「アウトプットするほど至らない自分を認識した」――保田隆明が大学院に行く理由(前編)社会人大学院特集(5/5 ページ)

» 2009年11月18日 11時00分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]
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授業は「高バリュー」。いい意味で期待を裏切られた

 授業内容については、ファイナンスについての知識は実務を経験して持っているので「ある程度はいけるだろう」と当初は高をくくっていたという。しかし、実際はいい意味で期待を裏切られた。

 「これほどバリューが高いとは思わず、侮ってすみませんでした、という気持ちです(笑)。大学の先生はとにかくものすごく研究して、いろいろな研究論文を読んでいます。彼が教えている科目は、例えばデリバティブかもしれないけれど、それだけが専門ではなくて、あくまでもすごくたくさん研究してきた中の1つに過ぎないんです。先生に『こういうことに興味があるんです』と投げかけると、じゃあこの文献を読んでみなさい、あの論文はどうだ、と芋づる式に論文が提示されます。さらに、それぞれに参考文献がある。それらを見ていくと、奥の深さに気付かされます」

 実務は「知っているか、知っていないかの違い」だと保田さんは考えている。例えば、1人のお客さんの対応の仕方が分かれば、後はだいたい同じことの繰り返しだ。しかし学問の世界は「考えて問題を解いたか、解いていないか」であり、考えるという要素が非常に大きい。

 「実務においては、考える時間がすごく減っています。業務を進めることに一生懸命になりますし、だいたいは習慣でできてしまう。でも学問の場合は、その問題が解けない場合は先に進めません。じっくり考えて、解く。それって仕事の中においては、忘れていた時間ですね。仕事では意外に頭を使っていないんですよ。私はすごい頭を使って考えていると思っていたんですけど、いかにそれが違ったかということを今、実感しています」(保田さん)

 ただ、学んだことが直接仕事に結びつくかというと、そうはならないと保田さんはいう。「ファイナンスという実務に近い学問であったとしても、これを学んだからすぐにトレーディングの損益が改善するとか、資産運用のなんとかが改善するとかはないと思います。ただ、幅広い知識をもって業務に当たれるので、メンタルな部分で違うでしょうね。自信がつきます。部署を異動する際にも、その部署の仕事をイメージしやすくなりますね」(後編に続く)


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