理化学研究所と富士通は7月17日、次世代スーパーコンピュータのシステム構成をスカラー単独に決めたと正式発表した。NECと日立製作所の撤退でベクトルとの複合システムは断念し、理研と同社で予定通り2012年を目標に10P(ペタ)FLOPSを達成する新システムの完成を目指す。
スカラー単独とした新システムは、計算ノードが別ノードのメモリを直接参照できない「分散メモリ型並列計算機」とする。プロセッサは、富士通が設計した次世代SPARCプロセッサ「SPARC64 VIIIfx」を採用。45ナノメートルプロセスで製造され、1基当たり8コアで処理性能は128GFLOPSと、現時点で世界最高速のCPUだとしている。誤ったデータを検出して訂正するエラーリカバリ機能を備え、運用性の向上に寄与するという。
計算ノード間を接続するネットワークは、2ノード間の結合を拡張して全体を構成する「直接結合網」とする。直接結合網はシステム規模の自由度と拡張性が高い反面、耐故障性や運用性に難点があるが、新システムでは「多次元メッシュ/トーラス」と呼ぶ結合方式を採用し、自由度・拡張性と耐故障性・運用性を両立させるという。
OSはLinuxを採用し、標準規格に準拠したコンパイラや標準的な通信ライブラリを備える。スカラー単独構成としたことで、現在ベクトル型で利用しているアプリケーションを効率的に実行できるようにする書き換えなどの調整が必要になるため、理研は関係機関と協力してベクトル型ユーザーに充実した支援を提供するとしている。
次世代スーパーコンピュータは、世界最高速の奪還を目指し、約1150億円を投じて1秒間に1京回(10PFLOPS)の計算が可能な「京速計算機」の開発を目指す国家プロジェクト。計算システム本体は神戸市に設置される。
当初は独自プロセッサによるベクトル型と、汎用プロセッサによるスカラー型を組み合わせた複合システムとして計画された。だがベクトル部を担当していたNECが業績不振を理由に撤退。NECと契約する形で参加していた日立も離脱し、複合システム計画の断念に追い込まれていた。
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