万年筆1本作るのに6年――「LAMY ドイツデザインの精緻」展を見てきた
松屋銀座で開催している企画展「LAMY ドイツデザインの精緻」を見てきた。オープニングレセプションに登場した深澤直人氏は、企画展のこだわりやLAMYの魅力について語った。
ドイツの筆記具メーカー「LAMY」。「サファリ」や「LAMY2000」シリーズなどが有名だ。中には社員全員にLAMYのボールペンを配布している会社もある。LAMYを使っていることで、「あ、それLAMYの新製品ですか?」など会話の糸口になることもあるそうだ。
8月17日まで松屋銀座で開催する企画展「LAMY ドイツデザインの精緻」を見てきた。本企画展では、LAMYの歴史、哲学などを紹介。またこれまでの製品を機構を見せながら展示している。
今回、10月に発売予定の万年筆「dialog3」も公開となった。dialog3は、試験管のような円筒形の本体をツイストすることで、14金のペン先が出るキャップレスタイプの万年筆で、収納時にペン先が乾かないよう、緩やかなカーブを帯びたふたがペン先を覆うようになっている。グリップ部分にはクリップが付いているが、筆記時にはボディに収納され、筆記の妨げにならないように設計している。この機構は現在特許出願中とのことだ。
初日の7月22日、オープニングレセプションが開かれ、独・LAMYのエリッヒ・ダニエル取締役輸出部長と、企画展の指揮を執ったデザイナーの深澤直人氏が出席した。
深澤氏は2008年に発売した「LAMY noto(ラミー ノト)」のデザインを担当している。LAMYのデザインにアジア人を起用するのは深澤氏が初めて。「工業デザインというものを始めたとき、デザイナーとしていいブランドに携わりたいという気持ちだった。もちろんわたしだけが感じていたことではないと思いますが、LAMYは燦然(さんぜん)と輝いていました。そのLAMYのデザインにかかわることができて、本当に感慨無量です」(深澤氏)
企画展では、notoの打ち合わせの際に訪れたLAMYの本社のイメージを伝えるように、展示をレイアウトしたという。また深澤氏は「書くときに斜めになるペンの特徴をこの展覧会に生かし、LAMYの“L”の文字も斜めにした」と展示へのこだわりを説明した。
notoは、角に丸みを帯びた三角形のボディと一体化したクリップが特徴だ。本体をくりぬいて作ったように見えるクリップは、見た目には分からないくらい微少な段差を本体との間に作り、ポケットに挿しやすい。「notoは三角形というデザインなので製品化はとても難しいはずですが、そこはさすがにLAMYという感じですんなり実現できました。そういう意味であまり苦労はありませんでした」(深澤氏)
ダニエル部長によれば、北米などでは最近インターネットでの注文が多いという。LAMYは筆記具としては決して安い製品ではない。にもかかわらずインターネットでの注文が増えているのはなぜか。「お客様の方がLAMYのことを知っている。これまでの実績があり、信頼を得ているからインターネットでも安心して購入できるのではないだろうか。そして約8割の人がリピーターになる」(ダニエル部長)。LAMYでは、1つの製品を作るだけでも最低で2年の年月をかける。notoで4年、dialog3で6年を費やしたという。ダニエル部長はLAMYのクオリティに自信を見せた。
今後の製品展開も気になるところだ。「今後、北欧や中国デザインにも注目していきたい。もちろん日本のデザインもいいし、イギリスにも興味がある」(ダニエル部長)。そしてダニエル部長は、現在dialog4の開発を進めていることを明らかにした。
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