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2008年07月22日 08時29分 UPDATE

座談会 UGCの可能性を考える(後編):“公認MAD”は流行るのか 2次創作のこれから (3/3)

[大塚純,ITmedia]
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 僕が書いてるノンフィクションの世界も、結局、何かしらの事実とかいろんなものがあって、それを下敷きにして書いていかなきゃいけないから、ある意味、何かの事実を2次利用して書いてるんですよね。だから、自分の書いたものが翻案されたり、形を変えて2次利用されたって、いちいち許可なんかいらないし、そんなものは当たり前だと思っている。その辺の感覚というのは、ジャンルによって違うのにもかかわらず、著作権法では全部同じレベルで保護されちゃうんですよね。そこに混乱の一番の原因があるんだと思います。

栗原 音楽だって、クラブ系なんかはリミックスされてなんぼの世界だし。

吉川 音楽業界はどうなんですか? やっぱり抵抗は強いんですか?

太田 まぁ、公式にはやっぱり、そういうコメントになりますよね。どうしても、それは、やっぱりそうなっちゃうと思いますよ……。

吉川 で、やっぱり動きはないんですか? 公式にはそうなるのは分かるんですけど(笑)。

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太田 特にね、またソニーって慎重な会社なんですよ(笑)。

津田 裏を返すと、ソニーが動けば他も動きますよというところはありますよね。たぶん、質の問題も大きくて、ポピュラリティにしても。ニコニコ動画みたいなUGCの中から、本当にすごい才能が育ってきて、権利とかにしても自由にやれよっていうような意識のまま、ソニー・ミュージックと、じゃ、こういう自分達の望む契約関係でやりましょうよみたいな例が1つ出てくるだけで、変わってくる気がしますけれど。

 まだ成功事例というのが、本当のポピュラリティーを持った形での成功事例までいってない、とういのがすごくあると思うんですよね。アメリカのMySpaceなんか、それが割と普通に出てきちゃってるので、これがどう日本で起きるかですよね。今は良くも悪くも、オタク系が強いじゃないですか。オタクの強さというのは当然あるんだけれども、そのオタクの中ではすごく盛り上がるけれども、じゃ、どれだけ一般性があるのかという話になってしまう。

吉川 会社の人と飲んでニコニコ動画を見てると話すと、いまだに違法コピーを見る場所でしょって言われますからね(笑)。いや違うんだけれどと、そういう楽しみじゃなくてと言っても分からない。

津田 やっぱりニコニコ動画ってすごいと思いますよ。一時期からテレビ番組のデッドコピーは全部削除する方針に切り替えて、完全とはいかないまでも随分と健全化された。最初はテレビ番組目当ての人がいっぱい来てる中で、UGC的なコミュニティーが育っていって「もうこっちでいいじゃん」って切り捨てるタイミングとか、その辺は絶妙だなと思います。

吉川 うまいですよね、あれは。よく考えてる。

UGCの未来

――今後、UGCをとりまく環境はどうなっていくと思われますか?

吉川 コミケから漫画家になった人が出たように、UGCをきっかけにして、映像なり音楽なりの才能がメジャーな場所に出るのじゃないかな。その流れは止まらないと思うんですよ。それはいいことだと思うし、そうなってほしい。逆に、それすらも叩くようなら、それは良くないので、ネット世論を改めないといけないような気がしますね。

津田 匿名性のレベルが変わるだけで、全然違うような気がしますけどね、そのへんは。

太田 ニコニコ動画で絵を公開していた人の作品が絵本になった(「ニコニコ動画で、出口が見付かった」 絵描き兼開発者・24歳)らしいんですけど、そういう心温まる話から、もっともっと大きい話になっていくということなんですよね。

津田 「やわらか戦車」とかももともとはそうですからね(やわらか戦線、異状アリ? Flashアニメの商品化に企業続々)。

 場はこれからも出てくるし、その場のあり方は洗練されていくんだと思うんですよ。その時に1番ネックになるのは「契約」だと思っていて、契約とか、慣習とかそういうものでクリエイターが縛られないようになればいい。

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 日曜大工みたいな形で、プロとか、プロ直前ぐらいにあるクリエイターが、お金を稼ぐための創作と、そうじゃなくて、休みの土日はニコニコ動画みたいな場で、稼ぎとは関係ないところで創作するみたいな。「契約上、ソニーさんにはちょっと内緒でやってんだよね」じゃなくて、どちらも両立できて、それがちゃんと両方とも経済的・承認欲求的に成立するような形になっていけばいいなと思います。

栗原 私としては、やはり最初にも言ったように、こういうUGC的な世界が、今の制度と全然合っていないので、それをなんとかして変えていかなければいけないと思うんですけれど、そういう時に、消費者的な視点がいると思うんですよね。「消費者」というのは、作品を楽しむ人という意味での消費者でもあるし、UGCのクリエイター側としての消費者でもあると思うんです。どうしても消費者の声というと、ちょっと極端に走りがちなので、なにかそのへんを上手く整理して、建設的な議論をできる人達が必要だと思っていて、そういう点では、MIAU(Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユーザーの会。津田さんが代表を務め、著作権問題を含むさまざまなネット上の問題に取り組んでいる)に大変期待しています。

津田 いやぁ、いまだにコンテンツ業界から「敵認定」されてますからねぇ。せめて陰口であってくれれば僕も気が楽なんですが(笑)。でも、ちゃんと説明すれば話を聞いてくれる人もいるので、地道にやっていくしかないですね。

栗原 決して敵じゃないですよね、長い目で見れば。

津田 単なるフリーライダーとか、コンテンツはタダで見れればいいという人は、僕らMIAUだって相手にしようとはまったく思ってないです。ちゃんと対価を払うことで、使いやすい便利な環境というのがあるのだったら、ちゃんと作品にはお金を払っていきますよという、そういう人は、日本人って真面目だから間違いなく3〜4割はいるわけですよ。そういう人たちの意見で最大公約数が成立するところをちゃんと主張して、バランスを取っていきましょうよと。既存のコンテンツ業界の人はネットに対して「分からない」という感覚が強すぎて、すごく極端に悪いところばかり見てる気がするので、その辺を解きほぐせればいいんでしょうけれど……。

栗原 今は極端なことを言う人の声が大きいので、そういう意見が主流のように見えてしまうんですが、たぶん、そうではないですよね。

 ――この座談会は6月30日に行われ、7月2日、ドワンゴが権利者申し入れのあるMAD作品をニコニコ動画から削除すると発表。7月4日に「ニコニコ動画(夏)」として、2次創作向けの素材活用のポリシー「ニコニ・コモンズ」が発表されている。UGCをとりまく環境は、激しい変化を続けている。

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