秋田県“ラブホからバスローブ会見”、実は謝罪会見も突っ込みどころ満載だった 危機管理広報のプロが解説(3/4 ページ)

「再発防止策」は必ず聞かれる

 特に準備不足を感じたのが再発防止策への回答です。危機管理広報では「何が起きたのか」(5W1Hの整理)「組織としてどう受け止めているのか」「誰が責任を負うのか」「今後どう防ぐのか」(再発防止策)は基本的な論点です。したがって、再発防止策は想定問答に必ず入れておくべき質問です。

 もちろん、会見時点ですべての対策が完成している必要はありません。それでも、例えば、ミーティングにオンライン形式で参加する場合には、参加する場所や環境について事前に報告する。重要な会議や会見にオンラインで参加する場合には、その状況について事前に上司の承認を得る。そうした具体的な施策も示したかったところです。

 仮に私が対応するのであれば、組織全体でのルール整備には時間がかかるとしても「これまでに同様の事案はありませんでしたが、今回の事案を受け、産業労働部としては、今週から会議へのオンライン参加時の場所や環境を事前に直属の上司に報告し、承認を得るよう、すべての職員に指示しています。さらに、県庁全体でも同様のルールが必要だと考えており、今後、関係部署とも検討していきたいと考えています」など、すでに着手している対策と、今後の方向性を示したと思います。

 まずは姿勢を示すためにも、これくらいは説明できたのではないでしょうか。単に「コンプライアンスを徹底する」だけでは、今回の問題との具体的なつながりが弱く見えてしまい、今回の事態に対する県庁としての受け止めに甘さを感じさせてしまう可能性があります。

質問を受けるときこそメモを取る

 登壇者が質問者を見続け、あまりメモを取っていなかったことも気になりました。これは内容だけでなく「映像としてどう見えるか」という点でも重要です。謝罪会見では真剣な表情で質問者を凝視すると、本人にそのつもりがなくても「にらんでいる」「高圧的だ」と映ることがあります。

画像はイメージ(Adobe Stock)

 質問を聞きながらうなずき、メモを取る。それだけでも「質問をきちんと聞いている」「真摯に受け止めている」という姿勢が映像から伝わります。さらに、一度に2問、3問と質問された場合にも、メモがあれば順番に落ち着いて回答できます。

聞かれていないことまで答えない

 今回、苦情の件数について質問された際、その内訳まで説明し、そこから「SNSとは何を指すのか」という追加質問につながる場面がありました。謝罪会見では、質問には誠実に答える必要があります。しかし、聞かれていない情報まで積極的に開示する必要はありません。

 この場面では、SNSでの苦情がどのような経路で届いたのか即答できず、回答に窮する場面がありました。さらに、回答に窮するあまり、当初は全体での苦情の総数を回答するだけで済んでいたはずが、メール、電話、SNSそれぞれの苦情件数の内訳まで、聞かれてもいないのに答えてしまいました。ある意味、これもメディアの狙いです。

 回答に困らせ、そこから余計な一言を引き出す。記者側からすれば、そこから新しい情報を得ることも取材の技術です。時には、回答者を一定の方向へ導こうとする「誘導尋問」のような質問が投げかけられることもあります。

 もちろん、謝罪会見では質問に誠実に答えることが大前提です。しかし、記者に聞かれたことすべてに、相手の前提や文脈に沿って真正面から詳細まで答えることだけが、誠実な対応ではありません。

 例えば、質問の前提が正しいのかを確認する、答えるべき範囲を見極める、分からないことは「分からない」と回答する、確認が必要なことは「確認して回答する」とする、聞かれていない情報まで自ら付け加えない──会見する側には、そうした冷静な判断も必要です。

 特に回答に窮したときほど、誘導尋問のような質問の術中にはまり、不用意な一言を口にしてしまいやすくなります。だからこそ登壇者には「質問された範囲で答える」という訓練だけでなく、記者の質問に必ずしも言いなりに答える必要はないという意識も持っておくべきでしょう。そのためにも、平時から模擬謝罪会見などを行い、厳しい質問や誘導的な質問への対応をトレーニングしておくことが重要です。

すべての質問にその場で答える必要はない

 知事の受け止めを問われた際にも、回答にかなり苦慮している様子がありました。しかし、分からないことを無理に答える必要はありません。「現時点では知事に直接確認しておりません」「その点については、現在手元に情報がありません」「確認の上、必要があれば改めて回答します」で構いません。

 謝罪会見では「答えられない」と「答えたくない」は違います。分からないことを無理に答えようとすると、不正確な発言や余計な発言につながり、かえって新しい問題を生むことがあります。

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