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H.264録画で何が変わるのか、ソニー「BDZ-L70」(4/4 ページ)

» 2007年10月26日 00時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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 H.264の採用の影響は当然だが再生機能にも波及する。動画圧縮は、一般に1枚の静止画として保存されるキーフレームを元にその差分を生成することで圧縮効率を上げている。H.264ではこの差分の生成方法がより複雑になっており、エンコードはもちろんデコード時(再生)の処理も複雑だ。レコーダーの場合、リアルタイムエンコードが求められるのでキーフレームは比較的短い間隔で挿入されていると思われるが、再生機能への影響も気になるところだろう。

 バックグランド録画時には、再生したい番組を選んでから実際に再生が開始されるまで2〜3秒のタイムラグが発生することもあったが、再生が開始されてしまえばリモコン操作に対するレスポンスは悪くない。早見、早戻し再生は紙芝居のような静止画の連続再生になる。おそらくはキーフレームを静止画として取り出して再生しているのだろう。

お詫びと訂正:初掲載時、「低速の早見再生でも音声付きの再生はできなかった」とありましたが、音声付き早見再生はカラーボタンの「黄色」で可能になります。お詫びして訂正いたします。

 オープニングやCM部分をちょっと飛ばす、今のシーンをもう1度見たいといった場合にはフラッシュ機能を使う。進む方向には15秒刻みで最大180秒、戻る方向には10秒刻みで最大120秒再生位置を移動できる。キーを押すたびに移動量が増え、操作も比較的簡単だ。「録画1」で録画した場合には「おまかせチャプター」で本編とCMの境目にチャプターを生成してくれるが、「録画2」では機能しないため、「録画2」で録画した番組の再生にはとくに有効だろう。

 シーンサーチでは録画時間全体のバーを見ながら相対的に再生位置の移動が可能。録画時間の約1/3の位置、約半分の位置、といった移動が簡単にできる。ただしポインタを移動しても画面がリアルタイムで追従する訳ではなく、ポインタを停止してちょっと待つと更新される。このあたりもH.264採用の影響といえる部分だ。

photo シーンサーチは相対的な再生位置の移動に便利。これで画面の追従が早ければ……と思ってしまう。

 また再生機能に関してはDVDビデオや本機でDVDにダビングした、つまりMPEG2エンコードの番組でも原則同じ。デコードプロセスが違うだけでフロントエンドはそのままということなのだろう。コストとのトレードオフもあると思うが、数年前のDVDレコーダーの方が快適に感じることもありそうだ。

強力な自動録画機能とH.264エンコードの強力タッグ

 今回はソニーのBlu-rayレコーダー新モデルの代表という扱いで「BDZ-L70」を試用し、レコーダーとしての基本機能に触れた。XMB採用のユーザーインタフェースは慣れが必要だが、動作自体は軽快で、既に触れたように一覧性をそう重視していない点も軽快な動作で十分カバーできる。リモコンはスティックタイプではなく一般的な方向キーに改められたが、使用してとくに違和感を感じることはなかった。また「録る」「見る」キーが追加されたことで利用頻度の高い機能のショートカットが可能になり、分かりやすさも格段に向上している。

 ライバル視されるDIGAの新モデルもほぼ同時期に登場するが、それを前提に本機の魅力を上げるとすればやはり「x-おまかせ・まる録」とH.264エンコードの強力タッグだろう。「SR」「LSR」といった録画モードを活用すればハイビジョンでバンバン番組を録画していける。本機の320GバイトというHDD容量が十分かどうかという点は個人差もあると思うが、LSRモードで約106時間という録画時間は結構使いではあると思った。管理機能も充実しているので「録画はしたけど先週のバラエティ番組はもう見ない」といった場合の一括削除も楽だ。アナログ世代の「スゴ録」とほぼ同じ感覚で使うことができるだろう。

 「ダビング10」の検証ができなかったのは残念だが、「ダビング10」が加われば本機の魅力はさらに増すし、既に触れたように「どの録画モードでBDに残すか」という点でも試行錯誤の余地ができるようになる。

 難点は良くも悪くもBDへの傾倒だろう。DVDメディアへのダビングはサポートしているが、再エンコードでの等速ダビングと、かなりおざなり。DIGAのAVCREC方式でのDVDへのハイビジョンダビング機能は再生環境という課題は残るが、一般の人にとって魅力的に映ることは間違いない。実際問題として、CPRM対応DVD-Rメディアの量販店価格は100〜150円程度、対してBD-Rの1層メディアの価格は1000円に近づきつつあるので、容量あたりの価格差は既に倍かそれ以下になりつつあるし、もはやDVD-R DLメディアなどは問題外だ。

 ハンドリングまで考慮すれば、筆者なら「もうBDでいいや」とDVDのスピンドルケースの山を見ながら考えるのだが、この辺の感覚はまた個人差が大きいだろう。250GバイトのHDDとDVDへのハイビジョンダビング機能を備えたDIGA「DMR-XW100」は予約価格ながら7万円台の店も多く、BD中心のソニーに吉とでるか凶とでるかは今の所神のみぞ知る所だが、悪い方向には行かない事を願いたい。5年、10年後に向けてハイビジョン映像を手元に残すには結局BDやHD DVDといった次世代DVDメディァへの移行が望ましく、対応レコーダーの普及がメディアの価格を後押しするのは間違いないからだ。もちろんDVDへのAVCREC方式の保存を採用した松下だって、売りたいのはBlu-rayレコーダーの方だと思うのだが……。

 見慣れたハイビジョンクォリティでの録画が手軽に行え、BDメディアへの長時間保存もハイビジョンのまま行える。これに「スゴ録」時代から鍛え抜かれた強力な自動録画機能は間違いなく強力タッグだ。この冬、購買欲をそそられるハイビジョンレコーダーの1つであることは間違いない。

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