テレビやビデオに付属の「リモートコントローラー」(通称:リモコン)は、その多くが通信に赤外線を利用している。その歴史は古く、産業技術資料情報センターのデータベース(資料番号:100210021032)によれば、1977年にSMKが製造したものが最初だという。30年以上家電分野の第一線で活躍している、枯れた技術の代表格といって差し支えないだろう。
しかし、その赤外線方式にも限界はある。チャンネルの切り替えやボタンを押すなど、比較的単純な遠隔操作を果たせば足りるとされてきたため、低い通信速度にしか対応していないのだ。マウスやトラックパッドのような情報量の多い入力装置を組み合わせたリモコンが見当たらないことは、この通信速度に起因するリフレッシュレートの低さが原因だ。
指向性の高さも問題だ。赤外線は電波ではなく光の一種であり、経路を遮られると通信できない。このため、障害物に注意しつつ、リモコンで“狙いを定めて”操作する必要がある。減衰幅も大きく、数メートル程度のごく近い距離でなければ安定して使えない、という事情もある。
複雑な操作に対応せず狙いを定めなければ使えない……その問題をクリアすべく制定された無線規格が「RF4CE」(Radio Frequency for Consumer Electronics)だ。リモコンなどの制御機器を主対象に設計され、狙いを定める必要がない見通し外操作や、操作対象機器から情報を受け取れる双方向通信をサポートしている。国際的に無線局免許が不要の周波数帯2.4GHzを使用するため、ワールドワイドに販売するAV機器にも適している。
RF4CEのベース技術は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)で既に規格化されているIEEE 802.15.4。もともとは近距離無線ネットワーク規格「ZigBee」向けに開発されたもので、照明機器の管理や、メーターの数値を離れた位置に通知してモニタリングを可能にするなど、主に工業分野をターゲットにしていた。BRAVIAシリーズに採用されたRFリモコン(おき楽リモコン、関連記事)は、このIEEE 802.15.4を利用した製品だ。
RF4CEとZigBeeは、共通のネットワーク物理層としてIEEE 802.15.4を採用する、いわば基盤部分が同じ無線技術だ。コンシューマー分野は家電メーカー中心のRF4CEアライアンス、工業分野は制御機器メーカーによるZigBeeアライアンスが主導してきたが、2009年3月にRFリモコンの標準規格を策定することで合意している(関連記事)。今後は、AV機器のリモコンにとどまらず、キーレス・エントリーシステムなど幅広い分野に導入されることが期待される。
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