モバイルで2016年度末までに100万ユーザーを目指す――新生ビッグローブの戦略
4月1日に社名を変更したばかりのビッグローブが事業方針を説明。VNO(バーチャルネットワーク事業者)として、光回線、モバイル、公衆無線LANを今後も提供していく。ウェアラブル端末を開発するなど、価格以外の強みも模索している。
ビッグローブが4月8日、事業方針説明会を開催し、代表取締役社長の古関義幸氏が今後のロードマップを説明した。
同社は、4月1日に「NECビッグローブ株式会社」から「ビッグローブ株式会社」に社名を変更したばかり。「新しいスタートを切ることができた」と古関氏。新生ビッグローブの新しいコンセプトは「未来、つながる」で、「人の心と心をつなげる」ことを目指す。その際に重要になるのが「サービス」「ネット接続」「端末」の3つ。中でも重要なのがネット接続だ。
ネット接続は「光回線」「モバイル」「Wi-Fi」という3つの種類があるが、光回線はNTT東日本やKDDI、モバイルはNTTドコモやUQコミュニケーションズ、Wi-Fi(公衆無線LAN)はワイヤ・アンド・ワイヤレスやソフトバンクテレコムから回線を借りており、「VNO(Virtual Network Operator:バーチャルネットワーク事業者)」としてサービスを提供している。
ビッグローブは、サクサク(光回線)、どこでも(モバイル)、かんたん(Wi-Fi)なサービスの提供を目指すとしている。
まずは光回線について。ブロードバンドの契約数は3579万件で、携帯電話の1億5325万件よりも少ないが、総トラフィックはブロードバンドの3356Gbpsに対して、携帯電話は586Gbpsと差をつけている(いずれも2013年12月の総務省調べ)。「LTE-Advancedがスタートしたら、光回線がなくなってしまうのでは? という意見もあるが、それは全くないと思っている。もっとサクサク(ネットを使い)、もっと動画が見たいなら、この回線は非常に重要」と古関氏は話す。
ビッグローブのブロードバンドサービスの利用者は、2013年に303万人を突破。利用者数のシェアは、OCN、Yahoo!BB、au one netに次ぐ8.4%を記録している。古関氏は「1Gbpsの回線をもっと広げたい。今年度は大きく進めていく」と意気込んだ。
モバイルではMVNOとして、ドコモ回線を利用した「BIGLOBE LTE・3G」を主なサービスとして提供している。世界各国のMVNOの契約シェアを見ると、北米が10%、欧州が11%、香港が8%、豪州が14%であるのに対し、日本はわずか3%という調査結果も出ている。ビッグローブもBIGLOBE LTE・3Gをイオンリテール店舗やヨドバシカメラ、Amazon.co.jpや自社のネット販売、電話での販売を行い、販売網の拡充に努めている。
古関氏は、2013年11月に発表した「エントリープラン」が「非常に好評だった」と手応えを話す。エントリープランは、当時は933円(税別)で毎月1Gバイトまで通信できるプラン。速度制限をしておらず、理論上は下り最大150Mbpsの通信を利用できる。4月1日からは900円(税別)に値下げをし、さらなる契約獲得を目指す。
月額2776円(税別)でBIGLOBE LTE・3G、スマートフォン(AQUOS PHONE)、公衆無線LANをセットにした「Wi-Fiほぼスマホ」も好調だという。コンシューマ事業部長 海老原三樹氏は「2月に発売してから、数千台規模で、目標としている台数よりも売れている。当初ロットは1〜2万台を想定していたが、ちょっと上振れしている」と手応えを話す。端末の拡充にも意欲的だ。海老原氏は「AQUOS PHONEを使ったのは、電池の持ちやスペックなどで、お客さんのニーズに応えたいと思ったから」と話し、一定のスペックを満たすことが重要との姿勢を見せた。
ほぼスマホでは、050番号のIP電話サービスを利用できるが、一方で090番号を使った音声通話のニーズも高い。これに応えるべく、7月に音声通話サービスも提供する(→ビッグローブ、090番号が使える音声通話サービスを7月に提供 MNPにも対応)。
また、BIGLOBEのSIMを挿したスマートフォンやタブレットを対象にした「モバイル機器補償ライト」を、4月23日から提供する。自然故障、水没、破損時などに、最大3万円の修理代金を補償する。月額300円(税別)で、年2回まで適用できる。
「(ビッグローブの)モバイルの利用者は20万人がちょっと欠けるくらい。それを2016年度末までに100万人にしたい」と古関氏は意気込みを話した。
Wi-Fi(公衆無線LAN)については、より便利に使ってもらうべく、Wireless Broadband Allianceが策定した「Next Generation Hotspot(NGH)」の導入を目指す。この規格が導入された公衆無線LANでは、SIMを自動で認識することで、通信状況を見ながら、Wi-FiとLTEを自動で接続してくれる。NGHを使えるようにするためのソフトウェア「オートコネクト」も開発しており、ビッグローブのスマートフォンやタブレットで使えるようになる見込みだ。
「(お客さんは)LTEやWi-Fiでつながっていようが関係ない。サービスを使えることが大事なので、その場所で適した回線を自動で提供できるようにしたい。駅にいるときはパブリックWi-Fi、それ以外はLTE、というのが少しずつできるようになってきた。1つのデバイスで、どこにいてもサクサクとつながり、接続先を考えずにつながる世界を作りたい」(古関氏)
現時点における競合他社との競争は「価格とキャンペーンになってしまっている」(古関氏)が、同氏が披露したウェアラブル端末(→ビッグローブ古関社長、3G/Wi-Fiを内蔵したウェアラブル端末を披露)は、他社との差別化を図る一手でもある。「キャッシュバックや何カ月無料などのキャンペーンをすると、事業にならない。心をつなぐインターネット、他社にないサービスを出さない限り、私たちは生きていけない。単にウェアラブル端末を出して、後はお使いくださいということにはしたくない。それにキラーサービスを載せ、オールインワンで提供することで、価格競争に陥らずに商売できると考えている」(同氏)
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