ホームビデオ向けコンテンツに対して、ハリウッドの映画スタジオがどのようなスタンスを持っていると感じているだろうか。
ある人は「DVDや次世代光ディスクといったって、ウケねらいの大衆娯楽映画を武器に利益を上げる手段としか考えていない」と、ハリウッドの人々を見ているかもしれない。また「映画をいろいろな媒体で切り売りするセコイ商売人」と言う人もいるだろう。
確かに映画産業の人間が、ビジネスの面でシビアな考え方を持っているのは事実だ。興行成績やホームビデオ製品の売り上げという、実に不確実なものを当てにしながら成り立っている産業なのだから、それも当然だろう。
ハリウッド映画に娯楽性を追求した作品が多いのは、不確実な収入をより確実にするためだろうし、テレビドラマ制作が映画産業を下支えする固定収入として重視されるなど、ビジネス面でさまざまな工夫が凝らされている。
こうした映画コンテンツビジネスの背景に関しては、いずれまとめてコラムにしたいと考えているが、しかし、映画産業に携わる人々やスタジオは、それらをひとまとめに扱えるほど数が少ないわけではない。
経営側がコストや売り上げに対してシビア(な反面、ピクチャークオリティには無関心)かと思えば、制作側には執念ともいえるほど画質にこだわる人たちもいる。映画会社や、それぞれの部門に携わる人物それぞれに個性がある。
そうした中、Twentieth Century Fox(20世紀フォックス)の上席副社長を務めるダニー・ケイ氏は、おそらくハリウッド取材を始めてからの中でもっとも画質にうるさいエグゼクティブの一人だ。そして同時に、コピー保護に関してももっとも厳しい注文を突きつける。
そのケイ氏に、HD時代のパッケージコンテンツビジネスについて話を伺った。
実はケイ氏と始めて会った時、筆者は同氏のことを大きく誤解していた。
ケイ氏は、次世代光ディスクのパッケージビジネスに関して、主にマーケティングの視点から関わっている。20世紀フォックスの中で技術面を評価したり、必要な機能に関して要求仕様を決めるといったテクノロジーの担当は、アンディ・セトス氏という別の上席副社長が責任を持っている。
ケイ氏の考えはとても明快で、とにかくコピー保護が確実で、将来の技術でそれが破られた場合にも対処が可能な柔軟性が必要。(たとえコストがかかったとしても)コピー保護が確実でなければ、HD品質のパッケージのビジネス計画は出せないというものだ。あまりにもスッパリと割り切っているため、保有コンテンツの販売を、いかに効率よく進めるかにしか興味がないと思っていた。
ところが昨年秋には、コピー保護を強く訴えながらも「HDMIディスプレイが普及していないのに、アナログ映像出力を制限することは絶対にない。それはユーザーの期待に背く行為だ」と、強くアナログ出力制限フラグの導入に反対の立場を取った。コピー保護技術でがんじがらめにするのではなく、ユーザーに対する不便は可能な限り排除すべきという、ユーザーサイドの視点を持っている。
その後、雑談の中で知ったことだが、ケイ氏はかつてD-VHSを用いてHD映像をパッケージ販売するD-Theatre規格のソフトウェア販売を推し進めた中心的なメンバーだった。同氏の部屋には、今も多くのD-Theatreソフトが並ぶ。
それだけに画質に対する要求は厳しい。純粋な利益主義だけでなく、ビジネスとして映画業界を盛り上げるにはどうすればいいか。そうした話題を話せる、やや古いタイプのハリウッド映画人である。しかし、D-Theatreでは規格立ち上げの失敗を経験しただけに、HD映像のパッケージ製品を売ることの難しさも痛感している。ケイ氏は会うたびに「絶対的な高画質は最低条件。しかし高画質なだけでは売れない」と話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR