どこまで完成度が上がった?――「ARROWS NX F-06E」の実力を徹底検証(3/3 ページ)
ドコモの夏モデルとして発表された富士通の最新スマートフォン「ARROWS NX」。5.2インチのフルHDディスプレイや最新のクアッドコアCPU、大容量バッテリー、フルセグを搭載するなどスペックの高さが目立つが、実際の使用感や性能はどうか。見どころをレビューした。
本当に便利なヒューマンセントリックエンジン
操作感などの基本性能が申し分なくなってくると、ARROWSシリーズおなじみの「ヒューマンセントリックエンジン」が俄然、魅力的だと感じられるようになる。ヒューマンセントリックエンジンとは、富士通がケータイ作りで培ってきたセンサーなどのノウハウを、1つLSIに詰め込んだもの。先に挙げたディスプレイの色味などを自動調整したり、タッチパネルの精度を上げたりしているのも、このエンジンだ。このほか、ディスプレイの色味を光に合わせて変更する「インテリカラー」や、周囲の環境に合わせて着信音の音量を変える「気配り着信」といった機能にも対応している。
中でも筆者が便利だと感じたのは、傾きや揺れを検知して、ディスプレイを点灯したままにしておく「持ってる間ON」。ディスプレイはスマートフォンで最も消費電力が大きなデバイスのため、普段は点灯時間を短くしておきたいが、1画面に情報が凝縮されていると、読んでいる途中で画面が消えてしまう。持ってる間ONなら、そうしたトレードオフを解消できるというわけだ。近い機能はGALAXY S4の売りにもなっているが、こちらはインカメラでユーザーの目を検出する方式。暗い場所や、サングラスをかけているときなどに利用できないのが欠点だ。対するARROWS NXの持ってる間ONは、どのような状態でも効果が出る。ためしに、あえて縦に10画面以上ある長い文章のサイトを読んでみたが、途中で画面が消えることは1回もなかった。
屋外で画面を見るのに役立ったのが、「スーパークリアモード」。これは、照度センサーで屋外にいることを判別し、自動的に輝度やコントラストを調整する機能だ。試しに、晴れた日の昼間、外で使ってみたが、画面が非常に見やすい。写真はもちろん、細かな文字もしっかり読めた。
もう1つ忘れてはいけないのが、富士通端末の代名詞でもあるセキュリティ機能だ。ARROWSシリーズおなじみの機能だが、ARROWS NXでは、アプリの通知まで非表示にできる。LINEなどの新着メッセージが届いたことを、隠せるというわけだ。プライバシーモードを解除する際も、指紋を登録しておけばパスワードやパターンを入力する必要がない。LINEをはじめとするソーシャルサービスで浮気がばれ修羅場になる――そんな話を耳にすることも多くなったが、見られたらまずいメッセージをやり取りしている人には必須と言える機能だろう(が、筆者は特に必要としていないことも、念のためつけ加えておきたい)。アプリケーション自体もシークレットに設定する必要があるため、LINEなどのサービスを利用していない前提を作っておかなければいけないのが唯一のネックだが……。
独自のアドレス帳やメーラーを搭載している点も評価
プライバシーモード対応のアプリには、「NX!電話帳」や「NX!メール」もある。Android標準のアドレス帳や、ドコモのアドレス帳では、プライバシーモードに対応できないため、オリジナルのアプリを用意したというわけだ。ダウンロード対応になるのが難点で、メールについてはspモードメール非対応なのが残念だが、基本操作に関わるアプリをきちんと作りこんでいるのところには好感が持てる。個人的には、ドコモのアドレス帳がイマイチ使い勝手がよくないと思っている上に(しかもなぜかバッテリーをムダに消費していることがある)、Android標準のアドレス帳も使い勝手の点でやや難がある。こうした部分をメーカーが作り込むの大歓迎だ。
ただ、標準アプリをきっちり開発するのであれば、スケジューラーにも手を入れてほしかった。ARROWS NXに搭載されている予定表は、Android標準のもので、これが非常に見にくい上にフルHDの解像度を生かし切れていない。月表示にすると予定の詳細が一切分からず、予定のあり、なしが分かる程度だ。もう1つのスケジューラーであるドコモの「スケジュール」アプリも、スケジュールの同期はできるが、タイムゾーンの設定や公開・非公開の設定ができず、Google カレンダーと完全に連動していない時点で、筆者にとっては利用価値が低い。
メディアプレーヤーもドコモ標準のもの。正直、これらのアプリのデザインが、端末にマッチしていない印象を受ける。キャリアサービスの中には便利なものもあり、すべてを否定するわけではないが、アドレス帳やメディアプレーヤーといった端末のコンセプトを大きく左右するアプリまで統一してしまうのは、少々乱暴なように思える。
例えば、アドレス帳ならクラウド機能だけを抜き出して、メーカー標準のアプリに組み込むという形もあるはずだ。スケジューラーも同様で、メーカーが作ったものにキャリアのアカウントを読み込めればいい。実際、Facebookのアカウントとスケジューラーを連携できる端末は、ほとんどがそのような作りになっている。docomo Palette UIも全否定はしないが、やはりすべての端末で“顔”とも言えるUIが同じになってしまうのは正直味気ない。ARROWS NXのレビューではあるが、ドコモにもこうした点は改善してほしいと感じている。
最後に特筆しておきたいのが、バッテリーの持ちだ。ARROWS NXは3020mAhの大容量バッテリーを搭載しており、消費電力を削減する技術として「NX!エコ」に対応している。ドコモは夏モデルで全機種45時間以上の実使用時間を掲げているが、実際使ってみると、確かにバッテリーが持つ。筆者はSNSやメールを多用するため、どの端末でもキャリアやメーカーが想定する実使用時間は下回るが、ARROWS NXなら、朝から夜まで充電しなくても問題なく使えそうだ。少なくともレビューのために試用した間は、バッテリーがみるみるうちに減っていくということはなかった。ここまでバッテリーの減りが緩やかなら、NX!エコなしでも長時間運用できそうだ。
短い期間ではあるが、ARROWS NXを使ってみて感じたのは、いい意味で期待を裏切られたということだ。基本中の基本だが、動作が安定していて、バッテリーの持ちもいい。カメラの画素数など、数字を追い求めてしまったところは少々残っているものの、ARROWS NXは、以前のARROWSのような“スペックだけが突出した端末”ではなくなった。その上で改めてヒューマンセントリックエンジンで実現した各機能は、人気のグローバル端末と比べても一歩先を行っている。ソフトウェアやUIにはまだ粗削りな部分はあるが、普段使いでの不満はほとんど解消された。このレベルの端末を出し続けられれば、ARROWSシリーズの名誉挽回も果たせそうだ。
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