LINEやTwitterは200Kbpsでも快適?――IIJ佐々木氏が通信品質のこだわりを語る:IIJmio meeting #3
通信キャリアが提供しているLTEサービスは、3Gバイトや7Gバイトなど一定の通信量を超えると速度が制限されてしまう。「IIJmio」もクーポンを使わないときは200Kbpsだが、動画をストリーミングするといった使い方でなければ、快適に通信できるという。その秘密とは?
通信キャリアが提供するデータ通信サービスは、月単位の定額制を採用しているが、MVNOの通信サービスの料金は、必ずしも定額制ではない。インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)のデータ通信サービス「IIJmio」では、「クーポン」という仕組みを採用している。クーポンを適用しないときの通信速度は最大200Kbpsだが、適用すると下り最大150Mbps、上り最大50MbpsというドコモのLTE通信をフルスピードで利用できる。一方で200Kbpsという速度は、実用的なのか疑問に思う人もいるだろう。
IIJが4月19日に開催した「IIJmio meeting #3」では、ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長の佐々木太志氏が、あらためてIIJmioの通信品質へのこだわりを説明した。IIJmioではプランによって1Gバイト、2Gバイト、3Gバイトのクーポンがバンドルされるので、他社の3Gバイト、7Gバイトなどの定額制と対比しやすいが、佐々木氏はクーポンの料金は「従量制」だと言う。
「ドコモさんの場合、FOMAネットワークでパケ・ホーダイをやっていたときは、この(7Gバイトなどの)制限はなかった。LTEのサービスが始まったら、『やっぱり7Gバイトが来たらお仕置きをさせてください』というお話があとからやってきた」
佐々木氏は、この通信料金の仕組みを食べ放題のレストランに例える。
「食べ放題のレストランは、料金を払えば食べ放題になる。ところが、たくさん食べるお相撲さんがやってきて、店をたたまなければならなくなったので『これだけ食べたら出ていってもらいます』というようなルールを後から持ってきたのが、ドコモさんの7Gバイト(制限)。それに対して、僕たちの考え方は真逆で、水はいくら飲んで構わないけど、食べたかったらお金を払ってねというスタンス。高速通信ではペナルティは設けないことがポリシーだと思っている。料金をいただくサービスで、ペナルティ(128Kbpsへの規制)を課すことはナンセンスだと思っている」
そしてクーポンを適用しない200Kbpsという速度は、「いつでもその状態を選択できる」ことから、佐々木氏は「必ずしもペナルティではない」と考える。それは200Kbpsが必ずしも遅いわけではない――という点にも関連する。
IIJmioでは、1回の通信につき200Kbps(25Kバイト)×3秒間、つまり75Kバイト分の通信には「バースト転送」を許可しており、200Kbpsの制限がかからない。「Twitterのタイムラインを更新、Webサイトの閲覧でもテキストとCSSのダウンロードくらいなら、75Kバイトで済んでしまう」(佐々木氏)という。75Kバイトより多くのデータをやり取りすると、200Kbpsに速度が制限されてしまうので、数Mバイトの写真を送る、YouTubeの動画を見続ける、といった使い方はクーポンなしでは難しい。
実際にスマートフォンでさまざまなアプリやサービスを利用する際、クーポンなしの200Kbpsでどこまで快適に通信できるのだろうか。プロダクト本部 プロダクト推進部の堂前清隆氏が、スピードテストでリアルタイムにどれだけの速度が出ているのかをグラフで可視化しながら説明した。スピードテストではじき出される数字は、平均値や最大速度など“結果”の1つなので、その過程でどのように通信しているかを調べるという実験的な試みでもあった。
まずノートPCにIIJmioのSIM(200Kbpsに制限されたもの)を装着したUSBモデムを接続。続いてWi-FiでスマートフォンをノートPCに接続し、スマホのアプリを使っているときの通信速度を0.1秒単位でグラフにする――というのが計測方法だ。「Speedtest.net」や「RBB TODAY SPEED TEST」といった代表的な速度測定アプリを使ったところ、通信が発生する頻度が異なるといった傾向がみられたが、下りと上りとも通信が発生した直後は最大で3000~5000Kbpsほどの速度を記録し、その後は200Kbps付近に制御されていることが分かる。
Twitterのタイムライン更新時には瞬間的にしか通信しないので、200Kbpsの制限はかからずに済んでいる。Yahoo! Japanのトップページは75Kバイト以上の容量があるので、一度のバースト転送では表示しきれず、複数のバースト転送を要している。なお、バースト転送は数秒ごとに小刻みに発生している。
LINEの無料通話は数10~100Kbps程度で済んでおり、200Kbpsに満たない帯域でも問題なく利用できているようだ。LINEのトークに至っては、ほとんど通信が発生しておらず、バースト転送なしでも問題ない。一方、ラジオアプリの「radiko.jp」ではバースト転送が5秒ごとに発生しており、一度の通信で5秒分のデータを取得していることが分かる。
バックグラウンドでどれだけ通信しているかによっても状況は変わってくるだろうが、バースト転送+200Kbpsでも、ある程度快適に利用できることが分かる。とはいえ、時間帯によってはすべてのトラフィックをさばききれないこともある。特に平日12~13時の通信が多く、IIJはこうした混雑した時間帯での通信品質の改善を目指すとしている。
関連記事
IIJ mio meeting #3:MVNOからみたLINE電話とは?――IIJ宮本氏「ちょっと普通じゃないところがある」
「LINE電話はちょっと普通じゃないところがあるかなと思う」と話す、IIJの宮本氏。MVNOのSIMカードで「LINE電話」を利用すると、使用するSIMの種類によって、通常の携帯電話のように通話ができない場合がある。さらに、LINE電話によって「電話番号の役割が変わってきている」という。「通話の需要は依然強い」:IIJ、音声通話に対応したIIJmio「みおふぉん」発表
IIJは、データ通信専用で展開してきた個人向けSIMに音声通話対応のラインアップを追加した。最少価格プランでは月額2000円を切る(ただし通話料別)。フルスペックサービスはもういらない:IIJ、個人向け低価格SIMなどのモバイル事業を説明
Nexus 5といったSIMロックフリーデバイスの登場と、1000円を切る“低価格低速SIM”の成功など、MVNO市場が拡大しつつある。その実情をIIJが説明した。「IIJmio高速モバイル/Dサービス」にSMS対応SIMが追加 一部ブランで値下げも
インターネットイニシアティブは、データ通信サービス「IIJmio高速モバイル/Dサービス」における一部プランの月額料金を10月1日に値下げする。また、SMS機能に対応したSIMも追加する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.