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映画に没入できる“立体的”な空間表現、ヤマハ「AX-V765」(2/3 ページ)

» 2009年06月12日 11時24分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

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 さて、それでは実際に使ってみた感想に移ろう。

 設置に関しては、365ミリという奥行きが、思った以上にレイアウトを自由にしてくれた。最初はオーディオラックに設置したのだが、あまりに後方が余っているのを見て、試しに長さ120センチ×奥行き60センチのパソコンデスクに移動。すでに24インチモニターとキーボード、ハンドライトがあるのにもかかわらず、机からはみ出すことなくしっかりと収まってくれた。AVアンプがパソコンデスクの上に収まるなんて、ちょっと不思議な感覚だ。

photophoto 上級機のようにフロントパネルにカバーは用意されていないが、ブラックボディであること、ボタン類がうまくデザインされていることからスマートさは損なわれていない(左)。HDMI入力は4系統で背面の上方にまとめられている(右)

 もちろん存在感が希薄なのではないし、実際の大きさもそれなりにある。スマートな印象を与えるフロントパネルとブラックボディが引き締まった印象をあたえ、目に映っても目障りに感じないということなのだろう。なかなか絶妙な実寸とデザインだ。

 配線に関しては、HDMIが上側にまとめられていることもあって、すぐに終わった。ホント、HDMIさまさまである。時間がかかったのはスピーカーケーブルの接続くらい。フロントプレゼンス(シネマDSP<3Dモード>で活用する)以外は横1列にレイアウトされているのは分かりやすく、端子のダイヤルも昨年のDSP-AX763に比べたらまわしやすくなっていたが、いかんせん端子同士の間隔が狭く、今回試聴に使ったオーディオテクニカの「アートリンクS」などシースが硬めのケーブルをつなごうとすると、かなり手間を要する。とはいえ、このあたりはAX-V765が劣っているわけではなく、他社製品もこの価格帯は似たり寄ったり。また、バナナプラグを利用すれば一発解決するレベルの話でもある。

 AX-V765にはオンスクリーンメニューが用意されている。英語が基本言語となるシンプルなものだが、メニュー体系が上手に整理されていたため、説明書を読まなくても問題なく扱える。またリモコンはボタン数が格段に増え、暗闇での操作が難しくはなったが、使用頻度の高いボタンは親指まわりに集中しており、すぐに慣れることができた。

photophoto オンスクリーンメニューは日本語非対応のシンプルなタイプ。しかしその内容は分かりやすく、取説がなくても充分扱えそう(左)。リップシンク機能も備わる。普通はHDMIオートで充分だが、それでも微妙にずれる場合は、さらに詳細な調整が可能(右)

 自動音場調整機能は、マイクを差し込んで決定を2回押すだけで始まり、必要な時間も2分程度と短い。しかしその音を聴くかぎり、手を加える必要性を感じさせない高度なセッティング。ヤマハのサラウンド技術が、相当なレベルに達していることを実感させられる瞬間だ。

 それでも好みに合わせて設定に手を加えたい人もいるだろう。AX-V765には、シネマDSPのセッティングについて、各モードごとに細かく調整できるメニューが用意されている。これを活用すれば、自分好みのサラウンドを作り上げることができる。

photophoto 自動音場調整機能は、付属のマイクを使って設定する(左)。サラウンドモードはパラメーターを細かく調整することができる。自分好みに仕上げられるのはありがたい(右)
photophoto HDMIコントロールの設定画面。6メーカーのHDMIリンク機能に対応している(左)。インプットの名前は手動で変えることができる。自分使用ソースに合わせて、積極的にリネームしよう(右)

サウンドチェック

 今回の視聴では、AX-V765に加えてヤマハ製のスピーカー「Soavo」シリーズを借用した。フロント3本が「Soavo-3」、サラウンドおよびサラウンドバック、プレゼンスに「Soavo-900M」、ウーファーが「Soavo-900SW」という、アンプの価格を考えるとぜいたくなシステムを自宅のシアタールームに設置して試聴を行った。

 実際の音を聴くまでは「AX-V765には(製品のグレード的に)ちょっと酷かな」かと思ったが、なかなかどうして。Soavoが全チャンネルともにちゃんと鳴りきって、魅力的なサウンドを奏でてくれる。Soavoは小難しいスピーカーではないが、それにしてもこのクラスのスピーカーを遜色なくドライブできるのはありがたい。

 音質的な特徴はというと、豊かなニュアンスを生かしてじっくり聴かせるタイプ。表現が多彩なこと、強弱の階調がとても多いことを最大限に活用して、音楽も映画の台詞も、より感情深く表現してくれるのだ。

 例えばBlu-ray Discの「50回目のファーストキス」では、前日のことをすべて忘れてしまうルーシーに対して、恋人のヘンリーが日によって少しずつニュアンスの異なる気持ちを持っていることが見事に感じとれるし、「攻殻機動隊SSS」では、自分の子供を守るために自殺を図るトグサの感情、それを止められなかったと一瞬思いこんだバトーの刹那感がまるで肌を通して感じているかのよう。そう、映画に対する没入感がとても高いサウンドなのだ。

 一方でライブ映像などの音楽も充分に楽しめた。「アンジェラアキ/MY KEYS 2006 in 武道館」では、演奏が後半にいくにしたがって彼女の感情が高まっていく様子、そしてライブの最後には気を取り直してまた笑顔になるという、ライブならではの“奏者と観客の一体感”を感じ取ることができた。

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