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来春には対応製品が登場、「DTS Neo:X」が目指すものCEATEC JAPAN 2010

» 2010年10月12日 22時09分 公開
[ITmedia]
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 「CEATEC JAPAN 2010」では、BD-ROMタイトルやAVアンプでなじみ深いDTSもブースを構えた。展示内容は、同社の技術を“横展開”したPC向け音響技術が中心だったが、近隣のホテルに別途デモンストレーションルームを設け、「DTS Neo:X」を披露(一般には非公開)。2011年の早い時期に対応製品が市場に出るというDTS Neo:Xについて話を聞いた。

デモシステムは11.1ch(左)。プロトタイプ(右)

 DTS Neo:Xは、「Neo:6の延長線上にあるマトリックス技術」(同社)を用い、信号処理で出力チャンネル数を増やす技術だ。もともとマトリックス技術は、多チャネルの信号をほかのチャンネルに混ぜ込み、デコード時に取り出すという手法だが、Neo:6やNeo:Xはそのデコード部分だけをチャンネル拡張に利用する(専用エンコードのタイトルはない)。Neo:6がステレオソースを5.1ch〜7.1chに拡張するのに対し、Neo:Xでは5.1ch/7.1ch音声を最大11.1chに拡張できる。

 スピーカー構成は、通常の7.1chに左右のフロントハイト(上方)および左右のワイドスピーカーを加えた形となり、「Neo:6が平面的な拡張だったのに対し、Neo:Xは垂直方向を含む立体的な音場表現が可能になった」。垂直方向に音場を拡大するというアプローチはドルビーの「ProLogic IIz」などと同じだが、チャンネル数はDTS Neo:Xのほうが多く、そのぶん処理も重い。同社ではこれを「フラグシップ向けの技術」と位置づけ、AVアンプメーカーなどに訴求する考えだ。

 デモルームには、アナログ・デバイセズと同社のDPS「SHARC」(シャーク)のロゴが入ったプロトタイプが設置され、これにソニー製AVアンプ「TA-DA5600ES」2台を接続して11.1chのアクティブスピーカーに出力していた。試聴タイトルは、BD-ROMの「エネミー・ライン」とdts-CDの「On air」(Alan Parsons)。

 このうちエネミー・ラインでは、戦闘機がミサイルに追いかけられるシーンを使ってNeo:Xの効果を試した。実際にNeo:Xをオン(11.1ch)/オフ(5.1ch)しながら聴いてみると、その違いは明か。元の音声(DTS Master Audio)に比べると低音の量感が減る印象は受けるものの、音場全体が広がり、かつ密度も上がってサラウンドならではの“包み込み”感が大きく増した。ただし、フロントハイトスピーカーから派手な音が出ているわけではなく、音場が大きく上下することもない。

 「Neo:Xは、もともとの音が持っている良さを生かし、自然な多チャンネル化を目指したもの。その効果は決して派手ではない。派手にするとコンテンツを選ぶようになってしまう」(同社)。なお、ハイトスピーカーに振り分けられる音の成分は「すべてのチャンネルから上方から聞こえる成分を抽出した」もので、結果的に周波数の高い成分が多くなっているという。

 一方のdts-CDはユニークだ。もともと5.1chのCDとして作られた同タイトルには、演奏しながらリスナーの周囲を一周するという演出の曲がある。それをオリジナル状態(Neo:Xをオフ)で聴くと、ときどき音が急に移動してしまうことに気付くが、Neo:Xをオンにすると、かなり自然な音の繫がりになった。もちろん、2001年発売の「On air」がNeo:X用に最適化されているわけはない。しかし、まるで専用に作られたデモ音源のような違和感のなさが印象的だった。

 前述の通り、Neo:Xは2011年の早い時期に対応製品が市場投入される見込み。それに先立ち、「来年1月のInternational CESでは、より完成度の高いデモを披露できるだろう」としている。

CEATECの展示会場では、PC向け音響技術のデモンストレーションがメイン。富士通やオンキヨーの対応PCがずらり
オンキヨーの一体型PC「E7 Series」は、DTS-HD Master AudioのソフトウェアデコーダーをはじめとするPC向け音響技術をパッケージ化した「dts Premium Suite」を採用した初のPCだ(左)。dts JAPANの仁戸田一之副社長、WWフィールド・アプリケーション・エンジニアリングディレクターの藤粼賢一氏、マーケティング・マネージャーの伊藤哲志氏、シニア・フィールド・アプリケーション・エンジニアの堀江誠一氏(右)

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