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ぜいたくなエントリーモデル、ソニー「VPL-HW10」特集:30万円で買えるフルHDプロジェクター(3/3 ページ)

» 2008年12月10日 18時31分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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映像チェック

 映像のきめ細やかさに関しては、格段のレベル。メーカーも「ほとんどメッシュ感がない」と自負しているが、実際にほぼ感じないといってもウソではない。デジタル臭さをいっさい感じない、ナチュラルなニュアンスを持つ素晴らしい映像だ。おなじフルHDであっても、透過型液晶タイプに比べてHW10は1ランク細やかな映像を見せられているかのよう。階調も自然で、なめらかな中間調が人の肌や風景などの素材感をリアルに描いているため、その感触すら伝わってきそうだ。こういった繊細な表現は、SXRDならではのアドバンテージといえるだろう。

 黒に向かっての沈み込みもなかなか優秀。エントリーモデルとしては望む以上の細やかな段階を持った表現で、微妙に異なる暗さをきちんと描き分けてくれる。そのためこれまでは単に真っ黒に見えていた背景も、きちんと奥行き感を感じとれるようになった。オートアイリスの効き方も自然で、画面が切り替わるごとに違和感が生じることはまったくない。明暗の階調に関しては、文句のない完成度だ。

photophoto 「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館(ESXL-2/6090円)」の映像。ライティングのまぶしさに関してはほかの機種に一歩譲るものの、陰影の表現に関しては丁寧すぎるくらいの細やかさが感じられる。景色もリアル(左)。モードをダイナミックに変更、30型+40型の蛍光灯を点けた状態の映像(EOS kiss N、ISO400、シャッター速度1/15、F11で撮影)。写真のとおり画面が白んで映像を確認することができなかった。しかしこれはかなり意地悪なテスト。間接照明であれば充分楽しめる明るさは確保されていた(右)

 いっぽうカラーレーションは、派手さよりも自然さを重要視しているイメージ。目に飛び込んでくるようなエネルギッシュさはないが、自然な風合いがより現実感を高めてくれる。景色の色合いに凝った映画などでは製作者側の意図がとてもよく伝わってくるし、CGのメカなどはまるで現実のものと錯覚してしまうほど。この自然さに一度はまってしまうと、ほかの選択肢を考えられなくなってしまうかもしれない。

 動きの速い映像に関しても、かなりの順応性を示していた。倍速駆動非対応のパネルであるのにもかかわらず、残像や動きボケはさほど感じない。厳密にいえば確かに存在はするが、それほど目立たないといった印象だ。スポーツやSF映画など、動きの激しいコンテンツをよく見る人にとっては、かなり有力な選択肢となるはずだ。

 唯一、他社のエントリークラスに後れをとっているのが、絶対的な明るさだ。エプソンのように「リビングの照明でも楽しめる」ほどのパワーは持ち合わせておらず、実力を十分に発揮できるのは文字が読める程度の間接照明まで。しかしそれは他社製品――とくにエプソンがズバ抜けて明るいためで、HW10だって真っ暗にしなくても充分楽しめるから、ひと昔前のプロジェクターを使っている人なら充分と感じるはずだ。なによりこの価格で本格的な映像表現力を持ち合わせていることの方が重要。総合的に見ると完成度の高い、優秀機といえる。

お勧めしたいユーザー

 映画を中心に、本格的なホームシアターを楽しみたいけれども、とりあえず予算は低く抑えたいという人にはうってつけのモデル。映画は好きだけどプロジェクターは初心者という人や、2カ所目のシステムを構築したい人、ホームシアター経験者だけど予算縮小を余儀なくされた人、スポーツなど動きの激しい映像をよく見る人など、さまざまなタイプの人が満足できる製品となっている。

 1ついえることは、このHW10でホームシアターをスタートできる人は、かなりの幸せ者であることだ。映像のもつ素晴らしさ、ホームシアターの素晴らしさを、いままでになかった低予算で、しかも最初の一歩からスタートから存分に享受できるのだから。何とも嬉しい時代になったものだ。

品番 VPL-HW10
パネル形式 SXRD反射型液晶パネル0.61型、アスペクト比16:9
投映レンズ 手動ズーム・フォーカス(1〜1.6)、F:2.50-3.40 f:18.5-29.6ミリ
光源 200W UHPランプ
画面サイズ 最小40型〜最大300型
投射距離(100インチ) 3.1〜5.3メートル
有効光束(明るさ) 1000ルーメン(最大)
コントラスト比 3万:1(最大)
騒音レベル 22dB(ランプ低輝度時)
映像入力端子 HDMI端子×2(HDMI 1.3b Deep Color対応)、コンポーネント(Y-Pb/Cb-Pr/Cr)×2、S端子×1、RCAビデオ端子×1、D-sub15×1
消費電力 300W(待機時 0.5W)
外形寸法 幅407.4×奥行463.9×高さ179.2ミリ
質量 約10kg

試聴に使用した環境

 今回のテストには、わが家の自称「極小シアタールーム」を使用。広さは6畳程度であるものの、スクリーンは16:9、100インチのキクチ「ホワイトマットアドバンス」を使用。スピーカー下の床を抜いて地面から直接重量ブロックを積み上げたり、両サイドの壁面に反響板を設置して音響特性をそろえるなど、ホームシアター系のテストにはおおよそ適した環境となっている。

 この部屋を縦長に使用し、スクリーンの対向面にある棚にプロジェクターを設置。レンズシフト機能を使って最適な投射に設定することで、ごく一般的なパターンの利用方法を再現している。またプロジェクターとプレーヤーはオーディオテクニカ製の高級HDMIケーブル「AT-EDH1000/1.3」(2万3625円)を使用してダイレクトに接続。音声は光デジタル出力とした。また各機器はオーディオテクニカ製の電源タップ「AT-PT707」(オープン価格)に接続、配線や電源による音質の劣化も最小限にとどめている。


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