手軽なオーディオシステムとして、PCを音楽プレーヤー代わりに活用する「PCオーディオ」を実践する人は少なくない。もちろんこちらは、PC内蔵のスピーカーと内蔵光学ドライブによる標準のPCシステムと、iTunesやWindows Media Playerなど、よくある音楽再生アプリケーションで再生する一般ユーザーを含めてである。
PCオーディオと言ってもシステムプランは多岐にわたり、USBスピーカーやワイヤレスシステムなど家庭用オーディオ機器とは少し異なるパーツ群も含めて、“オーディオ機器顔負け”のものまで拡充できる可能性がある柔軟さが魅力の1つといえる。しかしながら「(音が出ればいい程度の)PCレベルの音」から「オーディオ機器レベルの音」にクオリティを進化させるには、いくつかの超えなければならない壁があるのも事実だ。
アナログ音声信号を出力する機能は、一般的なPCであればほぼ標準で搭載している(3.5ミリのステレオミニスピーカー/ヘッドフォン出力端子などだ)。しかしそれらは、もちろんオーディオ部分の強化を訴求したPCもいくつか存在するのは確かだが、(価格を抑える意味でも)音が出ればOKという程度のレベルであることが多く、音楽を本格的に楽しむとなれば専用のオーディオ機器に役目をゆずることがほとんどだろう。それをオーディオ機器レベルにまでクオリティを向上させ、PCを優良なメディアプレーヤーとして(機能的にも音質的にも)進化させるとなれば、別途サウンドカードや外付けサウンドの導入が必要となってくる。
これらサウンドデバイスで現在主流なのは、USBで接続する外付けのサウンドデバイスだ。ほかにもIEEE1394(FireWire)接続や、PCI/PCI Express接続による内蔵サウンドカードのバリエーションもあるが、接続の手軽さや音質を追求する点で有利なことからUSB接続型がシェアの大半を占めている。
前置きが少し長くなったが、そんな状況であえてPCI Express x1接続によるPC内蔵タイプのハイエンドサウンドカードを発売したオンキヨーの意図はいかなるものか。今回は実売3万4800円前後とする「WAVIO SE-300PCIE」の実力を、PCパーツではなくオーディオ機器のレビューを行う目線でチェックしよう。
まずはWAVIO SE-300PCIEの詳細を見ていこう。
SE-300PCIEは、接続インタフェースにPCI Express x1を採用するPC内蔵タイプのサウンドカードだ。オンキヨーのWAVIOシリーズは内蔵タイプとUSB外付けタイプを用意するが、こと内蔵タイプについては2006年に発売したPCI接続の「SE-200PCI」(2008年に特別版「SE-200PCI LTD」も投入)よりリリースされていなかった。PCの拡張インタフェースとしてPCIはすでに旧型であり、SE-300PCIEの主なターゲットである本格PCゲーマーにとっては音の遅延低減などを含めて、USBでなくPCへ内蔵するPCI Expressでの登場が望まれていたという。この点で、PCI Express化は大いに歓迎すべきだろう。
実スペックに関しても、旧モデルから大きくスケールアップした内容をアピールしている。機能面では最大192kHz/24ビットでのアナログ出力に対応し、ステレオ出力に加えて7.1ch出力もサポートするので、音楽だけでなく市販のDVDやBlu-ray Disc映画タイトルを楽しむ映像視聴シーンにもマッチする。
ともあれ、SE-300PCIEの真骨頂は音質面へのこだわりだ。特にステレオのアナログ出力は格別の作り込みがなされている。
その回路は、左右のチャンネルで完全に独立させ、オンキヨーの本格ピュアオーディオ機器にも採用される動的ノイズ超低減回路「DIDRC」回路をシンメトリー(対称)で配置しつつ、D/Aコンバータにはバーブラウンブランドの2チャンネルDAC「PCM1798」を左右にそれぞれ1つずつ搭載する(音質のために1チャンネル余らせる)ぜいたくな使い方をしている。
加えて銅シールドにより各チャンネルを覆うことで、アナログ回路の弱点ともいえる電磁ノイズを徹底して低減する工夫も施している。これらの努力や工夫の積み上げにより、PC用の内蔵サウンドカードとしては類がない、120デシベルという高級オーディオ機器並みの高S/N比(Signal to Noise:信号対雑音比、値が高いほどノイズ感が少ないことを示す)を実現した。
さらに電源部は、ノイズの元となりがちなPCの供給電源をそのまま使用せず、新たに「絶縁型高レギュレーション±両電源」により育成した電源で動作させ、大型コンデンサと組み合わせることでクリーンかつ安定した電源供給を行う。この部分も、よくあるPC用拡張カードとは大きく“力の入れ具合が違う”ことが伺える。
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