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家庭向け3Dプロジェクターの基礎知識(1)本田雅一のTV Style

» 2010年11月05日 16時07分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 さて、今回は家庭向け3Dプロジェクター選びの基礎的な知識を確認しておきたい。結論から言えば、日本で発売される3D表示機能付きプロジェクターは、すべてフレームシーケンシャル方式のアクティブシャッターメガネを用いている。ただし、メーカーによって3Dの表示品位は驚くほど違う。

 まず前回のお詫びから。前回、プロジェクターで3Dを表示する方法は、光学フィルターを用いる方法と液晶シャッターを用いる方法があると書いた。後者を「フレームシーケンシャル方式」と表現したが、この場合は「アクティブシャッター方式」と書くべきだった。お詫びして訂正したい。なぜなら光学フィルターを用いたものの中にもフレームシーケンシャル方式が存在するからだ。

写真はソニーが11月20日に発売する「VPL-VW90ES」

 例えば、DLPプロジェクターで3D投影する場合は、異なる特性の光学フィルターを順に並べたホイールを回し、それに同期して左右映像を表示する。メガネは光学フィルターのみのパッシブフィルター方式だが、フレームシーケンシャル方式に違いない。

 業務用プロジェクターの3D投影で主に使われているのは、パッシブフィルター方式のめがねを使うものがほとんどだ。Real DやIMAX 3D、ドルビー3Dなどが代表格である。日本だけを考えると、大手のTOHOシネマズがXpanDという会社の方式を用いているため、もしかするとみなさんが体験しているのもXpanDのシステムかもしれない。XpanDはアクティブシャッター方式のメガネを採用している。つまり、家庭向けテレビとほぼ同等の仕組みで3Dを表示しているということだ。

 これに対して家庭向けプロジェクターのほとんど、少なくとも日本で販売される家庭向け3Dプロジェクターに関していえば100%、XpanDと同様の方式、すなわちアクティブシャッター方式を採用している。

 海外では、LG電子が反射型液晶プロジェクターの光学回路を2系統搭載し、それぞれに異なる偏光をかけて投影する3Dプロジェクターを発売している。これを用いれば家庭でも軽量なメガネで3Dを楽しめるようになるが、話はそうそう簡単ではない。というのも、一般的なスクリーンは偏光を乱してしまうため、偏光を乱さないシルバースクリーンを使わなければ3D化はできないからだ。

 とくに”偏光を乱さない”という部分が重要だ。ごくまれに、自宅にはシルバースクリーンが入っているという人もいるかもしれないが、3D対応でなければシルバーであったとしても偏光方式の3D投影には使えない。

 もし一般的なスクリーンを用いたいのであれば、ドルビー3Dのようにカラーフィルターを用いた方法でなければならない。原理的には家庭向けにドルビー3Dを使うこともできるが、現在のところ、そうした製品は登場していないようだ。

 ということで、現在日本市場で家庭向けに発売あるいは発表を予定している3Dプロジェクター(ソニー、ビクター、三菱電機)は、すべてアクティブシャッター方式のメガネを使い、フレームシーケンシャル方式で表示を行っている。このうちソニーと三菱電機は、同じSXRDを用いた反射型液晶プロジェクターだが、光学設計や電気設計は全く異なるものだ。とはいえ、3D表示に関しては同等の手法で、240Hzの4倍速液晶テレビと全く同じやり方で3D化を行っている。

ビクターの3D対応D-ILAプロジェクター「DLA-X7」(左)と「DLA-X3」(右)。12月上旬に発売予定

 ところがビクターのD-ILAプロジェクターである「DLA-X7」「DLA-X3」は、いずれも120Hz表示にしか対応していない。これをもって「ビクターは3D投影がまともに行えない」という噂がまことしやかに流れているが、それは間違いだ。なぜなら現在のビクター製プロジェクターはデジタル駆動方式を採用しており、プラズマパネルと同じように“面”で画面を書き替えているからだ。

 よく分からない? 確かに図に描いてみないとよく分からないかもしれない。次回は、もう少し各製品について掘り下げていこう。

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