昨年の第1世代で、いちはやく製品を市場に投入したTzeroだが、現在の国内市場をみると決して優勢とはいい難い。シャープの「AQUOS X」や三菱「LF2000」はイスラエルのAMIMONが開発したワイヤレス技術を採用しており、実績の上では一歩リード。ソニーの「BRAVIA ZX1」も同社製チップを採用しているとみられる。こちらは5GHz帯の無線を利用して非圧縮で転送する技術で、強力な誤り訂正の技術が特徴となる。ただし、やはり1080iが上限だ。
一方、1080p伝送が可能になる「Wireless HD」の実用化を待っているのがパナソニックなどのメーカー。Wireless HDは米サイビームが開発したもので、60GHz前後のミリ波帯を使用して非圧縮&1080pのフルHD映像が送信できる。圧縮に起因する画質劣化やレスポンスの悪化も原理上は発生しないのがメリットだが、ミリ波という波長の短い(=直進性の高い)周波数を利用するため、障害物に弱いと指摘されることが多い。
TzeroのCOOを務めるバーナード・グレイサウワー氏は、「ZeroWire2.0の大きなメリットは、1デバイスあたり50ドル未満のコストでワイヤレス化が可能になること。リファレンスボードなどを含むソリューションとして提供できるため、メーカーはすぐに生産することができる」とまずコスト面をアピール。例えばテレビと映像ソース機器(チューナーやBDプレーヤー)との間をワイヤレス化する外付けボックスのリファレンスボードは75ドルから提供する。またテレビに内蔵する場合、H.264を利用する同社製品ならVoD用のデコーダーチップなどに処理をまかせることもできるため、コストメリットがより大きくなるという。
一方で競合技術については、「5GHz帯の製品は、アンテナが多くなりパワーアンプが必要。ノイズ対策などでコストがかさんでしまう。60Hz帯のものはアンテナアレイなどフロントエンドのコンポーネントが増える。なにより、(Wireless HDは)まだ市場にない」と手厳しい。
非圧縮伝送のほうが画質や将来性の点で優位とされる点にも反論してみせた。「非圧縮をうたうソリューションでも、実際に製品を取り寄せてみると中に圧縮行程が含まれていたりする。また将来的にはフレーム数やビット拡張で映像の情報量が増えてはず。その時、非圧縮伝送では条件によってリンクが切れやすくなるだろう」。
Tzeroでは、同日デベロッパーカンファレンスとプライベート・ミーティングを開催し、国内のテレビメーカーに向けてプレゼンテーションとデモンストレーションを行った。参加企業のリストには、まだワイヤレス対応テレビを投入していないメーカーのほか、競合するワイヤレス技術を採用しているメーカーの名前も多く並ぶ。もちろん目的はさまざまだが、テレビのワイヤレス化を巡る競争は始まったばかり。今のところ、ハイエンドモデルにしか実装されていないワイヤレス技術がより低価格なテレビに広がるとき、Tzeroのいうコストとスピードは重要になるかもしれない。
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