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薄型テレビ、2008年春の新モデルを検証する(1)本田雅一のTV Style

» 2008年04月19日 23時18分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 桜の花も散り、いよいよ各社から春の新モデルが登場しはじめた。

 大手家電メーカーは春と秋に年2回のモデルチェンジを行うのが通例だ。春は価格と付加価値のバランスに優れた中位モデル以下のモデルチェンジ。秋は最新技術を盛り込んで、その時点で最高の機能と画質を盛り込んだ上位モデルが投入される。

 しかし、今年はオリンピックイヤーであり、夏のオリンピック商戦を睨んだ製品が登場してくる。オリンピック商戦といっても、かつてほど爆発的に売り上げが伸びるわけではないが、それでもやはり通常期よりは市場は盛り上がるため、各社は商機を逃がすまいと、各々独自の戦略で新製品を投入してくる。

 年末のように機能一新、パネル一新の最新モデルがズラリというわけではなく、メーカーごとに力の入れるポイント、狙う市場は異なっているため、統一された傾向があるわけではないが、いくつかのパターンには分けることができる。今回は、その中でもオリンピックイヤーに通常のモデルチェンジパターンを破って、思い切った新機能を搭載した製品を持ってきたメーカーを紹介しよう。

 まず、高画質エンジンの「メタブレイン・プロ」により、人気テレビブランドの1つに成長した東芝「REGZA」だが、今回は従来の最上位機種であった「Zシリーズ」を含めたモデルチェンジを行っている。

photophoto 「ZH500シリーズ」(左)は52V型と46V型、「ZV500シリーズ」は42V型と37V型をラインアップ

 従来のREGZAは、Zシリーズを最上位として、便利なHDD録画機能を搭載した「Hシリーズ」、コストパフォーマンスに優れた「Cシリーズ」というラインアップだった。しかし今回は、Zシリーズの中に従来のコンセプトを継承した「ZV500シリーズ」と、機能や画質をそのままにHDDを内蔵した「ZH500シリーズ」の2つを設けたほか、Hシリーズは「RH500シリーズ」、Cシリーズは「CV500シリーズ」へとそれぞれ進化している。

 各製品の機能については、発表記事を参照していただきたいが、この春に発表されたすべてのモデルに「おまかせモード」が搭載されたのが最大の特徴だ。各シリーズごと(価格帯の違いごと)に機能や画質の差はあるが、主要な新製品すべてに搭載されているというのが、とても大切なポイントだ。

photo 初期設定時に室内照明の色を“蛍光灯色”と“電球色”から選択する

 「おまかせモード」は、この連載でも取り上げたことのある設置環境に応じたテレビの画質調整を、可能な限り自動で行うというものだ。同様の機能はパイオニアの「KURO」でもリビングモードとして実現しているが、東芝の「おまかせモード」はより幅広い範囲での自動調整を行う。

 積極的な自動調整を行うため、日本の日の出・日の入情報を内部に持ち、地域設定に応じて日没後は室内照明であると判断。室内照明の色を“蛍光灯色”と“電球色”で異なる色温度調整を行うなど、従来にないユニークな環境判別の仕組みを持つ。

 環境にあわせた自動画質調整機能は今後、徐々にトレンドとして各社が取り入れていくことになるだろうが、REGZAの場合はもともと映像の内容に合わせて自動的にトーンカーブを調整するなどの判別を行ってきたこともあり、最初から効果的で完成度の高い機能に仕上がった。店頭ではなかなか体感しにくい機能ではあるが、実際に利用するときの“役立ち度”はとても高い。

 一方、オリンピック公式スポンサーとして力を入れているのは、言うまでもなくパナソニックだ。こちらも最上位モデルからバリューモデルまで幅広くモデルを一新し、とくにプレミアムモデルという位置づけの「PZ800シリーズ」では、高コントラストを実現したほか、従来は不得手だった伸びやかな白ピーク、そして高彩度部分の色再現性を向上させている。

photophoto パナソニックは新開発のプラズマパネルを採用。コントラスト比は3万:1

 もっとも、パネルの進化は想定内。もともと、最近のパナソニック製プラズマテレビはパイオニアにこそ一歩及ばずとはいえ、階調の素直さや絵作り、それに価格とのバランスといった点で地味に良いものだったが、前面パネルの処理も適切になり、積極的に見せる絵作りを展開したことで、プラズマが本来持っている良さを生かした製品になっている。この点は評価すべき点であろう(次週へ続く)。

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