→第1回:持ち金100万円!超ビギナーとダメ投資家が株に挑戦
→第2回:1週間が経過。超ビギナー3人が買った株はどうなった?
→第3回:「誠倶楽部」に指南役が登場! 「銘柄選びは難しくない」
7月から始まった素人集団のバーチャル株取引企画「誠倶楽部」は、3カ月目に突入した。超ビギナーとダメ投資家が「持ち金100万円」「期間3カ月」の制限内で気になる株を買い、運用してみるという特集連動企画だ(7月9日の記事参照)。
メンバーは土肥義則、真野裕章、高橋暁子の3人。真野は同企画の3回目で「業績のいい銘柄」、ニンテンドーDSやWiiが好調な任天堂(7974)を購入(7月23日の記事参照)。上方修正などもあり株価は上昇を続けたが、第5回で下落した(8月6日の記事参照)。その後、株主優待の権利確定日での値上がりを狙って吉野家ディー・アンド・シー(9861)を購入し、第6回で狙い通り上昇(8月13日の記事参照)、先週は、景気の影響をあまり受けないと言われるタイヤのブリヂストン(5108)を買った(8月27日の記事参照)。
土肥は不安定相場を敬遠し、「休むのも相場」と4回目に取引を中止(7月30日の記事参照)。8月3日から再び株取引を始め、好調銘柄の三菱商事(8058)とニコン(7731)を3週連続保有していた。先週はニコンを売って、円高時は輸出に頼りすぎていないところがいいと大手鉄鋼メーカー新日本製鐵(5401)を購入した。
最も好調なのは高橋だ。高橋は同じく業績のいい銘柄としてモバゲータウンで人気を集めるディー・エヌ・エー(2432)を保有。7月20日から8月3日の2週間で20%ほど株価が上昇し、持ち金100万円を突破、一時は10万円を超えるプラスとなった。その後一度マイナスになったが保持し続けた結果、再び100万円を越えた。更なる上昇はあるのか?
企画概要
週1回(金曜日の午後3時東京証券取引所終了後)、誠倶楽部のメンバー3人が集まり、その週に買った株の値段の動きをチェックし、翌週どの株を買うかを決める。自分が保有する株に関するウンチク、来週に向けての意気込みを語るほか、他のメンバーに対する意見も飛び交う。その議論の模様と銘柄の価格、各自の資産状況(折れ線グラフ)は、翌月曜日に記事を掲載する。期間は7月〜9月の3カ月間。
ルール
高橋が持つディー・エヌ・エーの株価は8月10日でマイナスに転じたものの、その後は堅調に推移し、先週から再び100万円を超えた。ディー・エヌ・エー株は上昇し続け、高橋は持ち金を順調に増やしている。真野はブリヂストンがやや値下がりし、持ち金は再び90万円を割ってしまった。3人の中で唯一、これまで上昇したことがなかった土肥は、新日本製鐵、三菱商事ともに値を上げ、念願の上昇となった。
高橋 ディー・エヌ・エー 48万9000円×2株=97万8000円→49万8000円×2株=99万6000円
持ち金合計 104万7100円→106万5100円
先週比 +1万8000円(+1.72%)
真野 ブリヂストン 2395円×300株=71万8500円→2320円×300株=69万6000円
持ち金合計 90万3200円→88万700円
先週比 −2万2500円(−2.55%)
土肥 新日本製鐵 804円×600株=48万2400円→812円×600株=48万7200円
三菱商事 3060円×100株=30万6000円→3260円×100株=32万6000円
持ち金合計 83万9000円→86万3800円
