デジタルカメラでいうダイナミックレンジ(以下 DR)とは、CCDなどのイメージセンサが感知可能な明るさの幅のこと。この値が大きければ大きいほど、1枚の画像で扱うことができる明暗の度合いが大きくなるため、より自然な表現が可能となる。
DRが狭い場合、被写体は「のっぺり」とした印象になりがちだ。例えば、晴天下の雪景色を撮影するときには、露出オーバーでハイライト部の階調がなくなってしまい、人間の目では識別できるグラデーションも均一な印象となる「白とび」が発生しやすい。反対に、礼服のような黒いものを被写体とする場合には、露出アンダーでシャドー部の階調を描ききれず、「黒つぶれ」が発生する。雪景色を走る蒸気機関車のように、両方の要素を含む写真はなかなか撮影が難しい。
銀塩フィルムとの比較において、デジタルカメラの弱点といわれ続けてきたのが、このDRの狭さだ。画素数を増やす競争が一段落したいま、広いDRの獲得がメーカーのひとつの目標となっている。
例えば、富士フイルムのデジタル一眼レフ「FinePix S5 Pro」は、従来型CCDに比べ400%アップというDR特性がウリだ。搭載される「スーパーCCDハニカム SR Pro」は、「S」と「R」という2種類の画素により構成され、前者は高感度、後者はDRを広げる役割を担う。
ちなみに、DRの広さはイメージセンサーの面積と相関関係にある。画素数が同じ場合、イメージセンサーが大型化するほど画素1つ1つを大きくできるため、結果としてDRが広く高感度となるのだ。しかしボディの小型化が求められるコンパクトデジカメの場合、そうイメージセンサーを大きくするわけにもいかない。
広いDRを獲得するための手法はメーカーそれぞれだが、画像処理エンジンを使い補正することが1つのトレンドだ。例えば、前述した富士フイルムのハニカムSR型素子は、FinePix F700やF710といった機種にも採用されていたが、1月発表の「FinePix F100fd」など同社製最新コンパクト機ではSR型ではなく、(単一画素のみを搭載する)HR型イメージセンサーを備え、画像処理エンジン「リアルフォトエンジンIII」を併用する方法となっている。
2007年8月発表のニコン「D3」に採用された「アクティブD-ライティング」も、画像処理エンジンを用いる手法の1つ。従来の撮影後に補正する機能(同社製品では「D-ライティング」)とは異なり、あらかじめ明暗差を設定しておくことにより、撮影時点でハイライト/シャドー部および中間部が自動的に調整され、撮影した画像が目で見た印象に近いコントラストへと自動補正される。このような画像処理エンジンの改良が、今後のデジタルカメラ(特にコンパクトタイプ)におけるDR拡大のキーとなるはずだ。
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