小泉進次郎はできる「若いやつ」か?伊吹太歩の世界の歩き方(4/4 ページ)

» 2012年11月01日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]
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米国留学中にまとめた小泉進次郎のビジョン

 彼はいったい日本に対してどんなビジョンをもっているか。米国留学中に所属していた民間シンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)で、小泉が2007年に書いた論文がある。その内容を一部紹介したい。

「歴史的にみれば、米中の接近によって『ジャパン・パッシング』という見方が生まれ、日本は米大統領が親日か反日か、という判断する傾向にある。問題は、米中接近を、アジアが安定化しているということだと見られるかどうかだ。(中略)

 中国の隆盛が東アジア地域の新パワーバランスの到来を意味するなら、日本は中国の役割が大きくなるのを歓迎できない。中国が地域のリーダーで、日本は低迷する。これを避けるために、日本が集団的自衛権を行使し地域の安全保障に重要な役割を担うことが必要だ。これは中国を防ぐ目的ではなく、反対に、日本に日米中の安定した関係を築くための責任と自信を与える」

 そのうえで、米国に対してこう進言している。

「日本はいつもアメリカがどう中国や日本を扱うかを見ている。アメリカはこうした日本人の心理状態に敏感にならなければいけない。日本は世界第二位の経済大国としての地位を誇りに思い、国家のアイデンティティーの一部だと考えている。だが遅かれ早かれ、日本はその地位を失うことになり、中国とインドが恐るべきスピードで追いついてくるという辛い現実に直面する。日本は板挟みになる。日本は中国を利害関係者にしたいと認める一方で、中国が利害関係者になることで、アメリカが日本に注意を払わなくなることを恐れる。日本は、現在のように集団的自衛権の解釈で安全保障の役割を制限し続ける限り、このジレンマに苦しめられ続けるだろう」

 つまり小泉は、日本が安全保障分野で今以上に自立すべきだと訴えている。

「日本が自ら課した制限から脱することは、同盟国としてさらなる信頼を得ることになり、更なる貢献が可能になり、同盟の質を向上させるだろう。現状のように不平等な同盟(アメリカが日本を守る義務、日本はアメリカにその義務を負わない)は、批評家らに言わせれば、第二次大戦での敗戦後の日米関係の成功のシンボルではなく、アメリカが日本に押し付けたことだと見ている。信頼が同盟にもっとも大事な基礎で、信頼は同等の安全保障の役割がなければ生まれない。

 アメリカが日本の防衛の一方的な負担を担う時代は終わった。グローバリゼーションは世界経済だけでなく、安全保障の環境も塗り替える。従来の脅威ではないものに立ち向かうため、また地域安定化に貢献するために、日米同盟を強固にする最大の努力が必要だ(中略)

 日本が集団的自衛権矯正の権利を禁止し続ける限り、アジア地域での安全保証の立場に自信を持つことはできないだろう」

 これを見る限り、小泉は少なくとも日本の進むべき道について彼自身(とCSIS)のビジョンを提案している。集団的自衛権の行使には賛否あるだろうが、ただ仮に近い将来、小泉が日本政界の有力者となる可能性は否定できない。ただこうしたビジョンを振りかざしても、いつまでたっても「回転ドア」では、同盟国からすら信用を失う。

 日本にまず必要なのは、腰を据えて国家運営ができる政権を誕生させることだ。少なくとも、小泉の世代まで、それが実現することはなさそうだが……。

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