一方、実際のビジネスを始める直前になってからは、2層BD-ROMの生産量に対して不安視する声が挙がっていた。高圧縮のH.264を用いたオーサリング体制が十分ではなく、高画質を得るために2層で出したいという要求が高まっていたためだ。初期タイトルこそ1層ROMが多かったものの、来年向けにオーサリングされているMPEG-2を用いたタイトルのかなりの割合が2層を前提に作られているという。
スピンコート方式で比較的安価な2層BD-ROMの製造ラインを開発していた松下電器とオリジン電気は、早い時期から歩留まりが向上していたものの、製品として製造装置を収めた実績はなく、トーランスに構築した実験用のパイロットラインを用いて一部映画スタジオ向けのBD-ROM製造を行っているほど。
しかし、いよいよオリジン電気の2層対応スピンコート方式が、米シンラムに納入され、年内の安定稼働を目指して組み立てと調整に入ったという情報を11月末に得た。来年になれば本格稼働しはじめるだろう。
またソニーが開発し、静岡で稼働している2層スピンコートの製造ラインも、月産250万枚規模でフル稼働しているという。9月にプレス向けに公開されたこのラインを11月に取材してきたが、主に北米向けの2層BD-ROMの量産を3つの装置で製造していた。
静岡にある製造ラインの紹介。Blu-rayは月産250万枚でフル稼働中だ
実際に目にするまでは、その“デキ”に関して疑いの目を持っていたが、スピンコートで問題となるカバー層生成の均一性、中間層の均一性などにいくつかの工夫がされており、良い結果が出ているようだ。実際の製品をプレスしている装置の検査機を見たところ、直近の歩留まりは2層で79〜81%を示しており、その日トータルの統計値(マスター変更して動かし始めは歩留まりが落ちるため、トータルの歩留まり値は直近の値よりも落ちる)でも6割を大きく超えていた。
同じ装置は北米でも稼働しているというが、供給量が間に合わず日本でもフル生産を続けている。この影響で国内のコンテンツベンダーが十分な量を確保できていないようだが、ここまで急速に製造ノウハウが固まってくれば、来年以降の供給体制に不安はなくなってくるだろう。
今年はBD関係のビジネスについて、あまり大きな発表を行わず“静か”にしていたソニーだが、その中で2層スピンコートの複製装置はもっとも大きな進歩を果たした部分と言える。ソニーがここまで急速にこの製造方式を安定させることができるとは、おそらく誰も想像していなかったろう。
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