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(1)アピール不足だったかもしれない──自主規制の現場同人誌と表現を考えるシンポジウム(4/5 ページ)

» 2007年05月21日 07時18分 公開
[小林伸也,ITmedia]

川島国喜さん*6メロンブックス) 普通の本屋で売っている商業誌、それに対する同人誌という個人出版的なものを取り扱うに当たって、どのような感じで18禁的なものに対応していくのかということですが、弊社の基準では、明確な基準としては、性器描写に関してぼかしや修正が入っていれば基本的にはOKということで対応させて頂いております。「こういう場合はこうする」的なものは、ノウハウとしてきちっとガイドラインとして10項目くらい設けておりまして、作品が来た段階でガイドラインに照らし合わせて、18禁、一般に分けさせていただいています。

 武川さんがおっしゃってましたが、印刷会社で18禁に関してはきちっと対応してらしてまして、書店では対応済みのものが入荷してくることになるので、記憶の中では今まで大きな問題になったことはないです。ですがそういう現状に甘んじることなく、同人誌を発信していく書店として、今後も社会の動きに留意して、ガイドラインや自主規制的なものを随時深めていっているところです。

市川孝一さん*7コミケット準備会COMIC1準備会) パンフレットにコミックマーケットの「アピール」の抜粋*8を載せてあります。これは受かったサークルさんも、落ちたサークルさんも、全サークルさんに向けて送っている文章です。こちらに「性器の露骨な描写」とありまして、準備会では「性器の露骨な描写」に修正を入れてもらうように心がけております。いろいろな修正の仕方がありますが、準備会としてはこれを基本として修正してもらうように指導しております。

 印刷所組合さんとかいろんなところから話は来ますが、修正する場合はこれを、という話にしています。読んでもらえれば分かりますが、いろいろな修正の仕方があったり、刑法175条だけでなく、児童ポルノ法とかもあります。ですので、一度こちらを読んでもらいまして、どういう風に修正していけばいいのかを確認してもらえばと思っています。

 同人誌即売会というものは対面販売、つまりサークル1つ1つが店子であると、お店でありますと、強くわれわれ言っております。対面販売ですから、参加者さんが来て、その人が18歳以上に見えるか以下に見えるか、その人の主観もありますが、どう見ても18歳以下だなと思った方には頒布をやめてくださいと促しております。ゾーニングを個々のサークルさんが守っていただくことによって、18歳以下の方には頒布しない、見せないということもわれわれが訴えているところであります。

 実際に東京ビッグサイトの方や東京都の方から「どういう風に行ってますか」と聞かれた時にこの話をしています。「性器の露骨な描写」については修正してますよ、サークルさんにはしっかりと、相手を見て、頒布してもらっておりますと。この2つを基準に考えてもらうことをきょうも話をしていきたいと思っています。


*6 川島国喜((株)メロンブックス) 警視庁を退職後、さまざまな職歴を経て現在に至る。現在、同人管理部営業課課長。同人販売に携わり10年、同人SHOPの黎明期から、現在に至るまでを肌で感じてきた。

*7 市川孝一 (コミックマーケット準備会COMIC1準備会) 1980年代より、コミケットを中心に、さまざまな同人誌即売会の運営に携わり、2006年9月の米沢嘉博の代表退任に伴い、コミックマーケット準備会共同代表となる。また、2007年4月より始まったCOMIC1準備会の代表でもある。

*8 当日のパンフレットに掲載された「コミケットアピール71」の該当箇所は、「(1)『性器の露骨な描写』があるものをワイセツ図画とし、持ち込み、頒布は禁止する。(2)性表現の基準は『商業誌』レベルのものとし、ワイセツ図画に該当する画の部分には、修正を行う。(3)修正は白抜き、黒ベタ、濃いトーンなどで行う。薄いトーン、さらに強調される形での修正は不可」──など。

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