画質についてだが、一般的なPC用途では、モード選択を「グラフィックス」、プリセットモードを「標準」に設定すると最も自然な発色になった。通常はこの設定を使い、場面に応じてプリセットモードの「マルチメディア」や「ゲーム」を使い分けるのがいいだろう。映像鑑賞やゲーム用途では、モード選択を「ビデオ」にして、プリセットモードのムービー/ゲーム/スポーツ/自然色も試してみてほしい。
階調性はまずまずで、グラデーションパターンを表示してチェックしたところ、シャドウ寄りの階調が少しつぶれているものの、中間調からハイライトにかけてのトーンジャンプはほとんど気にならなかった。ただ、デジタルカメラで撮影した鮮やかな写真を表示してみると、赤や黄色の色飽和が散見された。全体的には発色がやや淡泊で、最近のデルのワイド液晶ディスプレイにしては色域が広くない印象だ。
液晶パネルはTN系なので、視野角は垂直160度/水平170度という公称値より狭く感じることが多い。上下方向に少し角度をつけて見ると色が大きく変わり、画面と正対していても、上下で輝度ムラや色ムラが感じられる場合もある。左右方向の視野角はそれなりに耐性があり、多少は斜めから見ても色の変化は少なめだ。
AV機器やゲーム機をHDMIで接続したときは、モード選択を「ビデオ」にするのがよいだろう。ダイナミックコントラスト機能がない割には、意外とメリハリが利いている。静止画と同じくシャドウ寄りのつぶれが見えやすいシーンはあったが、映像鑑賞ならまず気にならない。暗いシーンが多いゲームだと、輝度を高めに、コントラストを低めに調整したほうがよい場合もある。背景の動画ブレは微妙に感じるものの、最近の液晶ディスプレイとしては標準的だ。
さて、アスペクト比が16:9の1920×1080ドット表示の使用感だが、映像以外のPC用途では思ったより横長で少しアンバランスに感じる。これは普段からPCで見慣れていない解像度であることも影響しており、慣れてくれば気にならなくなるはずだ。横方向の解像度が高いため、複数のウィンドウを並べて配置する場面が使いやすい。もちろん、Windows Vistaのサイドバーなどを表示しても、デスクトップが狭く感じることはないだろう。ドットピッチは0.276ミリで、1920×1200ドット表示の24型ワイド液晶ディスプレイとほぼ同じため、文字やアイコンの見た目は変わらない。
一方で縦方向の解像度は、1920×1200ドットと比較すると多少もの足りない。Webブラウズ、WordやPDFの縦長の文書を扱うときは、縦方向の解像度が少しでも高いほうが見やすいものだ。ただしこれは、あくまで1920×1200ドットのモデルと比較したときの話であり、大きな不満とまではいえない。1280×1024ドットや1680×1050ドットの液晶ディスプレイから買い替えた場合は、十分快適に使える解像度だろう。
1920×1080ドットの解像度が生きるのは、やはりハイビジョン映像の鑑賞だ。1080i/pの映像タイトルやHD対応ゲームなら、上下の黒帯なしで画面全体にドットバイドット表示されるので無駄がない。シネマスコープサイズの映画などで上下に黒帯が入るのは仕方ないが、ハイビジョン映像の表示に関しては液晶テレビと同じ感覚だ。
S2409Wは、エントリークラス寄りのPC用ワイド液晶ディスプレイとしては手堅くまとまっている。USBハブなどの付加機能やスケーリング機能はないものの、HDCP対応DVI-DやHDMIの合計3系統の映像入力、プリセットの画質モード、入力系統ごとに記憶される設定内容などは、使い勝手を高めてくれる要素だ。
となると、最も考慮すべきなのは、やはり1920×1080ドットの画面解像度だろう。アスペクト比が16:9なのでハイビジョン映像の表示がしっくりくるし、製品が出そろってきたPC用の地デジチューナーとも相性がいい。映像以外のPC用途でも、縦解像度を重視するシーンでなければ、特に使いにくく感じることはないはずだ。
ただし、比較対象が1920×1200ドット(WUXGA)の製品である場合、S2409Wの立場は少々ぐらつくかもしれない。価格を見ても、S2409Wの直販価格は2008年8月29日時点で5万9800円だが、同じ価格帯にはHDMI入力を持ったWUXGAの液晶ディスプレイが存在する。解像度だけで製品選択はできないとはいえ、PC用途がメインであるなら、より高解像度のWUXGA製品が有利なシーンは多い。
S2409Wを選ぶとすれば、ハイビジョン映像の鑑賞やHD対応ゲーム機との接続、そして比較的コンパクトな本体サイズを重視するときだろう。HDMI端子にHDD/DVDレコーダーやBlu-ray Discレコーダー、プレイステーション 3などのHD対応ゲーム機をつなぐと、1920×1080ドットの解像度がより生きてくる。いずれにしても、比較対象にする製品や、自分のニーズをじっくり吟味することが必要だ。
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