連載の編集担当から「タブレットの話はできませんか?」とメールが届いた。スマートフォンの流行、iPadの人気とともに、タブレット型端末への注目度は急速に高まっている。そんなとき言われるキーワードは、決まって「もうPCなんかいらない」だ。まるで、スマートフォン、スマートタブレットが登場する前と後では、PCの価値や能力が大きく変化したかのようだ。
しかし、実際にはPCの価値は変化していない。むしろ、タブレットというライバルが登場したことで、誰もが使えるコンピュータとしての歩みを踏み出そうとしているぐらいだ。タブレットには、PCほどの処理能力もなければ、大容量のメモリーや記憶装置も備わっていない。いまだに、創造性を求める用途にはPCの方が向いていると断言できる。
だが、世の中にはPCの持つ創造性が必要ではない用途もある。従来は必要か必要ではないかを考える余地もなくPCを使ってきたユーザーの中には、その何割かはタブレットで十分という人も出てくるだろう。何をもって個人向けコンピュータと言うのか、その境目、定義がスマートフォンから始まった一連のムーブメントによって変化しようとしているのだ。
これから先、タブレット型の端末こそが、パーソナルなコンピュータの代表的な形になっていくかもしれない。あるいは、そこまでは行かなかったとしても、インターネット上にあるコンテンツを楽しむためのフロントエンド、即ち手元で使う道具として、スマートフォンやスマートタブレットが活躍することは想像に難くないと思う。
さて、こうした流れは”テレビ”という製品に、どのように関わってくるのだろう。今年は”スマートテレビの年”だという人もいるが、私はそうは思わない。テレビにもスマートフォンと同様の、すなわちインターネットを通じてクラウドの中に作られたネットワークサービスを利用する機能を組み込もうというトレンドがあることは、もちろん承知している。しかし、実際にユーザーが好んでスマートフォン的機能をテレビで使うか? というと疑問もある。
放送を受信して楽しむ、あるいはBlu-ray Discなどの映像ソフトを見るといった形で利用するテレビは、元来、インタラクティブに利用するように作られていない。そもそも、スマートフォンやタブレットがこれから普及し、ひとりひとりが使いやすく設定した端末を持っているのに、わざわざ家族で共有するテレビをスマートフォン的にする必要はない。
もちろん、ネット上にある映像コンテンツへのアクセス機能が不要と言っているわけではない。ネット上の映像を楽しむ機能は、スマートテレビといった言葉が生まれる前から、IPTVといった呼称で10年ほど前から話題になっている。
では”スマートテレビ”という括り、すなわちスマートフォンに始まる一連のムーブメントを考えた場合、テレビにはどんな進化の方向があるのだろうか。私は大きく分けると2つの方向があると思う。
1つの方向として考えられるのは、テレビをスマートフォンやスマートタブレットの映像を見せるディスプレイとする方法だ。もちろん、ケーブルをつないで画面を表示させようというわけではない。
もう1つは、テレビの役割負担が減り、個々が目の前で使っている端末のディスプレイこそが、個々のユーザーにとっての”テレビ的なもの”になっていくという方向だ。(以下、次回)
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