「選べるを、さらに」でユーザーニーズに応える――ドコモ秋モデルの狙い
夏モデルがほぼ出そろった矢先に、早くもドコモの“秋モデル”が披露された。5機種の特長とは。なぜ、このタイミングで発表されたのか。NTTドコモ プロダクト部 プロダクト部長の丸山誠治氏が発表会で説明した。
NTTドコモが8月28日、スマートフォン3機種とタブレット2機種を発表。2012年9月以降に順次発売していく。
スマホの早い進化にキャッチアップして投入
ここ数年、ドコモは5月に夏商戦向けモデル、10〜11月に冬春商戦向けモデルを発表するスタイルを基本としてきたが、なぜ8月末というタイミングに新モデルを複数発表したのか。NTTドコモ プロダクト部 プロダクト部長の丸山誠治氏は「フィーチャーフォンのころは年2回発表してきたが、スマートフォンが主流になった現在、デバイスやOSの進化が早く、端末のクオリティも急速に向上している。市場規模も拡大し、多様化するユーザーニーズに応えるため」と説明する。フィーチャーフォンよりも進化のスピードが早いスマートフォンの場合、夏と冬に2回発表するという従来のスタイルでは厳しくなってきたという。「今後もどういう形になるか分からないが、市場に投入できる準備ができたら発表する」(丸山氏)
今回発表した5機種は9月以降に発売されるので、「秋モデル」という位置づけになる。一方で「MEDIAS TAB UL N-08D」以外の型番末尾が「E」となっているのは、原則として、10月以降に発売するモデルが型番変更をするため。MEDIAS TAB ULは9月の発売予定なので、型番末尾は「D」を継承している。
「個性の際立った」5機種を投入
丸山氏は5機種全体について「個性の際立ったスマートフォンとタブレット。選んでいただくお客様の個性もさらに引き立つのでは」とアピールする。
今回発表された中でもフラッグシップ機に位置づけられるのが、LGエレクトロニクス製の「Optimus G L-01E」だ。「クアッドコアCPUを備えるQualcommの『Snapdragon S4 Pro APQ8064』を世界で初めて搭載したスマートフォン」と丸山氏が説明するように、クアッドコアが大きなトピックの1つ。スマホにクアッドコアが必要かという議論もあるが、丸山氏は「ユーザー体験を大幅に強化している」と話す。その1つが、再生中の動画をズームイン/アウトができる「ライブズーム機能」。さらに、HDMI経由でOptimus Gの動画を出力しながら、Optimus G側でブラウジングなど別の操作ができるようになった。こうした高度なマルティメディア機能は、クアッドコアならではだろう。Xi、NOTTV、ワンセグ、FeliCa、防水に対応し、機能面でも妥協はない。2GバイトRAMを備え、防水ながらMicro USB端子はキャップがないのも特筆すべきポイントだ。
発表会ではQualcomm プレジデント 兼 COOのスティーブ・モレンコフ氏のビデオレターが紹介された。「Optimus Gは、LGが全世界で出荷する世界初のSnapdragon S4 Proを搭載したLTE対応スマートフォン。Qualcommの第3世代GPUテクノロジーを駆使したSnapdragon S4 Proは、Qualcomm初のクアッドコアCPU搭載プロセッサーとして、業界に大きな衝撃を与えた。独立検査機関のベンチマーク試験によると、Snapdragon S4 Proはスピード、パフォーマンス、バッテリー寿命、グラフィック性能の点で競合製品をはるかに上回る。この端末によって、スマートフォンのユーザー体験は一気にレベルが上がる」(モレンコフ氏)
withシリーズの1つには、コンパクトなボディにXi、約4.1インチCG Sillicon液晶、ワンセグ、FeliCaなどを詰め込んだシャープ製の「AQUOS PHONE si SH-01E」を投入。丸山氏は「5インチクラスのスマートフォンと比べて幅が10ミリ近く細い」と特長を説明する。派生モデルとして、英国のファッションブランド「Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウェストウッド)」とコラボレートした「SH-01E Vivienne Westwood」を3万台限定で発売する。もう1台、withシリーズのモデルとして登場するのは、ドコモ向けとしては初めてのHuawei製スマートフォン「Ascend HW-01E」だ。世界最速の5秒起動、裏面照射型CMOSセンサーの1310万画素カメラ、手書き入力対応の日本語入力、FeliCa、ワンセグ、NOTTV、Xiなど、日本向けカスタマイズを徹底したハイスペックなモデルに仕上がっている。