先週比 +2万4800円(+2.96%)
米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)問題に端を発し、依然として相場は不安定な状態が続いている。週明けの8月27日午前の東京株式市場は、先週末の米国株高を背景に日経平均株価は上昇、一時1万6500円を回復するものの、結局前日比52円高の1万6301円で取引を終えた。8月29日には円が1ドル113円まで上昇したため、前日比453円安となる1万5834円まで大幅に下落した。しかし翌31日には、前日比415円高の1万6569円という不安定な状態だ。
乱高下が激しい相場環境の中で、ビギナー投資家はどういった相場の見方をすればいいのか。サブプライムローン問題が引き金となり不安定なままの金融市場について、前回に続いてマネックス証券投資情報部の清水洋介氏に分析してもらった。
清水洋介
マネックス証券投資情報部長。慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、外資系証券会社などを経て現在マネックス証券で投資教育や相場解説に携わっている。営業やディーラーの経験を生かし、実践的なテクニカル分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会会員。
清水:この折れ線グラフを見てください。過去の1989年のバブル崩壊、昨年の暴落、ブラックマンデーなどの株価の動きと、今回の下落時の株価の動きをグラフにして重ね合わせたものです。
高橋:折れ線の形がそっくりですね。
清水:そうなのです。人の心理は時代を超えて共通ですし、相場は過去とよく似た動きをすることが多いのです。だから、過去の例を見てこの先を分析するといいでしょう。こちらの昨年と今年の株価を比較した折れ線グラフを見てください。今年の7月下旬頃から約1カ月後の8月17日までと、折れ線グラフのカーブも値幅もほとんど同じ下がり方をしていますね。
真野:本当によく似ています。それでは、この先は昨年の折れ線グラフの続きと同じ形になるのでしょうか?
清水:その可能性は十分にあります。株価の変動の中でもっとも安値がついた時を大底といいますが、大底の1回目が8月17日です。7月9日もしくは13日あたりから株価は下げ始め、大底まで約1カ月かかっています。昨年も、急激に下げ始めた5月8日から1カ月後に大底となりました。このように過去の暴落の例を当てはめると、今回の暴落も動きが読めるのではないかと思います。急落を始めた日から約1カ月後程度で底値というこの図式に当てはめると、7月下旬頃から約1カ月後、8月17日が大底ということになります。
土肥:これから買われる銘柄はどういうところでしょうか?
清水:今後は、安値からまだ戻っていない出遅れ感がある銘柄が短期的に買われるかもしれません。もう1つは、業績が好調なのに期待したほど戻っていない銘柄が買われるでしょう。また、円安の影響をあまり受けない商社や鉄鋼、造船などが買われるかもしれません。
商社や鉄鋼が相場全体を引っ張り、その次に出遅れ感が強い建設や不動産が買われ、最後に時価総額が小さい小型株が買われるかもしれません。ただ、こうした予想は8月17日が大底というのが大前提になります。同じような安値を再びつける“2番底”の可能性もありますから、今後の相場は注意が必要です。
土肥:株価は上がるのか、それとも2番底になるのか、判断材料はありますか?
