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「イオン風」でCPUを冷やす新技術

» 2007年08月16日 13時03分 公開
[ITmedia]

 CPUの冷却を大幅に向上させるかもしれない新技術「イオン風エンジン」を、米パーデュー大学が披露した。

 同校の研究者は、この技術が熱伝達率(冷却率を表す)を250%向上させることを示した。研究者は「われわれのアプローチは冷却率を40〜50%高めるだろう。250%は尋常でない」と述べている。

 この実験で使った冷却デバイスは、プラスの電荷を帯びた陽極を、マイナスの電荷を帯びた陰極の約10ミリメートル上に配置している。デバイスに電圧をかけると陰極が陽極に向かって電子を放出し、電子は空気の分子と衝突してプラス電荷のイオンを生じる。プラス電荷のイオンは陰極に引きつけられ、これが「イオン風」を発生させる。

 この冷却デバイスをコンピュータCPUの上に取り付けると、イオン風がCPUの表面の空気の流れを増やす。赤外線イメージングで測定したところ、このデバイスはおよそセ氏60度の熱を35度程度にまで下げた。また従来型のCPUファンと組み合わせて使った実験では、CPU表面の空気の流れを増やしてファンの効率を高めたという。

 従来の冷却技術は、空気が物体の上を流れる際にその表面に最も近い空気分子が動かないという「ノースリップ」効果のため、CPU表面の空気の流れが抑えられる。だが、イオン風の効果と従来のファンを組み合わせれば、CPU表面に近いところで空気の流れを起こして、この問題を解決できるかもしれないと研究者は述べている。

 次の課題は、この技術をミリメートルレベルからマイクロメートルレベルに小型化し、頑丈にすることだという。これが実現できれば3年以内にコンピュータに搭載できる可能性があり、もっと発熱が少なくて薄いノートPCの設計に役立つかもしれないと研究者は述べている。

 この成果は「Journal of Applied Physics」の9月1日号に掲載される予定。この研究はIntelから資金援助を受けている。

イオン風エンジンを載せたシリコンウエハーを手にしている研究者

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