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「ナビゲーション」――カーナビかポータブルナビかを考えるデジモノ家電を読み解くキーワード

» 2007年12月13日 17時54分 公開
[海上忍,ITmedia]

「カーナビ」と「ポータブルナビ」

photo VICS対応など高機能化したポータブルナビ 三洋電機「NV-SD580DT」

 つい数年前までは、限られた層にしか購入されていなかった「カーナビ」。ぜいたく品、はたまた車好きの嗜好品という性格の強い製品だったが、今や新車購入時に数万円程度の追加費用で購入できるほど一般化した。地図を記録しておくメディアも、かつてのCD-ROMからDVD-ROMやHDDにグレードアップ、情報量が格段に増え便利さがアップしている。

 同時期にメジャー化したデバイスが、持ち運び可能な「ポータブルナビ」。GPS衛星からの情報をもとに現在位置を割り出す、というナビゲーションシステムの基本原理に違いはないが、いくつかの機能を削減/抑制することにより、小型化と機動性の向上を実現している。手のひらサイズの専用機からGPS機能付きの携帯電話上で動作するナビアプリまで、種類も豊富だ。

カーナビとポータブルナビは似て非なるもの?

 カーナビもポータブルナビも、現在位置付近の地図を表示するという基本機能は同じだが、やはり違いを認めざるをえないのが「精度」。端的に言えば、高速運転中でもビルの谷間でも地図を間断なく表示できるのはカーナビ(が高機能化したハイブリッドナビ)だ。

 その違いは、自立航法装置の有無と言っていい。両者とも位置検出にはGPS衛星を利用するが、ほとんどのカーナビには「ジャイロセンサー」と「車速パルスセンサー」が装備されている。GPS衛星からの信号は障害物に弱く、ビル街やトンネルの中では見失いがち。センサーは、その欠けた情報を補足してくれるというわけだ。

 ちなみにジャイロセンサーとは、1秒間に何度動いたか(角速度)を測る装置のこと。さらに車速パルスセンサーで割り出した移動距離により、ハイブリッドナビの自律航法を可能としている。最新機種には、高低差を割り出すときに役立つ「加速度センサー」も搭載されるようになり、測位精度はさらに向上している。

ポータブルナビにも出番あり

 だからといって自立航法装置を持たないポータブルナビが「使えない」かというと、さにあらず。2000年に米国が決断したGPS信号スクランブル解除により、測位精度が大幅に改善されているほか、GPSの信号を処理するソフトウェアの技術も向上している。

 2007年9月に正式運用が開始された「運輸多目的衛星用衛星航法補強システム」(MSAS)にも要注目だ。GPS衛星から信号を受信、そこに含まれる誤差を補正するための補強情報を人工衛星「MTSAT」(ひまわり6/7号)経由で提供する、という国が整備したこのシステムは、測位精度向上に役立つ。ハイブリッドナビほどの精度は期待できないかもしれないが、高い機動性とコストパフォーマンスを持つポータブルナビの出番は、今後増えることはあっても減ることはないだろう。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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