清水:相場に影響しそうなイベントに注目するといいですね。例えば、9月6日にECB(欧州中央銀行)の理事会があります。そこで利上げの発表があれば日欧の金利差が開くため、円キャリー取引※が引き続き行われ、円安傾向になるでしょう。ただ、金利が上がるとサブプライムローンの影響が出てくる懸念もあり、相場としては良くない材料です。
ECBが利上げをしないと発表して、一方の日本が利上げに踏み切れば、欧州と日本の金利差が少なくなるので、円キャリー取引が解消され円高傾向になるでしょう。
真野:9月6日は注意する必要がありますね。
清水:ええ。下落した株価が安値と判断され、来週前半(9月3〜7日)には上昇するかもしれません。また、9月18日には米国の金融政策を決定する会合FOMC(連邦公開市場委員会)で、米国の金利が利下げされたら円が買われることになるでしょう。
9月18日には、日銀金融政策決定会合もあります。ここで日銀が金利を上げたら、米国との金利差が縮小します。金利の差が縮まれば円キャリー取引の解消などが起こるため円高が進行し、株価には悪影響を受け二番底をつける可能性がありますね。
それから金融政策は、相場に大きな影響を与えるので注目しなければなりません。サブプライム問題で欧州、米国ともに金利を下げざるを得ない可能性があります。低い金利で住宅ローンなどを貸し出せば、貸し倒れ(焦げ付き)が少なくなるからです。しかし欧州は、インフレ懸念があるため金利を上げたい模様で、日本も金利を上げたがっています。こういう場合に、金利を上げた方がいいのか下げた方がいいのかは、正直分からないですね。数カ月後に、金融政策は「正しかった」または「間違っていた」と評価されるでしょう。
清水:「相場はこれからこうなるだろう」というシナリオを描くことが大切ですね。行き当たりばったりで株を買ったり売ったりするのは絶対にダメです。冷静にシナリオを立て、その上でシナリオ通りでなくなった時はどうすればいいかも考えておくといいでしょう。
株価の動きは多くの人が見ています。売買するのに適した値段、つまり「値頃」も見ておくべきです。そして、「この株はいくらまで上がり、いくらまで下がるか」ということを予測するべきです。そうすれば、「これ以上上がるのはおかしいから売っておこう」とか「これ以上下がったら下げすぎだから買おう」と判断する材料にもなります。
まずは9月6日のECBと9月18日のFOMCで、どういった金融政策が決定されるのか。それに対し相場や自分が保有する銘柄は、どれほどの影響を受けるのか。自分なりのシナリオを描く必要がありますね。
土肥:不安定相場では、どういった銘柄に絞ればいいでしょうか?
清水:円高に強いと言われる電力や紙パルプなどの銘柄を買っておくといいかもしれません。円安になった場合は、自動車関連やハイテク銘柄がいいでしょう。円高もしくは円安に強い株をぞれぞれ買っておくのもいいでしょう。
また東証1部で、株価が安定している銘柄と出遅れ感のある銘柄を組み合わせてもいいかもしれません。こうした相場では、なるべく1銘柄だけを買うのは止めた方がいいでしょうね。
土肥:三菱商事(8058)は、カジュアル衣料を扱う小売チェーンのユナイテッドアローズと業務提携の発表がありました。暴落の影響を受け株価は大きく下がりましたが、戻りつつあるのでこのまま保有します。新日本製鐵(5401)は売って、代わりに武田薬品工業(4502)を買います。糖尿病治療薬「アクトス」が米国中心に伸びていて、さらに高血圧症治療薬「カンデサルタン」の販売も増加しているため、売上高の増加に期待したいですね。
真野:ブリヂストン(5108)は江東区にコックピットチェーンの新店舗「コクピット豊洲」をオープンするそうです。10月のオープンに向けて、さらにに期待が高まるのではないでしょうか。このままもう1週様子を見てみます。
高橋:ディー・エヌ・エー(2432)はまた上がってきましたね。「10代の『ケータイ事情』――子供と携帯電話の明るい未来を目指して」というシンポジウムで、同社のサービスモバゲータウンのユーザーの過半数を占める10代ユーザーに対する安全策を説いていました(8月28日の記事参照)。出会い系などの被害に遭わないよう、監視体制もしっかりしているようです。それらの経営姿勢に対してますます評価が高まることを期待します。
土肥 三菱商事(継続保有)3260円×100株=32万6000円
武田薬品工業(ミニ株)7920円×60株=47万5200円
真野 ブリヂストン 2320円×300株=69万6000円
高橋 ディー・エヌ・エー(継続保有) 49万8000円×2株=99万6000円
果たして3人が買った株はどうなるのか。いよいよラスト月、大きな動きはあるか? 土肥は今回の好調の波を維持できるか。真野は再び90万円台を回復できるか。高橋はこのまま順調に増やしていけるのか? 9月7日(金)の結果をお楽しみに。今回3人が買った銘柄や、買い方についてご意見・ご感想はこちらから。また記事へのトラックバックもお待ちしています。
清水さんからのアドバイス
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