“ガラスマ”ではなく“グロスマ”を展開する――HTCのスマートフォン戦略:米国でシェア1位に
日本ではワンセグやおサイフケータイなどに対応した、いわゆる「ガラスマ」が増えつつあるが、HTCはあくまでグローバルなスマートフォンをベースに展開する。同社の最新モデルとともに、小寺氏が事業戦略を説明した。
HTCが6月24日、プレスイベントを開催し、チーフ プロダクト オフィサーの小寺康司氏がスマートフォン事業の取り組みを説明した。
小寺氏は「HTCのスマートフォンは現在、世界で0.8秒に1台が売れている。また、2010年の第1四半期に比べ、2011年の第1四半期の売れ行きは3倍に増加している」と説明し、スマートフォン事業が好調であることをアピールした。さらに、2011年第1四半期の北米におけるスマートフォンの市場シェアは、HTCがAppleを抜いて1位を獲得した。「米国ではトップ3のスマートフォンメーカーになることを目標にしていた。(1位獲得は)我々の会社の歴史の中でも大きな1ページ」と同氏は感慨深げに話した。
米国以外にも“4G端末”を広げていく
HTCは、WiMAXやLTEなどの高速通信への対応も積極的に進めている。米Verizon向けにLTE対応のスマートフォン「HTC ThunderBolt 4G」を供給したのは記憶に新しい。WiMAXやLTEに対応した(同社が定義する)“4G端末”は、現在のところ米国を中心に展開しており、AT&T、Verizon Wireless、Sprint、T-Mobileの各事業者に投入している。今後は「米国以外の地域にも4G商品を徐々に広げていく」(小寺氏)とのこと。
3G端末については、HTCは2月に「HTC Desire S」「HTC Wildfire S」「HTC Incredible S」「HTC ChaCha」「HTC Salsa」のスマートフォン5台とタブレット「HTC Flyer」を発表。3月にはツインカメラやデュアルコアCPUを搭載する「HTC EVO 3D」とタブレットの「HTC EVO View 4G」、4月には、デュアルコアCPUや最新のHTC Senseを採用した「HTC Sensation」を発表し、着々とAndroidのラインアップを拡充させている。なお、これまでのHTCモデルは「Desire」を主軸に展開していたが、現在のフラグシップ機は「Sensation」で、Desireは一般層に向けて投入する。タブレットは現在7インチのモデルをそろえているが、10インチ程度のディスプレイを備えたモデルも今後投入していくという。
さらに進化した「HTC Sense 3.0」
HTC製のスマートフォンは、同社独自のUI(ユーザーインタフェース)「HTC Sense」でも知られる。HTC SensationやHTC EVO 3Dには、最新のHTC Sense 3.0を採用しており、さらに使い勝手が向上している。例えば、Android端末は使用前に画面ロックを解除する必要があるが、HTC Sense 3.0では、画面下部に表示されたリングにショートカットアイコンをドロップすれば、ロックを解除することなくアプリを起動できる。「スマートフォンを使い始めるまでのステップが多いので、いかにスムーズに使えるかを考慮した」と小寺氏は説明する。
さらに、HTC Senseでは天気予報が大きく表示されるウィジェットもおなじみだが、3.0ではウィジェットを選択すると、画面全体に現在の天候が表示され、よりリアルに感じられる。
カメラ機能にもこだわり、新たに「インスタントキャプチャ」機能を搭載。携帯電話のカメラで撮影をすると、実際にシャッターが切れるまでにタイムラグがあるが、これを利用すると0.3秒以内に撮影できる。HTC Sense 3.0では、こうしたホーム画面やカメラ周りの機能を中心に訴求していく。QualcommのデュアルコアCPUを搭載しているHTC SensationやHTC EVO 3Dでは「いかにサクサク動くかもこだわり、ホーム画面ではカルーセル(それぞれのページ)がくるくる回るグラフィックにした」(小寺氏)。新たなHTC Senseと高速CPUとの相乗効果で、これまでのHTCモデルよりも快適な操作感が得られる。
ダウンロードして10秒で見られる「HTC Watch」
HTCの動画配信サービス「HTC Watch」は、タブレットのHTC Flyerに加え、スマートフォンのHTC SensationやHTC EVO 3Dでも利用できる。「PCを介さずスマートフォンを中心にコントロールすること」にこだわり、スマートフォンやタブレットからダウンロードできるのはもちろん、HDMI出力してテレビなどで楽しむことも可能。動画を購入後、10秒後にはダウンロードしながら視聴できる。HTC WatchはHTC SenseにUIが統合されており、ライブラリへすぐにアクセスできるウィジェットも用意する。ダウンロードしたコンテンツはクラウド上に保存され、最大5台のHTC端末と共有できるのも特徴だ。
現在は米国と欧州でサービスを始めており、500以上のコンテンツがそろう。「月に200コンテンツほど増えており、年末には2000ほど集まる見通し」(小寺氏)だ。課金にはクレジットカードを使っているが、今後は携帯事業者の課金システムとの連携も検討しているという。HTC Watchの日本での展開は「2011年末〜2012年初めを目標に進めている」とのことで、邦画・洋画やテレビ番組などの配信が予想される。
国ごとのカスタマイズや通信事業者との関係もあり、HTC SensationやHTC EVO 3Dのような、先進的なモデルが日本で登場するのは2012年以降になる見通し。一方、NFCに対応した製品は「2011年末から2012年に投入する」(小寺氏)とのことで、グローバルのNFCをベースに開発を進めている。
マーケティング デピュティ ディレクターの佐野由香氏が「日本では最近、(日本独自のサービスを採用した)“ガラスマ”が増えているが、HTCはガラスマではなく“グロスマ(グローバルスマートフォン)”を目指す」と話していたように、FeliCa、ワンセグ、赤外線通信といった日本独自の機能を採用する意向はないようだ。とはいえ、GALAXY SやXperia arcなど日本向けサービスの多くに対応しないモデルがヒットした例もあり、今回披露されたHTC Sense 3.0対応モデルも、Desireなどの従来機からさらに完成度が増したと感じた。HTCのグロスマが世界、そして日本でどこまでシェアを伸ばすのか。その動向を注視したい。
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