最終回・MBAの理想と現実――卒業して分かったことロサンゼルスMBA留学日記(3/3 ページ)

» 2008年06月23日 14時12分 公開
[新崎幸夫,Business Media 誠]
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現実その3:理論の限界

 MBAではビジネスに関連した多くの理論を学ぶ。それは本連載の最初のほうで紹介したとおりだ。戦略やマーケティングの「それらしい」理論を知り、専門用語を使いこなせば、いっぱしの経営者のような顔をすることもできる。

 だが、当然のこととして理論と実践は異なる。それはMBAの学生たちも、嫌というほど分かっている。勉強しながら、「こんなBuzz Words(格好つけた専門用語)を暗記して、何の役に立つのかな?」という会話も交わしている。

 とはいえ個人的には、勉強内容についてはポジティブにとらえている。連載第1回でも触れたとおり、戦略、会計、ファイナンス、オペレーションマネジメント、マーケティング、すべてを網羅して学ぶことができ、視野が広くなる。経営のすべてが理解できるとは言わないが、経営のすべてを理解するための「考えるツール」をもらった、というイメージだ。

 いずれにせよ、頭でっかちの理論だけではなく、ビジネスの本質をより深く“経験”していくのは、卒業後の課題となる。

とりあえず度胸は付く?

 いろいろネガティブなことも書いてきたが、米国のビジネススクールに通って、これはレベルアップしたなと思える点を1つ挙げて終わりにしよう。それはズバリ、「とりあえず度胸は付いた」ということだ。

 日々慣れないことの繰り返しで、チームメイトとのコミュニケーションに苦しみ、ときには英語でプレゼンもさせられる。生活面では大家ともめにもめて「お前を訴えてやる」とすごまれたり、前回ご紹介したとおり、メキシコ人の騒音に悩まされたりと、海外留学生活にトラブルの種はつきない。

 このほかにも住んでいるアパートが停電になり、外に出たところ実はその区画全体が停電で、信号機すらついていなかったとか、車の修理で危うく数百ドルほどボッタくられそうになったりとか、米国社会はいろいろな経験をさせてくれる。学校のプロジェクトでキューバに出かけ、社会主義の実態にショックを受けたこともあった

キューバの街の風景。国民の平均月収は15ドル

 MBAを取得したからといって、実は大したことがないというのは、MBA卒業生なら誰しもが分かっていることだ。しかし、そうはいっても貴重な体験をさせてくれるのもまた事実。MBAの理想と現実――この連載を通じて、いくらかでも伝わったなら幸いだ。(編集部より:本連載は今回で終了します。ご愛読ありがとうございました)

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