黒の引き締まりが印象的だ。

 つまり、コントラストが向上しているわけだが、カタログ値の5000:1という数字は忘れてもいい。これは他機種にも言えることだが、この値はアイリスやランプ光量の制御を行いながら明暗を表現した場合の輝度差に過ぎない。同位置画面上の黒と白の輝度差は、もっと低い値となる。

 ではどの程度か? を数値で言えれば良いのだが、すべての製品を同一条件、同一計測器で測ってみない事には絶対的な数値での比較は無意味だ。ということを断った上で、昨年のTW200Hからの比較では明らかに黒が引き締まり、コントラスト感が向上。見た目には1.5倍というパネルのスペック値以上の改善はありそうだ。

 ただし、ほかのD5パネル採用機を見ると、コントラストの改善レベルは製品ごとにバラバラ。前述したように本機は前モデルからの改善幅がもっとも大きい機種の1つだが、これはパネルの使いこなしによる違いだけではなさそうだ。

 エプソン製プロジェクターは、部屋を暗くして利用するモードにおいて、高圧水銀ランプのスペクトラムのクセを取る光学フィルタ(エプソンシネマフィルタ)を利用してきた。今回のTW600は、このシネマフィルタを改良し、より高純度な緑と赤を再現できるよう、スペクトラムのバランスを取り直しているという。

 その結果は素直に製品に表れており、純度の高い赤が朱色に寄る、あるいは赤黒くなるといった現象や、緑が黄緑に近く見えるといったことがなく、きれいに彩度が伸びていく。彩度が伸びるといっても、単に派手に見せるわけではない。彩度の伸びを生かすことで、自然な階調表現を実現しているのだ。

 こうした色純度の改善、前述のレンズユニットの新設計、それにD5パネルの採用などが相まって、前モデルからの大きなコントラスト改善につながっているものと思われる。実際、アイリスモードをオートから固定に変更しても、コントラストの低さは感じない。

 エプソンによると、シアターブラック1/2の場合、アイリスは2倍程度の明るさ範囲でしか動いていないという。このため、アイリスの自動制御による違和感もないが、一方でオフにしても黒浮き感はあまり増さない。より自然な階調を求めるなら、アイリスの自動制御はオフにすることを勧めたい。

photo 若干、階調に段差が見えるが、これだけリニアに変化していれば十分。視聴機では色ムラもさほど目立たなかった
photo SMPTEのカラーバー(75%輝度)を撮影。純度の高い青がやや暗くなる傾向は見られるが、赤や緑は純度高くきれいに彩度が伸びている

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