Blu-ray Discレコーダーの市場は筆者の予想を超えるペースで拡がっているようで、とくに記録メディアに関して選択肢が大幅に増えた。すでにユーザーとしてBDへの録画をしている人は先刻承知かもしれないが、BD-Rの1層メディアに関しては25枚パックも登場しているのを発見して驚いた。
年内には1枚500円程度にはなると思っていたが、海外製メディア・25枚のホールセールながら1枚あたりの価格は500円ほど。国産品は安いものが5枚パックで1枚あたり600〜700円ほどだが、夏ぐらいには500円ぐらいまで価格が落ちてくるかもしれない。価格が下がり、レコーダーの数が増えてくれば、加速度的に流通量も増えることは明らかだろう。
ハイビジョン放送の映画1本を2500円のBDに録画するか、それとも300円のS-VHSテープにD-VHS規格で録画するかで迷っていた数年前の状況が嘘のようだ。
たとえ“録画はSD画質でもいい”という人でも、CPRM対応DVD相当で5枚分が1枚に収まるとなれば、BDを使った方が良いと考えるかもしれない。1枚あたりの価格がどのぐらいの価格で落ち着くのか、まったく予想できない状況になってきた。
さて、ここまで2回に渡ってBlu-ray Discレコーダーのプラットフォームに注目して、最近のトレンドについてお話してきたが、具体的な製品について知りたいという読者も多いことだろう。最後に実際の製品レベルにまでブレークダウンして、各製品の特徴などを拾っていくことにしよう。
この春から夏にBDレコーダーが欲しいというのであれば、画質において最も優れた製品は間違いなくパナソニックの「DMR-BW900」だ。ハードディスク容量の少ない「DMR-BW800」も、ほぼ同じ機能を備えているが、なぜか音質も画質もBW900の方が(わずかだが)良い。同社によると違いは電源ユニットとアナログ音声出力部ぐらいということで、なぜHDMIからの音と映像がBW900の方が良いのか(実際に差があるのは認識しているようだ)、開発側でもよく分からないと首を捻る。
もっとも、BW800とBW900の画質・音質の差は本当にわずかなものなので、予算がない、あるいはハードディスクは500Gバイトで十分というのなら、BW800でも一向に問題はない。松下のBDレコーダーの画質が良いのには理由があり、BDビデオ再生時に、高精度のクロマアップサンプリング(圧縮時に失われる色情報の補間処理)処理を行っているためだ。
実際にクロマアップサンプリング技術を使っていない機種と比べれば一目瞭然だが、色がしっかり乗って立体感があり、白ピークも輝くように見えてコントラストが一見、高まったように感じられる。
ただし、クロマアップサンプリング技術が効くのは市販のBDパッケージビデオに対してのみ。放送波の場合はMPEG圧縮の品質が市販品よりも低いため、アップサンプリングを行っても有意な差が出ないのだそうだ。
リモコンの機能やボタンレイアウト、編集機能の貧弱さや番組表デザインの使いにくさ、自動録画機能がないなど弱点も多い現在の松下製BDレコーダーだが、市販BDパッケージ再生の品質を重視。編集はあまり行わない。追加機能もあまり重視しないのであれば、この秋に新機種が出るまでは最もおすすめできる製品だ。
しかし、ハードディスクレコーダーとしての使いやすさを求めるユーザーには、ソニーのBDZシリーズも良い選択肢だ。自動チャプターやおまかせ録画など、より利便性を追求した仕様は、おまかせ録画された大量の番組を、サクサクと次々に流し見していくユーザーに向いている。
画質面では松下製が特別に良いだけで、ソニー製が悪いというわけではない。とくに放送録画に関しては、ほとんど差はないと考えていいだろう。ただし、個人的には(市販BDパッケージでも、放送録画の場合でも)輪郭が残像として残って見える現象が気になってしかたがない。
これはフレーム相関NRが強くかかっているからだ。画質設定で「FNR」という項目を「切」に設定すると、この残像を消すことができる。FNRのおかげでクリアさを得ている部分もあるので、気になる人は店頭でどのような差があるのかを確かめてみるといい。
ニューカマーの三菱電機は、高機能かつ簡単な操作が売りの液晶リモコン「液晶グット楽リモコン」がフィーチャーアップされているが、実は結構、マニアックに機能も作り込んである。
松下電器製の「UniPhier」(ユニフィエ)を採用しているため、番組表などのデザインは松下と同じだが、三菱独自の機能実装部分は多い。録画/再生履歴からユーザーの傾向や嗜好を解析し、番組を自動録画する「おすすめ自動録画」は、ソニーの自動録画機能と比べても理解しやすく、独自性が高い。CMを自動的に飛ばし見できたり、シーン判別技術を用いて音楽番組の楽曲部分だけを再生する機能も、実際に体験してみるとほんとうに便利。肩肘張らずに手軽に使えるBDレコーダーになっている。一方で、クロマアップサンプリング技術など、「ブルーレイディーガ」の開発部隊が実装した松下独自の部分は三菱製レコーダーには搭載されない。
なお、上記に挙げたレコーダーは、いずれもMPEG-4 AVC録画に対応している。これから買うなら、録画時間を増やせるMPEG-4 AVC対応は必須だ。高画質にBDで残したいユーザーは使うことを躊躇する人もいるだろうが「あと少しで1枚に入る」コンテンツを2枚に分けるか、それとも再圧縮するかは、その時々にコンテンツの内容によって判断すればいいだけだ。何もすべてMPEG-4 AVCで録画しなければならないわけではない。
さて、ここまで読んでみて、1つ不足しているピースがあることに気付いた人もいえるだろう。そう。ハイビジョン番組を自在に編集し、1枚のディスクに収めるための最適な製品というのは、実は今のところ存在しない。もちろん、各製品とも編集機能は持っているが、マニアックな視点では不満が残るという人も少なくないと思う。
東芝はBDレコーダーを開発しないことを表明しているため、唯一、映像編集機能を売りにしていたRDシリーズのユーザーは、しばし他社の操作に慣れるしかないのかもしれない。あるいは、ポッカリと空いたRD的製品のエリアには、松下もソニーもいない。これからブルーレイレコーダーに入ってくるメーカーは、この隙間に滑り込むのが良いと思うけれど、それにもまだ時間が必要だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR