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「世界で最も進化したイヤフォン」、シュアが4ドライバーのハイエンドモデル「SE846」を発表

» 2013年05月09日 17時43分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
「SE846」

 シュア・ジャパンは5月9日、4つのバランスド・アーマチュア型ドライバーを搭載する新しいハイエンドイヤフォン「SE846」を発表した。オープンプライスで、7月中旬に発売する。店頭では12万円前後になる見込みだ(追記:完実電気は、6月10日に市場想定価格を9万9800円に変更した)。

 高域、中域の専用ドライバー各1基に加え、低域用に2基のドライバーを使用する3Way 4ドライバーシステム。発表会であいさつに立った米Shureのモニタリングカテゴリー・ディレクターのMatt Engstrom(マット・エングストローム)氏は、「2Way、3Wayといった構成が、本当に価値のあるものでなければならない。多くのドライバーを入れれば、メリットとともにデメリットも増える。われわれは数百個におよぶプロトタイプと数千時間におよぶ開発時間をかけ、それぞれのドライバーが出す音をひずみや干渉のない状況でブレンドする形を研究した」と語る。

マット・エングストローム氏(左)。SE846の分解図(右)

 ドライバーはすべて新規に開発したもので、低域用はドライバー内の振動板が大きく動くように設計されている。中域用は磁力などを調節して高い感度を出せるように調整。高域用はレスポンスを重視し、非常に素早く動くように設計したという。

 ただし、低域専用ドライバーであっても、どうしても中域程度までの音は出てしまう。これが中高域ドライバーの音にかぶると、音の“にごり”となって聞こえるため、同社はアコースティックなローパスフィルターを開発した。

 このローパスフィルターは、40マイクロメートル程度の微細な穴をたくさんもつステンレスの板を組み合わせたもの。板に凹凸を作り、細い音の経路を形成している。「ステンレスをレーザー溶接して音の通路を作った。この通路は4インチ以上の距離があり、90Hz付近からナチュラルにロールオフ(減衰)できる。豊かな低域パフォーマンスを、明瞭(めいりょう)さや精細さを損なうことなく提供する、本当のサブウーファーの音ができた」(同氏)。

ローパスフィルターの構造(左)と、その効果(右)。90Hz付近からナチュラルにロールオフしている

 もう1つ、同社が“革新的”という仕組みが、ノズル部分を取り外せる構造(リムーバブルノズル)として、その中に「ノズルインサート」と呼ばれるアコースティックフィルターを入れたことだ。ノズルインサートは標準で3種類が付属しており、ユーザーが同梱(どうこん)の専用工具を使って交換できる。なお、低域はノズルインサートを通らず、中高域だけに影響を与えるという。各ドライバーの音は、「最後の最後にブレンド」されて耳に入る仕組みになっている。

システム図(左)。リムーバブルノズルの構造(右)

 付属のノズルインサートは、「BALANCED」(バランス)、「BRIGHT」(ブライト)、「WARM」(ウォーム)の3種類があり、バランスはニュートラルな設定(出荷時)、ブライトは1k〜8kHzまでが+2.5dB、ウォームは−2.5dBといった違いがある。ユーザー個々の好みに合わせ、より細かい調整が行える仕組みだ。「ヒアリング特性は指紋のようなもので、すべての人が同じ聴感特性を持っているわけではない。耳の形などさまざまな影響で違いが出る」。

イヤーチップを外し(左)、専用工具で回すとネジ式のステンレスカラー(肩の部分)が外れる(中)。中に見えるのが、ステンレスノズルだ(右)

ステンレスノズルの中に「ノズルインサート」が入っている(左)。ノズルインサートを取り出した(中)。ノズルインサートは色分けされており、青はニュートラルな「バランス」(BALANCED)だ(右)

 米ShureのイヤフォンプロファクトマネジャーのSean Sullivan(ショーン・サリバン)氏によると、SE846には3〜4年の開発期間がかかったという。「革新的なローパスフィルター、4基のドライバーコンビネーション、交換式ノズルなど、われわれが持つ知識を詰め込んだ結晶のような製品だ。こんなに小さなハウジングの中にこんなに革新的な技術を詰め込めたことにわれわれ自身、非常に驚いている」。

 なお、スペックシートにある9オームという極端に低いインピーダンスについては、「ダイナミック型モデルの1kHzを基準にした表記であり、(新製品を含む)BA型はポータブルデバイスに極端に負担を強いるような設計にはなっていない」と話していた。実際に手持ちの「iPhone 4S」に直挿しで試聴しても、ボリューム値は上までいくものの、十分な音量で聴くことができた。

 ケーブルは、もちろんMMCXコネクターによる着脱式。スナップ・ロック式のため360度回転する。なお、コネクター部分の色は、シルバーの外観に合わせてシルバーに変わった。3.5ミリステレオミニプラグは、L字コネクターのモールド形状を変更し(根元に段差を付けて細くした)、iPhoneなどにケースを付けた状態のままでも問題なく使用できるように配慮している。

ケーブルの根元に段差が付き、ケースを装着したiPhoneなどにもそのまま使えるようになった(左)。音質評価用のプロトタイプ。一部外観が異なるためにテープを貼ってある(右)

 付属のイヤーパッドは、S/M/Lサイズのフォーム・イヤーパッド、同じくS/M/Lのソフト・フレックス・イヤーパッド、イエロー・フォーム・イヤーパッド、トリプルフランジ・イヤーパッドと豊富だ。ほかに標準プラグアダプターやレベルコントローラー、航空機内容アダプター、ノズル取り外しキー、前述の交換用ノズルインサート2個(3つのうちBALANCEDは装着済み)、ケーブルクリップ、ポリッシュクロスが付属する。

製品名 SE846
型番 SE846CL-A
感度 114dB/mW
インピーダンス 9オーム
ノイズ減衰量 37dB
再生周波数帯域 15〜2万Hz
入力コネクター 3.5ミリステレオミニ
ケーブル 着脱式。1.62メートル、1.14メートルの2本が付属する
カラー クリスタルクリアー

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