オーディオ&ビジュアルの世界におけるサラウンドとは、ステレオ(2ch)以上のチャンネルを用いて、文字通り、ユーザを「包み込む」(Surround)音声や音場を指す言葉として使われる。具体化する方法や技術は複数あるが、DVDビデオがSurroundを体験できる最もポピュラーな手段だろう(DVDビデオでもステレオ音声の作品は多いが)。
ベル研究所が1933年に3チャンネルの立体音響実験の実験を行って70年以上、DVDビデオも広く普及して10年以上の時間が経過しているが、まだ、サラウンドそのものは2chのステレオほど一般で広く楽しまれているとは言い難い。A&Vフェスタ2009で行われたディスカッション「サラウンドの魅力を語る」では、番組製作者や技術者、AV評論家らがサラウンドの魅力や現在、将来について語った。
サラウンドといえばDVDビデオの映画コンテンツがまず頭に浮かぶが、現在ではデジタル放送の普及により放送でサラウンド音声を楽しめる機会が増えている。朝日放送映像の井上哲氏によれば、「最初のころは年間数本程度だったが、地デジが開始されてからは年間1400本(2006年)ほどまで増え、ローカル局の制作でもサラウンドの採用が増えてきた」状態にまでなっているという。サラウンド放送されるジャンルも当初は映画が主だったものが、最近ではスポーツや音楽番組、紀行番組、CMまでとそのジャンルを増やしているという。
メーカー側はどのように現状を把握しているか。JEITA(電子情報技術産業協会)の蔭山惠氏(パナソニック)はまず、CEATEC JAPAN来場者のアンケートを示した。CEATEC JAPANへ来場する以上はAVについて感度の高いユーザ層だと考えられるが、それでも、「サラウンドを知っていますか?」という問いにYesと答えたユーザは6割ほどだったという。
しかし、「サラウンドとステレオなら、9割以上がサラウンドが良いと答える」「サラウンド対応機器を買いたい、放送が増えれば買いたいというユーザをあわせると8割以上が購入に前向き」といった項目についても紹介し、「サラウンド番組の増加」と「周知・啓発・体験機会の増加」が大きな課題だと述べた。
日本オーディオ協会も同じく、「周知・啓発・体験機会の増加」を課題に挙げる。日本オーディオ協会の渡邉哲純氏(日本ビクター)は、「(日本オーディオ協会で)アンケートを取った際も、サラウンドを知らないという人は確かに多かった。だが、サラウンドを体験してもらえれば、それだけでかなりの人数が興味を持ってくれることも分かった。各種イベントなどを通じ、体験する人数を増やしていきたい」と今後の方針を語る。
なお、JEITAと日本オーディオ協会では昨年より5月1日を「サラウンドの日」として啓発活動を行っているが、今年も同様に各種イベントを行っていく。デジタル放送/パッケージを問わず、サラウンドの魅力を訴求するという目的で、パナソニックやソニー、シャープ、パイオニア、ケンウッドなどが参加し、さまざまなイベントを開催する。イベント開催は延べ100回、動員は3500〜4000名を目指す。
ユーザの立場を代表してディスカッションに参加したデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏は、NHKクラシカルのBlu-ray Disc「悲愴」やハイビジョン/サラウンド放送されたトリノオリンピックでの荒川静香選手の演技を例に、サラウンドがいかに素晴らしい体験をユーザへもたらすかが熱く語られた。
しかしDVD-Audioを例に出し「ピュアなマルチチャンネルはどこへ行った?」とも苦言を呈するとともに、「Aura Noteのような、もっと小さく。もっとしゃれたサラウンドスシテムがあればいいですね」と、現在のサラウンドシステムのサイズも人にとっては大げさすぎる、とも指摘した。
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