先端技術が光る「らくらくスマホ」/3M戦略を体現する「Smart TV Box」/「KDDI∞Labo」がもたらす知見:石野純也のMobile Eye(7月9日~7月20日)(2/2 ページ)
7月9日から20日には大きなニュースは比較的少なかった。そんな中で注目したのが、シニア向けのスマートフォン「らくらくスマートフォン F-12D」、KDDIが正式発表したセットトップボックス「Smart TV Box」、そして9日に発表された「KDDI∞Labo」第2期生優秀アプリだ。
「KDDI∞Labo」が3期生を募集中、マルチデバイス対応アプリの登場に期待
9日には、KDDIがスタートアップ企業やエンジニアを対象にした支援プログラム「KDDI∞(ムゲン)Labo」の、第2期生優秀アプリを発表した。
最優秀賞チームに選ばれたのは、Connehitoが開発した「Creatty」というアプリ。オンラインギャラリーがコンセプトで、「シンプルなデザインで、作品の魅力を最大限引き出せる」(代表取締役社長、大湯俊介氏)ことを特徴にしている。Creattyは、簡単なサインアップで、写真やイラストなどの作品集をオンライン上に作れるアプリ。iPhone、Android、PCなど、マルチデバイスに対応しているのも特徴だ。クリエーター以外のユーザーにも、シンプルに並べられた作品を快適に見られるといったメリットがある。このほか、ベストエンジニア賞にはエウレカのソーシャルアプリマッチサービス「Pickie」が、クリエイティブ賞にはU-NOTEのノート共有サービス「U-NOTE」が、Coolデザイン賞には22のモノコレクションサービス「スキコレ!」が選出されている。
同イベントには、KDDIの代表取締役社長の田中孝司氏も登壇し、「日本、海外の枠にはまらないサービスが出始めている、そうした胎動を感じる」とこれまでの取り組みを振り返った。イベント後の質疑応答では、田中氏がプログラムの目的をあらためて解説。現時点でKDDIのビジネスに与える効果は「限りなくまだ何もない」としつつも、ここから利益を上げることが目的ではないと述べた。どちらかというと、スタートアップ企業を支援し、新たなビジネスの芽が生まれてくることに期待しているようだ。一方で、KDDIにとっては、スタートアップ企業の発想が刺激を与える側面もある。新たにラボ長に就任した増田和彦氏は「こうした活動を通じて、初めて分かることがある。普段おつきあいしているところは、非常に大きな会社が多い」とし、スタートアップ企業ならではのスピード感や柔軟な考え方が、大企業のKDDIに新たな知見をもたらす可能性を語った。
一方で、田中氏がKDDI∞Laboを通じて、もっと大胆なチャレンジをしてほしいと感じていることもうかがえた。同氏はイベント登壇時に、HTML5ベースのWebOS「Firefox OS」をインストールした「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」を披露。実際、すでにGALAXY S II WiMAX上で動作していることを紹介したうえで、「商売抜きと言うと強烈かもしれないが、目先の起業だけではなく、テクノロジーを追いかけていく。そういう人ももっと支援していければ」と語っている。また、質疑応答時にも「ビジネスを早く立ち上げたいと思うと、どうしてもビジネスモデル中心にできてしまう。それはあまり面白くない」と述べ、KDDI∞Laboからより革新的なサービスが生まれることに期待を寄せた。
確かに、受賞サービスはどれも目新しい半面、厳しい見方をすると“ソーシャル”がキーワードになっているものが多く、新しいカテゴリーやトレンドを生み出すまでには至っていない。KDDI∞Laboの第3期生には新たに学生枠が設けられたが、ここにもより大胆な発想を求める田中社長らの想いが込められているようだ。
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