今週最も読まれた記事は、「写真で見る、名古屋・電子マネー事情」。トヨタの本社機能が引っ越してきたことにより、名古屋駅周辺で一斉にQUICPay導入が進んでいる、というレポート記事でした。
記事中でも紹介しているように、名古屋駅周辺が“QUICPay村”なのに対し、ドコモ東海の本社ビルがある栄周辺は“Edy(+iD)村”になっています。「このあたりならQUICPayを持っていれば大丈夫」「このビルと隣接する地下街全部Edyが使える」といった状況なら、おサイフケータイ1つ、FeliCaカード1枚持っていれば、財布を持っていなくても安心して出かけることができます。使えるところが点でなく面で広がっていることは、ユーザーの“使いたい気持ち”を喚起するために非常に大事なことじゃないかな、と、私も1ユーザーとして実感します。
しかし本当に望ましいのは、使いたい電子マネーがどこでも使えるようになることのはず。栄でも名古屋駅周辺でも、Edyだけ、QUICPayだけで暮らせるようになることが、ユーザーにとっては一番利便性が高いことのはずです。
こんなことを考えていると、思い出すのがイソップ童話の「北風と太陽」。北風がビュービュー吹き付けても旅人のコートを脱がすことができなかったのに、暖かな日差しに照らされた旅人はあっさりコートを脱ぐ、というあの話です。
「うちの電子マネーを使え!」「うちの加盟店を使え!」と北風を吹き付けるよりも、「どの電子マネーでもいいよ」「どこでも使えるよ」と太陽で照らした方が、結果として利用する人は増えるはず。ユーザーにしてみれば、プリペイド電子マネーの種類が増えれば入金しておく先も増えて管理が煩雑ですし、ポストペイ決済が増えればその分親カードとなるクレジットカードが増えてしまいます。しかも、ポイントやマイルの導入が当たり前になって、決済方法の囲い込みが進むであろう今後は、電子マネーやポストペイ決済を使うにしても「1つにまとめたい」と思う人がますます増えると予想されます。
FeliCa決済は事業者ごとに運用のスキームも違うため、決済方式を単純に統一するのは難しいだと思いますが、せめて好みの決済方式が「どこの加盟店でも使える」ように展開していくといいな、と思います。ユーザーの利便性を高め、よりユーザーに使いやすい環境を整えることが、結果として利用率向上につながるのではないでしょうか。
ちなみに、「どこでも使える」を押し出して好調なのが、PASMOとSuicaです。PASMOでもSuicaでも電車やバスに1枚で乗れる、とアピールした結果、PASMO・Suicaともに発行枚数が順調に伸び、しかも利用件数も上がっているといいます。予想を超える売れ行きで、現在販売制限中のPASMOですが、もしもPASMOがSuicaと相互利用できず、今の磁気カード「パスネット」をFeliCaカードに替えたものだったとしたら、これほど人気は出なかっただろうと思うのは記者だけではないはず。
複数の決済方式に対応したマルチリーダー/ライターの採用が進んでいることにより、「どこでも使える」状況が少しずつ実現されつつあります。すでにイオン系列のショッピングセンターはWAON・Suica・iDの3つが使えますし、今年の夏は大手コンビニチェーンでも3種類のFeliCa決済に対応するところが増えています。
去年の名古屋取材のときは「リーダー/ライターが増えてきているなあ」と思いました。そして今年の取材では「リーダー/ライターはいっぱいあるけど、使ってる人を見ないなぁ」というのが率直な感想です。今後、名古屋駅周辺に栄に“太陽”の光が降り注げば、来年の取材時には、リーダー/ライターにカードや携帯をかざしている姿をたくさん見られるかもしれない、と期待しています。
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