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夏休みに見たいオススメBlu-rayソフト本田雅一のTV Style

» 2008年08月15日 11時20分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 主要な新作はもちろん、“こんなものまで?”と思うほどたくさんの作品がBlu-ray化されている米国の状況にまでは追いついていないとはいえ、日本でも見たいBlu-rayソフトが増えてきた。わが家のソフト棚にも、英語版を合わせれば300本近いソフトが並んでいる。何でも自由に選べる状況には遠いけれど、しかし充分に見応えのある作品を選べる程度には豊富になってきた印象だ。

 そんな中から、いくつかの視点で気に入ったBDソフトを紹介していきたい。

とにかく高画質なBDソフトが見たいなら

photo (C)2008 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 内容はともかく、現時点におけるBDソフトの臨界点とも言える画質を楽しみたいという人には、20世紀フォックスの「アイ・ロボット」と「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」を紹介しよう。とくにファンタスティック・フォーは、現時点においてBDソフトナンバーワンの高画質だと思う。

 両作品に共通するのは、細かいフィルム粒子で映像が構成されているのがハッキリと分かる、フィルタで滑らかさを演出しようとはしていない(つまり、ディテールを落としていない)素肌美人の画質という点。

 フォックスの作品はコントラスト感が高く、シャープでエッジの効いた画質でデジタル化されているものが多い。この2作品はその代表的な絵柄を踏襲しているのだけど、同じフォックス作品でマスターの質も高い「ダイ・ハード4.0」と比べると、ゆがみやノイズを全く感じさせず、それでいてシャープさをキープしている。

 いずれも明るいシーンでは、まるでフィルム粒子がないクリアな映像に見えるが、大画面でよく見ると、とても小さな粒子が集まって動画が構成されているのが見えてくる。こうした映像はとても圧縮しにくいので、通常はフィルタをかけて滑らかにしてしまう。滑らかにしてしまったのがダイ・ハード4.0。そのままの情報をキープし、ゆがみなく圧縮しようとしたのが、アイ・ロボットとファンタスティック・フォーだ。

 同様に超高精細な映像は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでも見ることができるが、トータルの画質(内容はまた別の話)でいえば、僕はこの2作品が現時点でもっとも良いと思う。

 とにかくBDの画質とはどんなものか? を知りたいなら、この2作品は外せない。

家族で楽しみたいなら

photo (C)Disney.

 一方、高画質かつ大人から子どもまで、みんなで楽しめる作品で、映像も音もいい、なんて贅沢な要求に応えられる作品というならば、僕は一番に「魔法にかけられて」を挙げる。今年公開されたばかりのディズニーの新作だが、ディズニーアニメの世界と実写映画の世界を見事に融和させ、高画質で高音質。内容面でも今年一番といってもいいほどのデキだ。

photo TM&(C)MMVII New Line Productions, Inc. (C)MMV III New Line Home Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

 画質はやや落ちる(精細感はあるが、ディテールがやや落ちる)ものの、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが日本では販売する(制作はニューライン・シネマ)「ヘアスプレー」も楽しい。同名ミュージカルの映画化だが、主人公のひたすら前向きな姿勢とコミカルタッチのストーリー、人種差別をテーマにした意外に深いメッセージ性、それにテクニカラー調のつややかな色遣いなど、興味深くて楽しく、とてもハッピーになれる映画だった。

 インターネットと接続することで、ユーザーにさまざまなサービスを提供するBD-Live対応ソフトも最後に紹介しておこう。現在はプレイステーション3でのみ体験できる(年内に対応プレーヤー・レコーダーも各社から発売予定)状況だが、少しずつ日本でもソフトが出てきた。

photo (C)1997 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 日本初のBD-Live対応ソフトはソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの「メン・イン・ブラック」(MIB)。それに続く第2弾が「バンテージ・ポイント」だ。MIBは説明不要の人気映画だが、バンテージ・ポイントはDVDと同時発売の新作(8月20日発売)。

 バンテージ・ポイントは、ある事件の真相を、その場に居合わせた数人の関係者の視点で繰り返し描写していくことで真相に迫っていくという、とても興味深い内容も素晴らしい。

 さて、最後に“これはマズイのでは”と思える低画質ソフトも、不本意ながら1本挙げておきたい。ソニー・ピクチャーズが販売している「エリン・ブロコビッチ」だ。H.246/AVCを用いた同社発売としては初期の作品だが、まるで油絵のようにつぶれた絵柄。とくに室内のシーンでは、階調のない肌ににじんだような輪郭、ペターとディテールのない質感に驚く。程度こそ違うものの、傾向としてはカムコーダーの静止画キャプチャや携帯電話カメラの画質に似ている。

 この作品は意図的に粒度の粗い高感度フィルムで撮影しており、フィルム粒子がものすごくたくさんある。これをちゃんと再現しないと監督の意図した絵が出てこないことで有名なソフト。ハリウッドではこの作品を用いて、圧縮コーデックの評価を行うこともある。それだけ難しい素材ではあるのだが、しかし、フィルタで粒子を完全につぶしてしまい、ディテールがなくなるどころか、見えるハズの電線や道路にあるスジが消えてしまっている。

 かなり特殊な映像であることや、AVC初期の作品であることといった事情はあっただろう。おそらくこの作品ほどひどい圧縮のソフトは、今後登場しないのではないだろうか。そうした意味では貴重な1本といえる。

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