クラウドファンディングと従来の資金調達の違い入門クラウドファンディング

» 2014年04月25日 07時00分 公開
[山本純子,Business Media 誠]

集中連載「入門クラウドファンディング」について

本連載は、山本純子著、書籍『入門クラウドファンディング』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

本書は国内外の諸事情に通じた気鋭のコンサルタントによるわが国初となる「クラウドファンディング」の本格的な入門書です。

不特定多数の人たちをフォロワーに変え、資金を提供してもらいプロジェクトを実現する仕組み――それがクラウドファンディング。クラウドファンディングが大きな注目を集める“本当の理由”とは? 単なる資金調達の手段を超えてプロジェクトの進め方を大きく変える、新しい“おカネの集め方”です。

キックスターターといった世界最大のプラットフォーム、莫大な資金調達をクリアしたプロジェクト、世界的映画監督が仕掛けたプロジェクトに対するさまざまな議論の応酬など、興味深いエピソードも満載。起業家(予備軍)やベンチャー経営者のみならず、一般企業の経営者必読の1冊です!


 クラウドファンディングは資金調達の手法の1つですが、基本的に従来の資金調達とは役割が分かれています。

 下の図は、企業の資金調達活動のなかで、クラウドファンディングがどの部分の役割を担っているかを示したものです。

ファンディング・ライフサイクル

 このうち、特に寄付型や購入型のクラウドファンディングは、アイデアやコンセプトの検証、および試作品段階のものが合っているとされています。事業を展開するための本格的な資金調達の前に、一般の人たちや任意のコミュニティによって今後資金を投下していくに値するプロジェクトかどうかを判断する機能をもっています。予想される資金調達規模はだいたい5万ドル以下です。

 そこで淘汰され、試作品がある程度テストされた段階で、融資型、株式型のクラウドファンディング(資金調達規模100万ドル以上)による資金調達、さらに商品化のメドが見えてきたところでエンジェル投資家やベンチャー・キャピタルなどの従来の資金調達手法を実行していきます。

 このように購入型のクラウドファンディングは、企画したアイデアそのものがはたして人々から求められているものなのか、問題は何かといった市場リサーチや試作品のテストの段階に合っている資金調達です。この段階で資金が集まらないものは、商品としてリリースするには根本的な問題があると判断して再検討することができます。

 ちなみに、寄付型/購入型のクラウドファンディングを利用する段階(調達規模:5万ドル以下)とそれ以外のクラウドファンディングを利用する段階(調達規模:100万ドル以上)の間に「ファンディング・ギャップ」と呼ばれる隔たりがあります。

従来の資金調達とクラウドファンディングの比較

 このギャップに関しては、以前紹介した「ペブル(Pebble)」のように、多額の資金を集めるケースが続々と登場するなど、購入型クラウドファンディングが埋め始めています。調達額規模の面では購入型と株式型や融資型との境が曖昧になってきていると言ってよいでしょう。

(つづく)

著者プロフィール:

山本純子(やまもと・じゅんこ)

株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。

大学在学時よりゲーム業界に携わり、主にオンライン・ゲームのマーケティング、調達、事業開発等に従事。

2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために(株)アーツ・マーケティングを創業。

2011年、修士課程修了後よりクラウドファンディングの研究を始め、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、現在、企画・コンサルティング・事業開発、および講演・レクチャー等に取り組む。


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