11月に入り、ガソリン代が一斉に値上がりした(参照リンク)。全国の平均価格はまだ出ていないが、値上げ幅は6〜10円程度。首都圏の激戦区でも、レギュラー1リットルで150円を超える店舗も現れた。値上げ直前の10月31日には、割安なセルフスタンドを中心に「駆け込み給油」の行列ができ、中には“売り切れ”となるガソリンスタンドもあったようだ。ここまでくると、1970年代のオイルショックで起きた「トイレットペーパー騒動」を笑えない事態である。
今回のガソリン値上がり狂騒の背景にあるのは、世界的な原油高だ。その原因については藤田正美氏の記事に詳しいが、31日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は史上初めて1バレル=96ドルに達したという。業界アナリストの中には、1バレル=100ドルを超えるという見方も広まっており、世界的な原油高と、国内におけるガソリン代高騰は当分続きそうだ。光熱費全般や物価の上昇とあわせて、今年は「厳しい冬」になりそうである。
ガソリン価格が止まることのない高騰を続ける一方、千葉県の幕張メッセでは、今まさに自動車の祭典である「東京モーターショー」が開催されている。
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筆者は10月24日の報道招待日(プレスデイ)に足を運んだが、内外の自動車メーカーや関連企業が集まり、新型車やコンセプトカーをショーアップする様は、やはり華やかだ。深刻化する原油高や環境問題が影を落としてはいるが、それに対する姿勢は自動車メーカーによって、ずいぶんと異なる印象である。
東京モーターショーのプレスデイには、各企業のトップが自社ブースで話す「プレスブリーフィング」が行われる。ここでは各社の経営状況や事業に対する意気込み、特に注力している(モーターショーの見どころになる)プロダクトを紹介する。つまりプレスブリーフィングには、各企業のスタンスやカラーが色濃く表れるのだ。
このプレスブリーフィングにおいて、最も印象深かったのが、三菱自動車工業の社長である益子修(ますこおさむ)氏の挨拶である。益子氏はブリーフィングの冒頭で同社の電気自動車(EV)事業について話し、モーターショーで公開したEV「i MiEV SPORT」を紹介した。さらに現在、実走試験中のi MiEVのうち1台を、益子氏自身が社用車として使っているという。
「(i MiEV計画では)当初、発売時期を2010年に定めていました。しかし、我々はi MiEVの発売を1年前倒しにして、2009年にいたします」(益子氏)
プレスブリーフィングの内容からも、同社のEV市販化に向けた強い意気込みが伝わってきた。
三菱自動車によると、「軽自動車とコンパクトカーのセグメントはすべてEVにしたいと考えています。また、i MiEVを使ったカーシェアリングや新たなモデルの販売方法など、ビジネスモデル面でも旧来のクルマとは違う世界を作っていきたい」(i MiEV開発担当)という。
一方、ハイブリッドカー市販化で環境分野をリードするトヨタ自動車は、東京モーターショーのテーマを「ハーモニアスドライブ、人と、地球と走る、新しい明日へ」に設定。同社の渡辺捷昭社長は、その実現のキーワードは「3つのサスティナビリティ」だと話した。
「1つ目は人と地球とクルマ社会の共生を目指したサスティナブルモビリティ、2つ目は自然と調和するモノづくりを目指したサスティナブルプラント、3つ目はサスティナブルな人と社会への貢献活動です。次なるモビリティ社会の実現に向けて、世界をリードしていきたい」(渡辺氏)
展示されたコンセプトカーも「低燃費」「環境負荷の軽減」を主軸に据えたものが多く、トヨタにとって低燃費と環境が大きな競争力になっていることがわかる。
ほかにも、本田技研工業やマツダ、小型車メーカーのスズキやダイハツなどが、原油高や環境問題といった時代背景を反映した“エコ重視”の姿勢を打ち出していた。また、安全で利便性が高い二輪車の展示に力が入っているのも今年のモーターショーの特徴だろう。
現在の原油高、それによるガソリン価格上昇は構造的な高騰になってきており、今後ふたたび数年前の水準まで値下がる可能性は低そうだ。減・脱ガソリンの実現は、自動車メーカーにとって理想論ではなく、生き残りをかけた現実的な課題になっている。
従来のビジネスモデルから脱却し、21世紀の新たなクルマとビジネスが作れるか。今年の東京モーターショーの見どころは、まさにここにある。
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