秋田県“ラブホからバスローブ会見”、実は謝罪会見も突っ込みどころ満載だった 危機管理広報のプロが解説(2/4 ページ)

謝罪会見に「バックパネル」は必要ない

 会見場の背景も気になりました。登壇者の後ろには、秋田県の名称やマークが入ったバックパネルが設置されていました。新しい政策やプロジェクトなど、ポジティブな発表であれば問題ありません。むしろ、発表内容と自治体名や企業名を視覚的に結びつけることは、ブランディングとして有効です。しかし、謝罪会見では逆の効果が生まれます。

 今回でいえば、バスローブ姿でのオンライン参加や、不倫相手とラブホテルにいたというネガティブな話題と「秋田県」というブランドを、わざわざ映像の中で結びつけてしまいます。

画像はイメージ(Adobe Stock)

 民間企業の謝罪会見では、背景をできるだけ無地にし、ロゴなどを極力露出させないケースが一般的です。プレスリリース(報道発表)や案内文についても、通常の発表より装飾を抑えたものにすることがあります。

 今回も「秋田県」という名称と、バスローブ、ラブホテル、不倫といったネガティブなワードを、視覚的に結びつけてしまう結果にもなりました。謝罪会見では「何を映り込ませるか」も危機管理広報の一部です。

司会者は登壇者と並べない

 今回、司会者が登壇者と同じ長机に座っていたことも気になりました。謝罪会見における司会者は、謝罪する当事者とは少し異なる役割を担います。記者を指名する、所属と氏名を確認する、不規則な発言があれば制止する、質問が長くなれば整理する、登壇者の説明に不足があればそれを指摘する。つまり、会見全体をコントロールする立場です。

 そのため、登壇者と一緒に並ぶより、向かって左側、いわゆる下手側に立つなど、少し距離を置いた配置の方が適しています。登壇者と並んで一緒に頭を下げてしまうと、会見を制御する人と謝罪する人の役割もあいまいになってしまいます。

重大な会見ほど広報が司会をする

 さらに今回は、司会者が広報担当ではなく、当該部門の職員だったことも気になりました。これだけ全国的に報道される案件であれば、会見運営やメディア対応に手慣れている広報担当者が司会を担当した方がよかったでしょう。

 謝罪会見では、予想外の質問や細かな事実確認が次々に飛んできます。実際、今回も苦情が「SNSにも届いている」という説明に対して「SNSとは具体的に何か」と質問され、回答に詰まる場面がありました。また、知事の受け止めを巡る質問でも、回答に窮する場面がありました。

 こうしたとき、広報担当者が司会をしていれば「詳細については確認の上、後ほど回答します」といった形で、臨機応変に介入することもできます。謝罪会見の司会は、単なる進行係ではありません。全体を制御しつつ、登壇者を守りながら、メディアの納得感や満足度を高められるよう会見を適切に成立させる役割でもあります。

冒頭は「お集まりいただきありがとうございます」ではない

 細かいことですが、冒頭の言葉にも注意が必要です。今回、司会者や登壇者から「お集まりいただき、ありがとうございます」という趣旨の言葉がありました。通常の記者会見なら問題ありません。

 しかし謝罪会見では「このような事態でお集まりいただくこととなり、申し訳ございません」という方向の表現が適切です。記者に来てもらったことへの感謝ではなく「本来なら必要のなかった会見に集まってもらっている」という認識を示すことが重要です。

お詫びが終わるまでは着席しない

 メインの登壇者が冒頭のステートメント(声明)を読み始める際、すぐに着席しようとしたことも気になりました。謝罪会見では、最初の受け止めとお詫びまでは立った状態で行い、「この度は申し訳ございませんでした」と頭を下げてから「それでは、詳細につきましては着座にてご説明いたします」とする方が自然です。

 今回のように一度座り、その後お詫びのために再び立つと、動きとしても落ち着きません。謝罪会見では、こうした所作も「どの程度真摯(しんし)に受け止めているのか」という非言語のメッセージになります。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

この記事の著者

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR