米Microsoftのレイ・オジーCTO(最高技術責任者)は3月7日、同氏の次なる大構想を披露した。Web上の情報を転送して利用するための仮想クリップボードだ。
同氏が提唱する「Live Clipboard」は、Webサイト上のすべての情報をコピーし、ほかのサイトに張り付けたり、ソフトウェアプログラムに入力して処理させたりするための仕組みだ。
この構想はMicrosoftにとって極めて重要だが、IT業界全体にとっても同様だ。オジー氏はMicrosoftの新しいソフト販売戦略のブレーンだからだ。
同氏が考えていることは、Microsoftが「Live」戦略をどのように実行しようとしているかを理解するための大きな手掛かりになる。
この戦略は、Microsoftのパッケージソフトの機能を拡張する同社のサービスを消費者と企業に販売することを目指すものだ。このサービスはWebを利用したオンデマンド環境で提供される。
オジー氏のクリップボードのアイデアは、幾つかの点で斬新だと観測筋は指摘している。
特に斬新なのは、クリップボードが金融サイトの株価情報など、Webページ上の常に変化するデータを扱えるとされている点だ。
さらに、オジー氏はクリップボードを、2つの異なるコンピュータ機能を融合させるユニークなプログラムのように、サイトとやり取りを行って未知の情報に出会うにつれて自己学習するシステムとして説明した。
また、もう1つ注目されるのは、オジー氏が、クリップボードはクリエイティブ・コモンズのライセンスで提供されると述べたことだ。このライセンスは基本的に、Microsoftとは無関係な団体が定めた規約だ。
通常、Microsoftはこうした場合には、同社が定めたライセンスを適用している。
このクリップボードはさまざまな点でユニークだが、オジー氏のかねてからのテーマに関連している。同氏はMicrosoftが推進するSimple Sharing Extensions(SSE)の開発の取り組みをけん引しており、SSEは今回の構想と結びついているようだ。
SSEは、複数のアプリケーションがRSSやOPML(Outline Processor Markup Language)など一般的なインターネットパブリッシング方法でデータを共有できるようにするために必要な最小限のソフトウェアファイル拡張を定義することを目的としている。
「Webは独創的なハッキングによって進化してきたが、それはそれらのハッキングが有益なものだったからだ」とオジー氏は7日、サンディエゴで開催のO'Reilly Emerging Technology Conferenceで語った。
「だが、Microsoftがこのクリップボードを単独で実現することはできない。このクリップボードは、多くの人が取り組み、使用し、データ形式について合意することによって実現される」(同氏)
観測筋の1人は、その壮大なビジョンの実際的な目的をつかみかねている。
「この技術が私のようなエンドユーザーのためにどんな問題を解決してくれるのか具体的に知りたい」と「ライアン」氏はデイブ・ワイナー氏(RSS、OPMLの提唱者)のブログへのコメントで述べている。「考えつく範囲で一番いい使い方は、予定表のデータやブログのフィード、イベント情報を移すことだ」
オジー氏はプレゼンテーションの中で、携帯電話のGPS機能とライブクリップボードを組み合わせ、オンライン地図上で友人の位置を特定するという使い方を紹介した。
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