タブレットは7インチクラス2台をラインアップする。Samsung電子製の「GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E」は、7.7インチの大型ディスプレイに初めてスーパー有機EL「SUPER AMOLED Plus」を搭載。NEC製のMEDIAS TAB ULは、7.9ミリ、約249グラムという薄型軽量ボディを実現している。またタッチパネルへの振動からリアルな触感を得られ、ゲームや動画が音と連動して振動する「HDハプティクス」も新たに搭載した。
夏モデルの一部機種は正確な需要を予測できなかった
今回発表した5機種のOSはいずれもAndroid 4.0だが、すでにGoogleからは次期OSとなる「Android 4.1(Jelly Bean)」も発表されている。4.1へバージョンアップされることも期待されるが、OSバージョンアップについて丸山氏は「基本的には前向きにやっていきたいが、現在時期を明言することはできない。商用スペックを満たしているかなどの検証が必要なため、ある時点でバージョンアップすることを公表することになると思う」とした。
ドコモは夏モデルにこれら5機種を加え、「選べるを、さらに」というキーワードで訴求していく。一方、夏モデルではQualcommのチップセット(Snapdragon S4 MSM8960)が供給不足という事情もあってか、一部機種で在庫が潤沢にそろっていない状況が続いている。この点について丸山氏は「一部機種が品薄の状況になっており、ご迷惑をお掛けしていることは深くお詫びしたい。初期にどのくらい出荷するかを各端末メーカーと交渉して端末を確保しているが、われわれの需要予測能力が低かった。秋モデルでは十分な数を確保できると思っている。極力ご迷惑をかけないようにしたい」と説明した。Qualcommのチップについては「この場でお答えするのはあまり適切ではない。世界的に潤沢でない事実は十分理解しているが、(Snapdragon S4を採用した端末が)どの地域やキャリアに回されているかは完全に理解していない」とした。
Samsungに下された特許侵害の判決は「影響はない」
米国の特許訴訟で8月24日(現地時間)にSamsung電子がAppleの特許を侵害したとの判決が下されたが、このことへの影響を問われると、丸山氏は「影響はないと考えている」との見解を示した。「ドコモのスタンスとしては、発明者の権利はきちんと保護されるべきで、知的財産権については極めて慎重に扱わないといけないと考えている。ドコモブランドで販売する端末は、ドコモとメーカーが共同開発しているので、第三者の権利を侵害していないかについては分担してチェックし、必要に応じて対処している」と話し、ドコモブランドとして発売しているGALAXYシリーズに関しては、意匠権も含めて内部で精査しており、問題ないとの認識を示した。
またAppleとSamsung電子の特許侵害をめぐる訴訟は日本でも行われており、丸山氏は「知的財産権は国によって考え方が異なる。法廷での闘争は多くの国で起きているが、焦点が異なるし、結果が異なっても不思議ではない。日本での訴訟がどうなるかが問題」とみる。日本での訴訟は大きく2点が問題になっていると丸山氏は説明する。1つが画面端に行くとバウンドするように見える仕様に関する「バウンシング特許」と呼ばれるものだ。この特許については「ドコモ端末では、知的財産権の侵害に当たらない形で実装している」という。もう1つがPCと端末のデータ同期に関するものだが、「これについては、近日中に東京地裁で判決が下されると聞いているので、この時点ではコメントは差し控えたい」とした。
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