各社から発売された薄型テレビ、今年春の新製品をふかんしてみると、製品にもっとも大きな変更を加えたのは日立製作所だった。テレビ事業の採算性を問われ、プラズマパネルの生産からも撤退した同社だが、しかし最終製品のテレビでは意外な粘り腰を見せている。
シャープ、ソニー、パナソニックが幅広いラインアップで、消費者のあらゆるニーズを拾い上げようと広く網を張っているのに対し、日立はプラットフォームを1つにまとめ、あらゆるユーザー層に訴求できる全力投球のテレビとしたのだ。
日立のテレビは、超薄型液晶の「UTシリーズ」(XP800シリーズ)、プラズマの「03シリーズ」、それに液晶の「03シリーズ」を並べている(→新生“Wooo”はすべてHDD内蔵、3シリーズ新登場)。液晶パネル採用モデルは、液晶03シリーズの42V型を除き、すべてIPS液晶を採用しており、自社生産をやめたプラズマはパナソニックからの調達となる。液晶パネルの生産を行うIPSアルファテクノロジも、資本関係はあるものの基本的にパナソニックに譲渡されており、東芝などと同様に表示パネルを必要に応じて外部調達するテレビメーカーとなった。
だからだろうか。思い切った商品構成とし、全シリーズで同一のプラットフォームを採用し、機能的な差をなくしている。UT-XP800シリーズとL-XP03シリーズの差は液晶パネルのバックライトが薄型用か、否かの違いであり、シリーズごとに意図的な機能差を付けていないのである。
加えてH.264を用いたトランスコード機能を含む高機能なHDD録画機能を全モデルが持ち、「アクトビラ ビデオ・フル」およびダウンロードにも対応。iVDRカートリッジを使う「iVポケット」も全モデルに搭載している。Wooonetによるビデオメールなどのサービス、DLNAへの本格的な対応(テレビ本体にサーバ/クライアントを持つ上、PC用DLNAサーバ/クライアントも同梱されている)など、出し惜しみのない、まさに全力投球だ。
このところ同社のAV家電事業は、どの分野も不調が続いていた上、液晶、プラズマともにパネル生産のイニシアティブも持たなくなったことで、今後のテレビ事業継続を危ぶんでいた読者もいるのではないだろうか。しかし、日立は後退することを選ばず、自社パネルを失って、むしろ前進することができたように思える。
なにしろ、この春のWoooシリーズは、どのモデルも一様に画質面で大きく進歩した。特にプラズマ03シリーズは、すばらしい画質を得ている。パネルOEM元のパナソニックに勝るとも劣らない出来である(編注:日立ではガラス基板の一部の供給を受けたとしている)。これは“パネルが同じだから”ではない。確かにパナソニックと日立のプラズマはよく似た画質になってきたが、実はかなり独自性の高い技術に支えられたものだ。
加えてパイオニア、東芝に続いて周囲環境に合わせた自動画質調整機能も導入。単に他社を真似るのではなく、独自の考え方から自動画質調整というテーマに対して独自の回答を見せたのである(以下、次回)。
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