そのマニュアル設定は、従来機から変更はないものの、相変わらず使いやすい。鏡筒下の「カスタムキー&ダイヤル」には露出やフォーカスなどから1つを選んで割り当てられるが、割り当ての変更にはメニューを呼び出す必要があり、撮影中はムリ。そこで液晶モニターの横にあるSETボタンを活用したい。押し込むとビデオライトや逆光補正のオン/オフだけでなく、カスタムキーに割り当て可能なマニュアル設定も呼び出せるので、複数のマニュアル調整を同時に行なうこともできるのだ。
今秋の各社HDビデオカメラは、いずれもある程度のマニュアル設定を行なえるものの、設定中はアイコンやボタンが画面に大きく張り出し、うっとうしく感じるものもある。その点、本製品のマニュアル設定メニューは、文字やアイコンのサイズが控えめで好ましい。迫力ある見た目の印象を裏切らない、豊富でしかも扱いやすいマニュアル設定は、本製品の大きな魅力のひとつといえる。
なお、今回はテストできなかったが、さらに撮影にこだわりたい向きには、アクセサリーシューにリモコン接続用の端子を追加できるリモートコントロールアダプター「RA-V1」が新たに用意されたのもポイントだろう。純正のLANC対応多機能リモコン「ZR-2000」などが使えるので、三脚に取り付けてじっくり風景を撮るときなど、作画を楽しみたいユーザーはチェックするといいだろう。ただし、RA-V1が使えるのはHF S11とHF21の2モデルのみ(従来機は非対応)だ。
一方で、モードダイヤルを緑のアイコンに切り替えれば、大半のマニュアル設定をいじれなくする「デュアルモード」へと簡単に移行できる。手軽にフルオートとマニュアルを使い分けできるのも従来どおりで、家族で1台のカメラを共用する場合に便利だ。もちろん、外部センサーによる高速なオートフォーカスやオートホワイトバランス、人の顔を検出してフォーカスや明るさをあわせる「フェイスキャッチ」などは、これまでどおりのすばやい反応が好印象で、先の手ブレ補正機構の強化とあわせ、動き回る子供やペットでも、オートのままで安心して撮影を進めることができる。
iVIS HF S11は、前モデルとの違いだけを見れば確かに地味なモデルチェンジであることは否めないし、改良点もライバルに追従した形ではあるが、もともと備えていた高い実力に加え、対応できる撮影シーンが広がったことで完成度は間違いなく高まっている。内蔵メモリ容量が64Gバイトへと倍増されたのも見逃せないポイントで、夜景の画質を重視するのでなければ、オートで手軽に楽しみたい人にも、作画にこだわりたい向きにも、さらにどちらも必要だという欲張りなユーザーにも広くおすすめできる。
作例は、静止画はアスペクト比4:3の約802万画素相当(3264×2456ピクセル)、動画については最高画質のMXPモード(1920×1080ピクセル/約24Mbps)で撮影したものをEDIUS Pro 5で切り出している。撮影時の設定カスタマイズは行っておらず、フルオート撮影だ。
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