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» 2007年09月27日 18時17分 公開

ソニー VS. SBI、ネット銀行秋の陣

ソニー銀行の顧客に限定してサービスを提供する「ソニーバンク証券」が10月からスタートする。一方、銀行・証券・信託のサービスを提供する「住信SBIネット銀行」も9月24日に開業した。ソニーとSBI、2社のネット銀行に対する戦略の違いは何か?

[土肥義則,Business Media 誠]

 「ソニー銀行と一体化したサービスを提供していきたい」――ソニー銀行の石井茂社長は、100%子会社で10月1日から開業する「ソニーバンク証券」の方針を示した。

 ネット専業のソニーバンク証券は、ソニー銀行で口座を持つ顧客に限定し、サービスを提供していく(7月26日の記事参照)。銀行と証券2つの口座を持つことで既存客の「資産運用に取り組んでいきたい」と石井社長は話す。ソニー銀行の口座数は、8月末時点で52万7126。このうちの何割が、ソニーバンク証券で口座を開くかが課題だ。石井社長は「ソニー銀行の顧客で証券口座を持つ人は約5割。複数の口座を持つ人が多いため、3〜4番目の口座をソニーバンク証券で開いてほしい」と述べた。

踊り場を迎えるネット証券に参入する狙いは?

 ソニー銀行とソニーバンク証券は連携し、両口座間の入出金を無料で提供する。手数料は約定代金の0.105%(最低840円)で、キャンペーン期間中(10月15日〜12月28日)は420円からとしている。

 ソニーバンク証券では、口座数や売買高などの目標数値を公表していない。既存のネット証券では、現在でも口座数は増えているものの、市場低迷の影響を受け、売買高は減少傾向にある(5月1日の記事参照)。2008年度第1四半期の決算でも、大手ネット証券は減収減益で苦しんだ。市場低迷という外部環境と激しい手数料競争による収益の圧迫で「ネット証券は“踊り場”を迎えている」(業界関係者)という声もある。ネット証券各社では株式の売買手数料に依存したビジネスモデルの転換を進めていて、投資信託の販売などに力を入れている。

ソニーフィナンシャルホールディングスのグループ図

新規参入で証券口座を伸ばすのは難しい

 2006年5月、野村グループのネット証券として、ジョインベスト証券が誕生した。同社は2007年3月末の口座数を50万に設定し、業界最安値水準の手数料などで顧客の囲い込みを図った。だが、2007年8月末時点の口座数は17万8933口座にとどまっている。あるネット証券の幹部は「すでにネット証券の口座数は飽和状態に近い。新規参入で口座数を伸ばすのは難しいだろう」と、ソニーバンク証券に対し冷ややかだ。

 一方の石井社長は、既存のネット証券の“あり方”に疑問を感じている。個人の株式取引が増えたのはネット証券の貢献が大きいとした上で、「手数料偏重のビジネスモデルでいいのか」という。ソニー銀行で円と外貨の預金、保険、ローンなどを扱い、ソニーバンク証券で国内株式などのサービスを提供する。さらに外国為替証拠金取引(FX)や国債、商品先物などを扱う予定だ。ソニーバンク証券を開業することで、銀行と証券のすみ分けをなくし、各金融商品を一元管理していくのがソニー銀行の狙いだ。

ソニー銀行は金融商品の一元管理を目指していく

住信SBIネット銀行とソニー銀行は「正面からバッティングする」

住信SBIネット銀行はネット銀行初の「フルバンキングサービス」を展開する

 ソニー銀行+ソニーバンク証券が目指すワンストップ取引に対し、預金から決済、融資、資産運用までの「フルバンキングサービス」を展開する国内初のネット銀行もこの秋スタートしている。住友信託銀行とSBIホールディングスが共同で設立した「住信SBIネット銀行」が9月24日から営業を始めたのだ。

 記者会見の席で住信SBIネット銀行の田中嘉一社長は「銀行、証券、信託――ネットとリアルの融合で、革新的サービスを提供したい」と話した。開業当初は円・外貨預金のほか、住宅ローンなどを扱う。さらにSBI傘下のSBIイー・トレード証券と連携し、ネット上で銀行口座を開けるようにした。

 住信SBIネット銀行は5期目に口座数を60万とし、預金量は1兆円(同)、当期純利益は50億円(同)を目標に掲げる。SBIホールディングスの北尾吉孝CEOは「(目標は)前倒しで達成していく」とし「グループ力を統合し、3社(住信SBIネット銀行、SBIグループ、住友信託銀行)の企業価値を高めていく」と意気込みを示した。

 SBIは、アクサジャパンホールディングスと合弁で、生命保険会社を設立する予定だ。さらに、あいおい損保とも損害保険会社を準備中で、いずれも2007年度中の開業を目指す。住信SBIネット銀行とSBIイー・トレード証券のほか、ネット生保、ネット損保が加われば「金融コングロマリットが構築される」と北尾CEOは胸を張る。

 住信・SBI陣営は“ネット銀行”に、ソニー銀行側は“ネット証券”に、それぞれ進出する格好だ。石井社長は「住信SBIネット銀行とソニー銀行は、よく似たビジネスだ。正面からバッティングする」と競合することを認めた。

 2001年に開業したソニー銀行はこれまで、少しずつサービスを増やしてきた。今回のソニーバンク証券も、当初は顧客対象者を限定しているが、今後は間口を広げていくという。まずはソニー銀行の顧客から――“静かに”証券業務を始め、実績を積み上げていく構えだ。

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