Snapdragon S4で活用領域を拡大するQualcomm――Windows RTでのデモも公開:COMPUTEX TAIPEI 2012(2/2 ページ)
Qualcommが、台湾で開催されているCOMPUTEX TAIPEI 2011で、モバイルコンピューティング戦略の説明会を開催した。同社の主力製品「Snapdragon S4」の話題を中心に、Windows RTのデモなども披露した。
タブレットなど大型デバイスにも広がるSnapdragon
こうしたQualcommの最新の成果の1つが「Windows 8対応」になる。Computex開催直前の6月1日に、MicrosoftはWindows 8の、製品版発売前では最後のベータ版である「Release Preview」の提供を開始した。Release Preview版では、これまでの公開ベータ版とは異り、「ARM版デバイスへの提供」も行っている。Qualcommは今回、Snapdragon S4を搭載したリファレンスデバイスに、ARM版Windowsこと「Windows RT」のRelease Previewを搭載したもので、デモンストレーションを行った。
Windows RTの名称が付く前から長きにわたってMicrosoftとの共同開発が進んでおり、例えばARM版Windowsが初めて発表された2011年1月のCESでは、Snapdragonベースのデバイスで動作デモが披露されている
Windows RTは「従来のデスクトップアプリケーションを実行できない」以外は、通常のWindows 8と何も変わらないため、デバイスは一見ほかのWindows 8タブレットと区別できない。実際、ホートン氏は動画再生やアプリ切り替えを含むすべての操作がスムーズに行えることを紹介しており、この点がx86プロセッサ搭載製品と比較しても大きなメリットだと強調している。DirectX 11.1にも準拠しており、「Vendetta Online」という3Dゲームが動作する様子を紹介しつつ、ひととおりのことができる様子を披露した。またホートン氏は「Windows RTの市場は主にエンタープライズをターゲットとしたものになるだろう」とも予測しており、そのために必要な管理機能やセキュリティ機能を、ARMプラットフォームが実現している点を強調する。
また、デモの過程でシステムプロパティを見ることができたので、気になる点を紹介しておく。ホートン氏はリファレンスデバイスに搭載しているプロセッサが3G/LTEに対応したチップセット「MSM8960」であり、Windows RTが動作するタブレットとしては初で唯一のLTE対応モデルだと紹介していた。だがシステムプロパティで表示されるプロセッサ名は「APQ8060A」であり、それとは異なっていた。Qualcommが同社のWebサイトで公開しているSnapdragonシリーズのチップセットを紹介したチャートを参照すると、MSM8960とAPQ8060Aはどちらも「S4 Plus」に属するプロセッサであることは分かる。ただ、QualcommはMSMを通信機能(ベースバンド)付きのプロセッサ(チップセット)、APQをプロセッサのみの製品と区別しており、実際にはWindows RTがプロセッサ部分のみを抽出表示しているだけで、プロセッサ的には同一品なのかもしれない。
このほかリファレンスデバイスは、1.5GHz駆動のデュアルコアプロセッサに、2Gバイトのメモリを搭載していた。2Gバイトというメモリ容量についてホートン氏は「Windows RTにおける規定された標準のメモリサイズ」としており、他社のWindows RTタブレットも同様の構成になっている可能性が高い。また1.5GHz駆動のデュアルコアプロセッサというのも「ひととおりの機能が過不足なく利用できるレベル」としていて、これがWindows RTの動作する標準的なスペックになると思われる。GPUに関して、S4 Plusでは「Adreno 305以下」と規定しており、MSM8960やAPQ8060AはAdreno 225を採用している。S4 PrimeやS4 Proでは「Adreno 320」と規定しているため、これらとは明らかに区別されている。逆にいえば、Windows 8 Hardware Certificate Requirementsが規定する最低条件である「Direct3D 10 Feature Level 9_3 with WDDM 1.2」準拠という条件さえ満たしていれば、それほどハイエンドの機能は要求されないのだろう。
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