アナログ停波後の国内薄型テレビ販売は苦戦が伝えられているが、東芝は新興国向けのテレビ事業が堅調に推移しているようだ。同社は、今年1月にエジプトに液晶テレビ製造の合弁会社を設立。さらにチリやペルー、コロンビア、アルゼンチン、フィリピンに相次いで販売会社を設立するなど、製造販売体制の強化を図り、昨年投入した新興国向け液晶テレビ「PowerTVシリーズ」は累計200万台を販売した。
東芝デジタルプロダクツ&サービス社の大角正明社長は、「6月にはベトナムで韓国系などを抜き、25%のシェアをとってアジア圏で初のシェア1位を獲得した。現在は抜きつ抜かれつのデッドヒートを演じている状況」と話す。ほかにも月間ベースながらベトナム、インドネシア、マレーシアなどでも販売台数1位を獲得した。2011年度第2四半期の液晶テレビ販売台数は全世界で136%で、とくに新興国市場が221%と牽引役になっているという。
こうした需要を背景に、2015年にはインドネシア工場の出荷規模を700万台まで拡大する計画だ。また工場敷地内に洗濯機工場を2012年夏までに建設し、テレビのみならず、白物家電やPCを合わせ、2013年度にインドネシアで売上高10億ドルを目指すという。
新興国向けの新製品としては、まず「Power TV」の第2世代として、「HV10」「PB2/PB20」「PS20」の4シリーズを投入する。上位モデルは3D対応の狭額モデルで、大型サイズを中心に展開。またミッドレンジは、現地の電波状況に配慮したRFブースターやアナログ超解像技術「オートクリーン」などを備えた。ほかにも音質を重視したノートPC「Satellite C600」など、新興国の専用ラインアップを拡充した。
さらに今後は、タブレットをキーデバイスとして、テレビやPCとの連携によるローカル需要にあった使い方の提案していく。12月15日にはインドネシアのメディア最大手「Kompas Gramedia」との協業により、“REGZA Tablet”「AT1S0」を約5万円で発売する。現地で新聞や雑誌、テレビなどの情報配信事業を手がけるKompasと連携し、専用アプリをプリインストール。ニュースやファッション、インテリアなど7種の無料コンテンツと1種の有料コンテンツが楽しめるという。「新興国は、まだスマホより携帯が多い。先進国とは違い、新しい情報を手に入れられる情報端末としてタブレットを販売する」(大角氏)。東芝では、月販5000〜1万台を想定している。
成熟したといわれるテレビ市場だが、東芝は新興国におけるデジタルプロダクツ販売台数構成比を2011年度の32%から2013年度に50%まで拡大するという。「これまで日米欧に固まっていたリソースを新興国にシフトし、2013年頃までにはアジアで大きな利益を出す体制を作っていかなければならない。事業の主体を新興国に切り替えていく」(大角氏)。
なお、日本の年末商戦については、PCは前年比で110%から115%と堅調ながらも、2010年には特需にわいた液晶テレビは、数量的にも金額的にも前年比80%減と厳しい状況だ。大角社長は、「ボーナス期を迎え、11月下旬からある程度持ち直した印象を持っている。しかし、それを加味しても昨年を超えることはない。12月に関しては、昨年の8割程度で落ち着くとみている」と話した。
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