年末商戦も佳境に入ってくると、新製品の話題も少なくなり、本連載でも新しい話題を提供しにくいが、ここで1つ、テレビを選ぶ際のポイントをまとめておきたい。これまでも、テーマごとに選び方のポイントを紹介してきたが、総括という形で読んでいただきたい。
われわれのようにAV機器の紹介をする立場にある者は、主要メーカーの主要な製品の多くを店頭ではなく、家庭環境を摸した照明の下で、自分が見慣れたコンテンツを視聴する機会がある。このため、どの画質という側面から傾向を見極めることができるが、残念ながら量販店ではそうした比較はできない。
いくら多種多様なテレビを数多く視聴していても、本当の実力差を店頭で判断しろといわれると自信がないと答えるだろう。無論、大まかな傾向は判断できるが、似たような実力のテレビとなると、その判断は一般家庭に近い照明環境の下でやりたい。
加えてテレビを横並びにして、同じコンテンツを再生して比較するというのも、個性の違いを確認するのには良いが、本当の実力というと推し量りづらい。横並びで見ると明るく、コントラストも強調した映像の方がキレイに見えがちだからだ。人間は何かと比較しながら絶対的な映像の質や色を評価するので、単体で見た場合とは違う印象を持ってしまいがちだ。
「じゃぁ、店頭で見て好みの画質を自分で選べといっても、選べないじゃないか」といわれるだろうが、全くその通り。だから画質でテレビを選ぶには、ある程度の経験が必要になってくる。店頭で見比べて「私にはどれがいいのか判断がつかない」と思ったのであれば、それを恥じる必要はない。もともと、そういうものだからだ。
そのために、われわれのようなレビュアーがいることになるが、レビュー記事の内容を把握し、全く同じ共通認識を保って製品の違いについて伝えるのも、やはり難しい。それでも、なんとか良い画質の製品を自分で選びたいと考えるのであれば、量販店ではなくAV専門店との付き合いを考えてみるといい。
AV専門店は量販店よりも高価なことは多いが、だからといって専門店が暴利をむさぼっている訳ではない。専門知識を持って、顧客が納得できるよう比較視聴できる環境を用意してくれるのが専門店の良さだ。お目当てのメーカーがあるならば、そのメーカーの系列店にお願いするのもいいだろう。量販店全盛の時代、きちんと生き残っている専門店、系列店は何らかの得意技や面倒見の良さがあるからこそである。
もちろん、すべて自分で判断材料を用意できるというならば、より安価な店を選ぶというのも悪いとはいわない。要は画質にこだわった製品選びを自分でやりたいと思うなら、きちんと評価できる環境を用意してもらった方が良いですよ、という話だ。
そして、家庭環境に近い明るさで製品を視聴する機会が得られたなら、自分の目を信じること。Webや雑誌の記事や友人の意見も大いに参考にすればいいが、いったん自分で選ぶと決めたならば、自分の感性を信じるのがいい。テレビは比較的長寿命な電化製品だから、納得できない買い物をしてしまうと後悔も長くなる。
とはいえ、今年のテレビ商戦は大型モデルの売り上げが伸びず、低価格な20型台あるいは32型程度までの製品がよく売れている。景気後退が叫ばれている中、財布のヒモも閉まってきているのだろうが、読者の多くは画質より価格と考えているのではないだろうか。
しかし画質の善しあしにはあまり興味が持てないという方も、“HDD内蔵テレビ”については検討すべきだと思う。テレビで録画機能付きというと、どうしても中途半端なイメージを持つ方もおられるようだが、HDD内蔵テレビは、昔のVHSレコーダーや昨今のHDDレコーダーとはちょっと違う。
日本の単体レコーダー(光ディスク・HDDハイブリッド含む)は、あくまでVHSレコーダーが進化した製品として生まれた。HDD内蔵タイプも、最終的に何かのメディアの記録することが目的で、そのための利便性を上げるためにHDDを用いている。もちろん、中には一度見てすぐに消す、タイムシフト専用機としてしかレコーダーを使わない人もいるだろうが、基本はやはり“レコーダー”だ。
一方、テレビに内蔵されているHDDは、「テレビを見るスタイルを変える」ために追加されたものと考えると分かりやすい。最初から記録(レコード)するのが目的ではなく、テレビ番組表という時間の束縛を受けずにテレビを見るための道具として、テレビ機能の拡張に用いられる。
今年は大型テレビが売れにくい環境にあることも手伝ってか、予想以上に低価格化が進んでいるようだ。もし、予定していたよりも安く買えそうならば、同じサイズでHDD内蔵型も検討してみるといいだろう。予算内に収まるのであれば、HDD容量がさほど大きくなくてもいい。内蔵されていない場合に比べると、テレビを驚くほど便利に楽しめるようになるはずだ。
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