秋田県“ラブホからバスローブ会見”、実は謝罪会見も突っ込みどころ満載だった 危機管理広報のプロが解説(4/4 ページ)
ポジティブな報道の直後ほど“脇を締める”
そして今回、もう一つ興味深く感じたのが、この問題が起きたタイミングです。問題となったオンライン会見が行われたのは8月6日午後。その翌日の7日には、秋田県でのAIデータセンター構想が日本経済新聞の朝刊一面トップで大きく報じられました。
また、同じ時期に他の新聞やメディアでもこの構想が相次いで取り上げられ、社会的な注目度の高いプロジェクトだったことがうかがえます。秋田県にとっても、担当者にとっても、大きな達成感につながるプロジェクトだったのではないでしょうか。
担当者には会見のあった6日当日から、多数のメディアから問い合わせが寄せられていたことと思います。取材や問い合わせへの対応が続き、担当者自身が大きな反響を実感する状況にあったことは想像に難くありません。
しかし、実はそういうときほど危ない。これだけ大きく、社会的な注目度も高いプロジェクトを手掛けているときほど、担当者だけでなく、組織全体で緊張感を保つ必要があります。大きなプロジェクトが動き、社会からの注目が高まる局面では、その担当者や組織に対するメディアの関心も高まり、ちょっとした言動が思わぬ形でニュースになる可能性も高まります。
広報担当者は、メディアに取り上げてもらうだけでなく、事業やプロジェクトへの注目が高まったときに、事業責任者や関係者へ、「こういうときこそ脇を締めましょう」と伝える役割も担っています。
せっかく積み上げたポジティブな評価や報道が、ほんの一つの不用意な行動によってかき消されてしまう。今回の事案は、そうした意味でも広報担当者にとって人ごとではないケースだったと感じました。
評価できた「毅然とした姿勢」
一方で、今回の対応で評価できるところもあります。職員に対して懲戒処分を行ったことや、問題となったプロジェクトについて、当該職員を外した体制で進める姿勢を示したことです。不祥事では、組織が当事者を過度にかばっているように見えると、別の批判を招きます。
今回、組織として問題行為を容認しない姿勢が比較的明確に示されていたことは、評価できるポイントです。ただし「今後プロジェクトに関わるのか」という質問への回答には、一時、あいまいさが残りました。
こうした質問では「今後、関わることはありません」、もしくは「現在検討中です」など、組織としての現時点の立場を明確にした方が良かったでしょう。「少なくとも6カ月間は関わりません」という趣旨の回答は、少しあいまいで危険に感じられました。
その後、上司が打ち消すコメントをしたことは有効でしたが、謝罪会見であいまいさはご法度です。あいまいなコメントをするくらいなら「現在検討中です」としておいた方が無難なこともあります。中途半端な受け答えにならないよう、こうした質問も想定問答で十分に煮詰めておきたいところです。謝罪会見では、あいまいな余地を残すほど、そこが次なる“攻め口”になる場合があります。
謝罪会見は当日だけを見てはいけない
今回の会見から改めて感じるのは、謝罪会見の成否は、登壇者の受け答えだけで決まるものではないということです。
会場をどう作るのか、誰を登壇させるのか、誰が司会をするのか、どこまで事実確認をしてから会見するのか、どんな質問を想定しておくのか、答えられない質問にどう対応するのか、再発防止策など、今後に向けた施策については、どこまでコメントできるのか──その一つ一つが、最終的な報道のされ方につながります。そして何より重要なのは、ネガティブな会見を何度も開かなくて済むよう、最初の会見までに可能な限り事実を確認しておくことです。
危機管理広報では「早く説明すること」が重要です。しかし、早ければ早いほどいいわけではありません。早さを重視するあまり、何度も会見を開く必要があっては本末転倒です。「早さ」と「正確さ」の両方をどう確保するか。今回の秋田県のケースは、その難しさを改めて考えさせる事例だったと思います。
そしてもう一つ、大きな報道を獲得したときほど、広報とは「攻め」と「守り」の両輪であることを意識すべきです。企業であれ、行政機関であれ、注目度が高まれば高まるほど、その組織や担当者に対するメディアや社会からの目線も厳しくなります。民間企業では、広報部門を含めた危機管理体制の整備が進んできています。
一方、自治体では、まだ十分とはいえないケースも少なくないように感じます。今回のような事案は、秋田県に限った話ではありません。どの地方自治体でも起こり得ることです。地域の魅力を発信し、メディア露出を増やす「攻めの広報」に取り組む自治体は増えていますが、同時に「守りの広報」にも目を向けるべきでしょう。
日頃から危機管理広報の体制を整え、担当者のスキルを高め、模擬会見などの訓練を重ねておく。そうした平時の備えこそが、万が一の事態が起きたときの傷を最小限に抑え、地域や組織の信頼を守ることにつながります。
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