格安SIMで使える/使えないメールサービス:はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第9回
格安SIMでは利用できるサービスには制限があるが、キャリアメールもその1つ。今回は格安SIMでメールを運用する方法を解説したい。
格安SIMでキャリアメールを使えない理由
前回の連載で解説したように、MVNOの格安SIMでは使える機能に一部制限がある。キャリアメールも、その1つだ。MVNOは、NTTドコモなどの大手キャリアから回線を借りているだけで、サービスの提供主体だ。言い換えると、MVNOは基地局などを持っていないだけで、キャリアの1つであることに変わりはない。そのキャリアのユーザーに向けたサービスとして提供されている回線貸し出し元のキャリアメールをMVNOで使えないのは、ある意味当たり前ともいえるだろう。
もちろん、MVNOの中には、独自のメールサービスを提供している会社もある。例えば、BIGLOBEやhi-ho、So-netのように、もともとプロバイダーとして事業を行ってきたMVNOは、メールアドレスをセットにしていることが多い。例に挙げたBIGLOBEでは、月額料金に「ベーシックコース」の料金が含まれている。これは、プロバイダーとしてのサービスを受けるための料金で、メールアドレスも利用可能だ。逆に、すでにBIGLOBE会員の場合、ベーシックコース分の200円(税別)が、月額料金から割り引かれる。
エントリープラン | ライトSプラン | ライトMプラン | |
---|---|---|---|
BIGLOBE非会員 | 900円 | 1505円 | 2838円 |
BIGLOBE会 | 700円 | 1305円 | 2638円 |
※固定通信用にBIGLOBE接続サービスを利用しているような場合、月額料金が200円安くなる。見方を変えると、この200円に、メールアドレスなどのサービスが含まれているということだ。 |
GmailとiCloudメールを利用する上での注意点
また、格安SIMとスマートフォンの組み合わせなら、プラットフォームが提供しているメインのメールアドレスにしてしまう手もある。Androidはアカウント作成時にGmailのアドレスが自動で作られる。iOSも同様で、iCloudメールを利用できる。これらは無料で、どちらもプッシュ配信に対応しているため、メールが届くとすぐに端末に通知が来る。なお、iOSでGmailを使うときは、専用のアプリが必要。無料のGoogleアカウントのGmailだと、「メール」アプリに設定してもプッシュでは通知されない(ビジネス用のGoogle Appsなら通知は可能)。逆にiCloudメールをAndroidに設定することも可能だが、同じくこの場合もプッシュは利用できない。そのプラットフォームが提供しているメールを使った方が、便利というわけだ。
ただし、これらのメールは、キャリアメールとまったく同じように使えるわけではない。プッシュ通知に対応しているMVNOのメールもあるが、そうでないケースもあることがその1つ。また、認証用にキャリアメールを必要とするサービスもまだまだある。一例をあげると、Googleの2段階認証も、日本ではキャリアメールか音声にしか対応していない。最近ではGmailを認証用に使えるサービスも増えているが、キャリアメールと完全に同じになるわけではない点には注意したい。
キャリアが行っている、迷惑メール対策が支障になることもある。現在では、各社とも自動で迷惑メールを判別するフィルターを導入しているが、以前はこうしたサービスがなく、ケータイやPHSからのメール以外を一律で弾く設定にしている人は多い。そのため、上記のようなキャリアメール以外からキャリアのアドレスにメールを送ると、PCからのメールと判定され、相手に届かないケースがある。相手に迷惑メールフィルターの利用を勧めたり、例外として自分のメールアドレスだけを受信するように設定してもらったりすれば解決する話だが、かなりの手間がかかる。相手のスキルによっては、設定を変更できないという恐れもある。
ここまで述べてきたように、キャリアメールを使えないデメリットはあるものの、スマートフォンでのメッセージの主流は、LINEやFacebookメッセンジャーのような、サードパーティ製アプリに移りつつある。よく連絡を取る相手はほぼスマートフォンというような場合は、これらのアプリをインストールしておけば、連絡に困ることはなさそうだ。これらのアプリはプッシュにも対応しているため、リアルタイムなやり取りにも向いている。
SMSを活用するメリット
電話番号を知っている相手に送るメッセージの手段としては、SMSも便利だ。SMSは2011年に相互接続しており(→SMSのキャリア相互接続、7月13日に開始――送信料金の値下げも)、異なるキャリア同士で送受信できるようになった。MVNOにも、これは当てはまる。相手がSMSの受信拒否などの設定をしていない限り、電話番号だけで送信でき、確実性が高い手段と言えるだろう。ただし、料金が1通あたり3円かかる。基本料金が追加でかかるため、わずかながら料金が上がる点にも注意したい。
ちなみに、SMS対応のSIMカードには副次的なメリットもある。端末の中には、SMS非対応のSIMカードを挿すと、電波のマークが正常に表示されないものが存在する。この場合、いつもよりバッテリーの消費量が増えてしまうこともある。特に、電話まで利用することを想定したスマートフォンにデータ通信のみのSIMカードを挿すと、こうした問題が起きやすいようだ。端末によって状況が異なるため一概にはいえないが、機種を変えながら使うことを考えると、SMS対応のSIMカードにしておいた方がいいだろう。
関連記事
- 「はじめての格安SIM&SIMフリースマホ」バックナンバー
- はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第8回:MVNOのSIMカードでテザリングやおサイフケータイは利用できる?
MVNOが販売しているSIMカードは、ドコモ回線に対応したものがほとんどだ。ドコモのLTEスマホはテザリングが利用できるが、MVNOが提供するSIMカードでも同様に利用できるのだろうか。 - はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第6回:格安SIMを使えるドコモ端末の買い方と注意事項
格安SIMカードを販売しているMVNOは、ドコモから回線を借りていることが多く、SIMロックフリーでなくても、ドコモの多くのスマートフォンでSIMを使える。今回はそんなドコモ端末の買い方を紹介する。 - はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第5回:Nexus 5、iPhone 5sから1万円台の格安モデルまで――日本で購入できるSIMフリースマホ
格安SIMを使うには、当然ながら対応するスマートフォンが必要になる。日本ではどんなSIMフリースマホを購入できるのだろうか。主なモデルをまとめてみた。 - はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第4回:SIMを挿してデータ通信を始めるには?――設定手順を確認しよう
通信キャリアのスマートフォンを購入する場合と異なり、MVNOのSIMカードを使ってデータ通信を始めるまでの設定は、自分で行う必要がある。今回は適切なSIMカードの選び方や設定方法を解説したい。 - SMSのキャリア相互接続、7月13日に開始――送信料金の値下げも
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスの4社は、電話番号のみで短い文章を送受信できるSMS(ショートメッセージサービス)の相互接続を7月13日に開始すると発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.