1位 高まった完成度、動画も楽しめる高音質ウォークマン――「NW-A805」
6位 新しい市場へのチャレンジ――動画対応の新ウォークマン(前編)
7位 世界標準ケータイを「なんちゃって・おサイフケータイ」にする助っ人が現れた!?
10位 感度100倍のお手軽デジカメ――オリンパス「FE-250」
先週のトップには、新型ウォークマン「NW-A800」のレビュー記事がランクインした。動画対応を果たしたほか、ウォークマンとしては初のスリムなカード型ボディを採用したこともあり、注目を集めたようだ。
レビューを担当したのは筆者だが、実に良くできた製品だと思う。スリムで軽量なボディは胸ポケットに入れても違和感なく持ち運べ、NW-S600/700で定評のあった音質面はその評判を裏切ることのないレベル。カラー液晶を搭載しているとは思えないほどバッテリーの保ちも良好で、キー入力に対するレスポンスも高速で快適に操作できる。動画対応という要素がオマケに感じられるほど、オーディオプレーヤーとしての完成度は高いと思う。
ただ、良くできた製品だけに、レビューのために試用しながら何度も「もったいない」と感じてしまったのも事実。もう少し早くリリースされれば、“ウォークマン”の評価を大きく変えることができたのでは、と。
知っての通り、ウォークマンといえば「ポータブルオーディオプレーヤー」という概念を作り出した先駆者でありながら、カセットテープやCD/MDという従来型メディアからHDD/フラッシュメモリという大容量/高速な次世代メディアへのチェンジをなんども失敗してきた製品だ。※初出時、当段落の内容に一部誤りがありましたので、修正いたしました
筆者の知る限り、初めて次世代メディアに対応したウォークマンである「NW-MS7」(メモリースティック ウォークマンの愛称が付けられていた)はメモリースティックを差し込んで利用するタイプで内蔵メモリはなし、対応フォーマットはATRAC3のみだった。汎用性の高いフォーマットであるMP3に対応するまでにはさらに数世代のモデルチェンジを必要としたこと、ライブラリソフトが何度も変更されてきたことは、ウォークマンがiPodの後塵を拝する要因のひとつといえるだろう。
乾坤一擲の新製品として、「ウォークマンの復活」を掲げて発表されたNW-A1000/3000(関連記事)も今に見れば空回りしていた感が否めない。シースルー+メタルの斬新なボディデザインは評価の割れるところであったが、機敏さに欠けるUI、リリース直後に修正パッチが何度も公開さるなど完成度に欠けたライブラリソフトなどはユーザーの心を「ウォークマン」から遠ざけるに十分だった。
それに、素材単価の下落によってメディアの主力がHDDではなくフラッシュメモリとなったのもソニーにとっては誤算だったろう。価格容量比に優れるものの、小型軽量化に限界のあるHDDタイプは伸び悩み、フラッシュメモリタイプが人気を博するようになった。
なかでもNW-A1000/3000と同時に発表されたiPod nanoは、厚さ6.9ミリという薄さと2Gバイトで2万1800円という衝撃的な低価格で市場を席巻し、「最も売れているポータブルオーディオプレーヤー」の名を今に至るまで欲しいままにした。ソニーが主力としていたNW-A1000/3000(HDDタイプ)は伸び悩み、下位モデルとして位置づけられていたフラッシュメモリタイプのNW-A6xxのみが(おそらくはソニーの思惑を裏切り)気概を見せたのだった。
その後、ソニーもフラッシュメモリタイプを重視する戦略をとり、シンプル&低価格な「NW-Exxx」、高音質化を進めた「NW-S600/700」と新製品を次々と投入、課題であったライブラリソフトも現在のSonicStage CPでは安定性と使い勝手もかなりの次元に達した。ただ、iPodというライバルに比べると出遅れ感は否めず、歴史あるブランドながらも、デジタルオーディオプレーヤーの分野では、No2の座に甘んじる結果になってしまっている。
歴史に「たら・れば」は厳禁とは知っているが、NW-A1000/3000とiPod nanoが同時に発表された2005年9月8日、NW-A1000/3000ではなく、NW-A800が発表されていたら、歴史は変わったかも知れない。そう思えてならないのだ。
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